マツダのディーゼルエンジンが躍進したのは、それを搭載したCX-5の初期型が2012年に登場したことによるものだ。そのCX-5が「脱ディーゼル」というから聞き捨てならない。そこにはどんな事情とメリットが隠されているのだろうか?

文: 小林 淳
▶▶▶写真はこちら|マツダ「CX-5」エクステリア・インテリア(画像9枚)

主力ディーゼルの廃止という「リスク」を跳ね返した好発進

日本のSUV市場において、「マツダ=ディーゼル」というイメージを決定づけたのはCX-5だ。ぶ厚いトルクと抜群の燃費性能を誇るマツダのディーゼルエンジン「SKYACTIV-D」は、絶対的な武器として多くのユーザーを引きつけていた。

それだけに、9年ぶりのフルモデルチェンジとなった新型CX-5(3代目)ではディーゼルモデルが廃止され、これまでは脇役ポジションであったガソリンモデル(2.5Lマイルドハイブリッド)が主軸を担うということは、マツダユーザーはもちろんのこと、初代、2代目とCX-5の大躍進に助けられてきた販売店サイドからも戸惑いの声が挙がっていた。

画像: マツダの国内SUV市場を牽引してきたエースのCX-5が大胆に路線を変更。ディーゼル廃止というリスクを背負いながら次世代モデルに進化することで、発売1か月で1万台超えという好スタートを切っている。

マツダの国内SUV市場を牽引してきたエースのCX-5が大胆に路線を変更。ディーゼル廃止というリスクを背負いながら次世代モデルに進化することで、発売1か月で1万台超えという好スタートを切っている。

実際、2026年1月からの初売り商戦では、CX-5のディーゼルを求めるユーザーをターゲットに、ブラックの加飾や上質なナッパレザーインテリアを奢ったお買い得な特別仕様車「XDドライブエディション」を投入するなど、モデル末期ながら“最後のディーゼル”を求めるユーザーの購入意欲を強烈に掻き立てる一幕があったほど。

そもそもマツダがディーゼル廃止を決断したのは、排ガス規制の厳格化による開発&製造コストの高騰がある。DPFや尿素SCRなどの浄化装置の高度化は価格上昇に直結し、ミドルSUVとしての競争力を削ぎかねない。さらに日本でこそ人気が高かったディーゼルだが、世界的に見ればその需要は数%程度。特定の地域のために多額の規制対応コストを掛け続けることは厳しいだろう。そんな理由があっての全面的なガソリン&電動化シフトなわけだ。

そんな駆け込み需要もあっただけに、新型になったとはいえ、この先のCX-5が「ガソリン」で戦えるのか?という声があったのは事実だろう。

電動化シフトと圧倒的なコストパフォーマンス

しかし、発売1か月の受注台数が1万台を突破するなど、そんな不安は杞憂だったことが見えてくる。好調なスタートを切れた理由としては、まず車両価格が330万〜447万1500円というお値ごろな価格帯に設定されたことが挙げられる。この価格水準は他社のライバルと比べても絶妙な設定だ。

そして見逃せないのが、先代と比べると実用モデルとしての性能が大きく高まったことも見逃せない。

新型はホイールベースを115mm延長したことで、先代の弱みだった後席&荷室のスペースが拡大している。特に大人が座った状態でも膝前や頭上空間に余裕が生まれた後席は快適性が高まっている。先代はマツダSUVの中では実用的なパッケージを売りにしていたが、新型は実用性の面でも他社のライバルたちと十分に戦うことができる存在になっている。

Google搭載と快適性を突き詰めた走りの大幅進化

さらに、マツダ車初となる「Googleビルトイン」を全車に採用したことも追い風だ。新型に設定された3つのグレードすべてに採用される最新の車載ITは、大型タッチディスプレイ上でGoogleマップや音声アシスタントが直感的に操作できるなど利便性が飛躍的に向上している。先代で採用されていたマツダコネクトは少々弱みにもなっていたことを考えると、ここの進化の貢献度もかなり大きい。

画像: 走り重視から乗る人すべてを包み込む「道具」にキャラクターを研ぎ澄ませた新型だが、先代でも人気の高かった上級内装の魅力も抜かりなく継承。最上級の「L」グレード(写真)の人気が高いなど、プレミアムを求めるユーザーからも支持されている格好だ。

