トヨタの「社内抗争勃発」に決着か

レースはクラッシュなどの大きなトラブルでの中断も無く、終始熱気のこもった展開のまま24時間の戦いを終えた。
レースの模様は別記事で紹介予定するとして、ここでは、その祭りのもうひとつの愉しみとして用意されたイベント広場での催しをかいつまんで紹介していこう。
富士スピードウェイのホームストレート脇のグランドスタンド裏に設けられた「イベント広場」は、24時間の長丁場となるレースの合間に、この祭りを楽しんでもらおうと、数々の催しが行われていた。大屋根のあるメインステージでは、各時間帯ごとに、有名ドライバーによるトークショーやスーパー耐久公式イメージガールの紹介、そして数組のアーティストによる音楽ライブが行われ、多くの観衆を沸かせていた。

S耐のオープニングセレモニーで国歌斉唱も披露した、「WANDZ」の元ボーカル上杉昇氏が、往年のヒット曲などを熱唱。会場は熱気に包まれた。
そして、会場の中程にできていた人混みの中心を覗いてみると、かなり派手にカスタムされた2台の「カムリ」が展示されていた。これは、「東京オートサロン2026」のGRブースで催されていたモリゾウの3番勝負の最後のラウンド、「GAZOO Racing」代表のモリゾウ氏と、「TOYOTA RACING」代表の、ジャイアーノこと中嶋裕樹副社長による「社内抗争勃発」が、ようやく発表されたカタチだ。
北米生産のセダン「カムリ」をベースにカスタムを施し、レースファンの前に公開することによって、評価をしてもらおうという趣向。
白い方はモリゾウ陣営のカスタム作で、GR所属ドライバーの佐々木雅弘氏が監修したもの。外観は、前後バンパーにワイドフェンダーを装着し、トランクに装着された大きなウイングと、ワイドホイール&タイヤが高い走行性能を想像させるが、オーソドックスなスポーツ指向の方向性のカスタムだ。
しかし中を覗いて驚かされた。リアシートがある位置にはエンジンが鎮座している。フロントの3気筒に加え、リアに4気筒というツインエンジン構成で、トータル700馬力を発生する仕様だという。

モリゾウ陣営の「カムリ」は、スポーティなバンパーやワイドフェンダーが装着されているものの、エンジンは大きなモディファイが加えられた形跡は見られない。しかし、中を覗くと・・・

FF用の4気筒エンジンをリアミッドに搭載し、前後2機のトータルで700psという出力を発生。
一方の黒い方はジャイアーノ陣営の作で、こちらは外観から異様な雰囲気を放っている。なにしろ、フロントにはロングノーズに加えて50cmはありそうなアンダースポイラーを。サイドに回るとビス留めのオーバーフェンダーとサイドスポイラーが装着され、
リアにはこれまた長くて広いトランクスポイラーが装着され、そしてなんと、2mはありそうな排気管が装着されている。いわゆる「タケヤリデッパ」の公道レーサーズタイルという、とてもメーカーの重役が提案するクルマとは思えない仕上がりだ。
しかもご丁寧に、内装はシャンデリアやアクリル製シフトノブがあしらわれ、さらにエンジンは、現在開発中の2Lユニットが縦置きされ、マニュアルトランスミッションを介して後輪駆動化されているという徹底ぶり。

ボンネット前端を延長し、人が数人立てるほどの面積のアンダースポイラーや、超ワイドなオーバーフェンダーが装着された迫力のシルエットは、まさに“街道レーサー”そのもの。

メーカーの重役がプロデュースしたとは思えない存在感を放つ、ジャイアーノ陣営の「カムリ」。
両車とも市販化をまったく考えずに楽しく思い思いのカスタムを施したという印象で、まわりに集まった観客も笑顔で興味津々にのぞき込んでいた。
このように、祭りを盛り上げる派手な演出を行う中、この対決を企画した豊田章男氏と中嶋裕樹副社長の口から、この催しの裏にある計画の表明が行われ、詰めかけた来場者やメディア陣へ熱い想いが語られた。
この「カムリ」は、現在世界戦略モデルとして、北米を中心に高い人気を誇るベストセラーモデルのひとつ。以前は日本国内でも生産・販売されていた人気モデルで、今でもファンがいる。その「カムリ」を、右ハンドル仕様に変更したうえで、2026年の秋頃に向けて日本国内での販売を目指しているという。
この背景にはアメリカとの関税問題があり、その緩和・改善にひと役買えたらという意図が込められている。この計画によって、すべてのステークホルダー(関係する企業や人々)がウイナーになってくれたらいいと、豊田章男氏は想いを語って締めくくった。

