2026年の6月6日、「ENEOSスーパー耐久シリーズ 2026 Empowered by BRIDGESTONE 第3戦 NAPAC富士24時間レース」が行われる富士スピードウェイにて、「Performance領域における具体的な取り組み #2」と題して、SUBARUのスポーツ車両に関する発表を行うラウンドテーブルが開かれた。

開発者みずからが制限をかけない開発を推進している

富士スピードウェイで行われた「Performance領域における具体的な取り組み #2」では、まさに参戦中の「SUBARU HIGH PERFORMANCE X Version II(通称:ハイパフォエックスツー)」に投入された新たな技術とアイテムの発表とともに、Performance領域で進行している3車種の計画が発表されたので、まずはその気になる3車種についてレポートしていこう。

この計画の発端は、今年(2026年)の4月に立ち上げられたモータースポーツと市販車両の開発をつなげるための新体制だ。パフォーマンスとアドベンチャーを新型車の企画の2本の柱としているが、そのパフォーマンスの部分をコアとしてより強化していくために、モータースポーツとの一体化を進める方針だ。

その中の「スポーツ車両企画室」で、鋭意新型車の企画を進めている最中とのことだが、アフォータブル(迅速)な開発を進めるための、今あるアセット(資産)を有効に活用して企画を進めていく、という方針の中から今回、3台の車両が藤貫哲郎CTO(最高技術責任者)の口から発表された。発売時期や細かい点はまだ伏せられているが、発表された内容だけでも期待値が大いに高まるものだった。

画像: モータースポーツ部門を含めた各部署の「垣根を壊していきたい」と語るCTO(最高技術責任者)の藤貫哲郎氏。

モータースポーツ部門を含めた各部署の「垣根を壊していきたい」と語るCTO(最高技術責任者)の藤貫哲郎氏。

① WRXのTY85型トランスミッション搭載車

タイトル写真左側が、「TY85トランスミッション」を搭載したWRXだ。

TY85トランスミッションは、SUBARUがSTIモデル用に開発した6速MTで、最大の特徴は690Nm以上という大トルクに対応しているという点。EJ20型エンジンを搭載したVA系のWRX STIが最後の搭載車だったが、これを次代のWRXに搭載する計画があるということだ。

MTの需要が下火になりコストとの兼ね合いもあって一度生産を中止していたため、社内でも製造を再開するのは難しいという認識だったそうだが、製造部門の責任者から「電動化のラインを拡張するためTY85のライン潰したい」という要望が上がったとき、まだ生産ラインが残っていることが発覚。急遽そのアセットを活用する車両の開発を進めようということになったそうだ。

この意味するところは、将来的にエンジンパワーを大幅にアップさせられる余地が残されたということ。スポーツ車両を積極的に拡充していく今の方針においては大きな強みとなるわけだ。これは新開発エンジンの件も含めて、今後の展開に期待が膨らむというもの。

そうなると、前後の駆動配分をコントロールする「DCCD」も復活か? という話も出るが、そちらはコントロール基板の調達が難しい状況なので、現状は保留だという。だが、リリースしたいという意欲は伝わった。

画像: 「WRXベースのTY85トランスミッション搭載車」として発表された車両。

「WRXベースのTY85トランスミッション搭載車」として発表された車両。

② BRZの新モデル

トヨタとのタッグが白紙か? とも噂され、次期モデルの展開が不明瞭になっていたBRZだが、ここに来て新たな展開があると発表された。

この車両についての具体的な情報提示はなかったが、藤貫CTOから「(2025年発売の)STI Sport TYPE RAバランスドエンジンがお客さまに好評でしたので、これをベースにもうちょっと軽やかに走るようなコンセプトのクルマの企画を進めています」との発言が聞かれた。

今回同時に発表された、モータースポーツからのフィードバックの情報と合わせると、レブシンク(MTでの自動ブリッピング技術)やフラットシフト(加速時にアクセル全開のままでのシフトアップできる技術)などのエンジン回転数の制御技術にも磨きがかかり、さらに気持ちの良さを向上させた走りが期待される。

画像: 「BRZの新モデル」として発表された車両。

「BRZの新モデル」として発表された車両。

③ 「素うどん」のような5ドアハッチバック

これは「5ドアモデル」ということで、具体的な車種名の言及はなかったが、ベールを被ったシルエットからするとインプレッサ/クロストレックだろう。ただし、「形はちょっと違うかもしれません」という発言があったことから、違うタイプでリリースされる可能性もありそうだ。今はまだ試作車をいろいろいじっているところだという。

藤貫CTOは「今は防音材とか色々なものを、どこまで外せるか検討しています。すごく懐かしい感じで、これはこれでいいと思っていて、こういうコンセプトの車両を出したい」と、嬉しそうに語っていたので、ハイパワーなWRXとはまた毛色の違った、走りを素直に楽しめるクルマの登場にも期待が膨らむ。

画像: 「素うどんのような5ドアハッチバック」として発表された車両。

「素うどんのような5ドアハッチバック」として発表された車両。

この発表の締めとして藤貫CTOは「クルマ好きなメンバーが多いので、自分たちがなにをやりたいのか、これを実現することでお客さまも一緒に楽しんでもらえるクルマができたらすごく良い」、「エンジニア自身が『これをやったらいけないよな』って制限をかけない開発をできるといいなと思っています」、「今日は伊藤(Team SDA Engineering監督兼チーフエンジニア)から、ベンチでエンジンが壊れた話を聞きましたけど、すごく良いことだと思っています。開発が始まった頃から、(壊れることを恐れず)もっと負荷を掛けてどこかを良くしようよ、とやってきました。で、ようやく3年ほどかかって、『壊しました』って胸張って言えるようになったのは大きい」、「(これまでは効率重視の風潮が主流だったが)お客さまに喜ばれるものができるのなら、何度でもやり直してやろうぜ、というような風土に変えていきたい」という熱のこもった発言、そして「いやこんなんでいいのかよ? 本当に君たちが作りたかったクルマはこれですか? みたいな忌憚のないご意見って成長の機会になると思いますんで、今後ともよろしくお願いいたします」という言葉で締めて、発表は終わった。

画像: 新たなスポーツ車両の企画が発表されたラウンドテーブルのようす。

新たなスポーツ車両の企画が発表されたラウンドテーブルのようす。

今回の発表では、藤貫CTOのざっくばらんなキャラクターから「そんなことまで言っていいの?」と懸念すら抱く情報の開示もあったが、その背景には、もっとクルマを楽しくドライブして欲しいという情熱がしっかりと根ざしていることが感じられた場だった。今回の3車種のほかにも、進行中の計画もあるようで、今後もSUBARUのスポーツ車の展開を、期待して待ちたい。

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