破天荒なカスタムが施された2台の「カムリ」に、来場者の視線は釘付けになっていた。
対決ステージのすぐ隣には、アメリカの最高峰レース「NASCAR」に参戦している古賀琢麻選手のマシン(2024年版カムリ)も展示されていて、アメリカでのトヨタの取り組みをアピールしていた。

2024年にNASCARのARCAシリーズに参戦した古賀琢麻選手の「カムリ」。ただし中身はパイプフレームにOHVのV8というARCAで長年使われている伝統的なストックカーだ。
そして、そのまた隣には、「アメリカパーク」と題した、日本の各メーカーの北米生産モデルの展示が行われていたので、そちらも紹介していこう。

イベント広場中央の「アメリカパーク」には、日本市場への導入が実現済み、あるいは検討されている北米生産モデルが展示されていた。
まずはトヨタの「TUNDRA(タンドラ)」。2026年の4月に日本国内での正式販売が発表されたばかりのフルサイズピックアップトラック。全長5930mmという堂々たるボディに、394psを発生させる3.5LのV6ツインターボエンジンを搭載する。

全長6mに迫るサイズによる堂々たる存在感を放つトヨタ「タンドラ」。

ラギッド感というよりは、ロボに変形しそうな雰囲気を備える特徴的なデザインが魅力。
そして同じくトヨタの「HIGHLAMDER(ハイランダー)」。こちらもタンドラと同じく4月に日本への導入が発表されたモデルで、3列シートの7人乗りミッドサイズSUV。パワートレーンには2.5LハイブリッドにE-Fourを組み合わせ、多様な路面状況において安定した走行性能を発揮する。

日本国内モデル比較ではランドクルーザーとほぼ同格のサイズとなる「ハイランダー」。

3列シートのミッドサイズSUVらしいゆったりとしたサイズを感じるリアビュー。
SUBARUからは「ACENT(アセント)」を展示。こちらはSUBARUが北米の生産拠点スバル・オブ・インディアナ・オートモーティブで生産され、2018年より販売しているモデルで、全長4999×全幅1930×全高1819mmという、SUBARUのラインナップで最大のサイズを誇る3列シートの7人乗りモデル。
SGP(スバルグローバルプラットフォーム)をベースに、「アイサイト」や、最高出力264ps、最大トルク38.3kgf-mを発生させる2.4Lの水平対向4気筒ターボエンジン、シンメトリカルAWDシステム、4輪駆動制御の「X-MODE」など、スバル独自のコアテクノロジーを採用している。
発売時期はまだ明らかにされていないが、日本導入に向けて鋭意検討中だという。このサイズのスバル車を望むユーザーには朗報だろう。

このS耐の時期に日本市場への導入検討が発表されたSUBARUの北米生産モデル「アセント」。

ハンドルやセンターディスプレイなど、日本のSUBARU車と共通の要素を配置しながら、広い室内に合わせたゆったり感を持たせたインテリアのデザイン。
日産からは「MURANO(ムラーノ)」が展示されていた。2027年初頭に導入が予定されている、アメリカ・テネシー工場生産のミドルサイズSUV。トータルで4代目となる現行モデルは2025年から北米で生産。約12年ぶりに日本へ再導入されることになる。
初代から継承されたアイコニックな意匠はリファインによって洗練され、244psを発生させる2L直4のVC(可変圧縮)ターボエンジンがもたらす高い走行性能にも期待値は高い。

車格に合わせてワイドなデザインになったVモーショングリルの上部に横一文字のヘッドライトガーニッシュを組み合わせた特徴的なフェイスデザイン。

全長4900mm、全幅1980mm、全高1725mmと、SUVではLサイズに当てはまるボディサイズ。
ホンダは「PASPORT(パスポート)」を展示。
こちらは2027年に日本発売予定となっているミドルクラスSUV。全長 4864✕全幅2017mmと、国内のホンダのSUVでは最大のCR-Vよりひとまわり大きいラージクラスに近いサイズ。
グレードは、244psを発生する3.5L V6エンジンを搭載し、アウトドアスタイルを強めた「TRAILSPORT ELITE」を導入予定。

2007年の日本市場導入を計画しているホンダのミドルサイズSUV「パスポート」。

ホンダらしい都会的なテイストを主体としながら、オフロードを想起させる荒々しさも備えたバランスの良いデザイン。
また、ホンダではもう1台の注目モデルを展示。1990年代〜2000年代にホンダのスポーツモデルの代表格として人気を博した「インテグラ」が、実に19年ぶりに日本市場に復活予定と発表されている。その実車がお披露目されていた。
日本に導入されるのは320hpを発生する2Lターボエンジン+6速MTの高性能グレード「タイプS」。これが販売されると、日本で初めて「ACURA(アキュラ)」バッジを付けた正規販売されるモデルとなる。

象徴的な3連エキゾーストパイプはシビックタイプRと共通するアイコンとなる。

フロントグリル中央には堂々とアキュラのエンブレムが鎮座する。日本導入のグレードは「タイプS」のみとなる予定。
日本導入モデルではないが番外編として、SUBARUが2025年の「ジャパンモビリティショー」に展示していた「1983 Subaru GL Family Huckster(ファミリー ハックスター)」も展示されていた。
これは、「スバルオブアメリカ」のモータースポーツ部門がプロデュースした車両で、ラリーカー製作を得意とする「バーモント・スポーツカー」によって2023年に製作された。「GL」というのは、北米市場での「レオーネ」の愛称で、この車両は1983年型の「レオーネ ワゴン(北米仕様)」がベースとなっている。
とは言ってもフレームはパイプで再構成され、足回りはレーシングスペックの専用品を使用。外装はCFRP製となっているため、ベース車両の部分は数えるくらいしか残されていない。
ただし、走りの根幹となるエンジンと駆動系は、SUBARUの象徴である水平対向ユニットにシンメトリカルAWDという組み合わせ。エンジンは2.3Lに排気量拡大されたEJ20型で、862psという大パワーを発生。レースで本気で勝ちに行く姿勢がひしひしと感じられるスペックとなっている。
実際に2024年の「Goodwood Festival of Speed(グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード/GWFoS)」のヒルクライムに出場し、「マクラーレン・ソーラスGT」に僅差で敗れるという好成績を収めている。このハックスターは、SUBARUが打ち出している3本柱のコンセプト「ADVENTURE」「PERFORMANCE」「HERITAGE」のうち「PERFORMANCE」と「HERITAGE」を体現、訴求するモデルとして、イベントなどでこうしてお披露目されている。
近々、大胆なドリフトパフォーマンスで人気の「HOONIGAN」のジムカーナシリーズでデビューする予定だという。

1983年式レオーネワゴンのクラシカルなテイストに、最新のラリーテクノロジーが詰め込まれたシンメトリカルAWDのアメリカ製戦闘機「GL Family Huckster」。

ルーフ後端に大きく張り出した“アクティブリアウィング”や、ブリスターフェンダー後端の電制エアロフラップなど、エアロデバイスの装着も特徴的。

2.3Lで862psもの大パワーを絞り出すEJ20型エンジンを搭載。トランスミッションはシーケンシャルの6速を組み合わせる。

レオーネの面影を色濃く感じるインパネまわり。センターコンソールには当時のラジオが装着されている。
ちなみにこのレースでは、アメリカ車の代表として「フォード・マスタング」がST-USAクラスに参戦。その250号車を応援するため、65台以上のマスタングオーナーが全国から富士に集結し、「マスタング・パレードラン」が開催され、祭りの盛り上げにひと役買っていた。

ST-USAクラスに参戦のフォード・マスタング250号車。