走り重視から乗る人すべてを包み込む「道具」にキャラクターを研ぎ澄ませた新型だが、先代でも人気の高かった上級内装の魅力も抜かりなく継承。最上級の「L」グレード(写真)の人気が高いなど、プレミアムを求めるユーザーからも支持されている格好だ。

また走りの方向性が変わったことも見逃せない。先代はスポーティな乗り味(マツダSUVの中ではコンフォート寄りだが)だったが、新型は路面からの突き上げを上手にいなす乗り心地を重視にシフト。ドライバーだけでなく、同乗者全員がリラックスできるデイリーコンフォートを徹底追求している。

画像: マツダ車初採用となる「Googleビルトイン」を全車に搭載。Googleマップや音声アシスタントが直感的に操作でき、先代までのマツダコネクトが抱えていた弱みを一気に解消。好発進を支える大きな武器のひとつになっている。

マツダ車初採用となる「Googleビルトイン」を全車に搭載。Googleマップや音声アシスタントが直感的に操作でき、先代までのマツダコネクトが抱えていた弱みを一気に解消。好発進を支える大きな武器のひとつになっている。

明確になった役割分担と今後も揺るがない圧倒的優位

さらに見逃せないのが、マツダSUV全体における立ち位置の明確化だ。

これまで先代CX-5の上級グレードと、縦置きFRプラットフォームを採用するCX-60のエントリーグレードは価格帯が重複し、販売現場で迷う場面もしばしば見られていた。今回、新型CX-5がファミリーニーズを意識したFFのミドルSUVとなったことで、走りやプレミアム感を求めるユーザーはCX-60、多人数乗車とラグジュアリーを求めるユーザーはCX-80へという明確なキャラ分けが可能になっている。

画像: 新型のキャラ変によって、マツダSUVのヒエラルキーも分かりやすい構図になった。FRレイアウトのCX-60(写真)は、従来の走り重視のユーザーの受け皿としての役割がさらに高まっている。

新型のキャラ変によって、マツダSUVのヒエラルキーも分かりやすい構図になった。FRレイアウトのCX-60(写真)は、従来の走り重視のユーザーの受け皿としての役割がさらに高まっている。

ちなみに初期受注の段階では、受注の65%を占めているのは最上級グレードの「L」(2WD:407万円、4WD:430万6500円)。15.6インチ大型ディスプレイや本革シート、シートベンチレーションといった豪華装備を網羅しながら400万円台前半に抑えた抜群のコストパフォーマンスがウケている格好だ。今後、販売が落ち着いてくれば、12.9インチ画面やコンビシートを備えてバランスに優れる「G」(2WD:352万円、4WD:375万6500円)が伸びてくるだろうが、いずれにせよ価格以上の「価値」があることがユーザーに高く評価されている。

画像: 初期受注の6割以上を占める「L」グレード。15.6インチ大画面や本革シート、シートベンチレーションといった豪華装備を網羅しながら400万円台前半に抑えた、抜群のコスパが評価されている。

初期受注の6割以上を占める「L」グレード。15.6インチ大画面や本革シート、シートベンチレーションといった豪華装備を網羅しながら400万円台前半に抑えた、抜群のコスパが評価されている。

来年2027年には、より電動化を進めた本格的なストロングハイブリッドモデルの投入も予告されている。動力性能を優先したいユーザーにとっては待望の追加となるだろうが、強力な電動システムを搭載する分、車両価格が大幅に跳ね上がることは避けられない。

そう考えると、330万円スタートという手頃な価格帯で、スムーズな走りと必要十分な経済性、向上した実用性を堪能できるマイルドハイブリッドモデルの優位性は、今後も揺らぐことはないはずだ。

新型となったCX-5は、先代のディーゼルとは違った「実用性」と「コストパフォーマンス」で勝負できる頼もしい存在なのだ。

画像: 荷室容量の拡大に加え、荷室間口を先代より下げることで荷物の出し入れも容易に。先代の弱点だったユーティリティ性能を徹底的に鍛え上げることで、ライバルと渡り合える実用モデルへ進化している。

荷室容量の拡大に加え、荷室間口を先代より下げることで荷物の出し入れも容易に。先代の弱点だったユーティリティ性能を徹底的に鍛え上げることで、ライバルと渡り合える実用モデルへ進化している。

マツダ CX-5(Lグレード) 主要諸元

●全長×全幅×全高:4690×1860×1695mm
●ホイールベース:2815mm
●車両重量:2WD=1670kg/4WD1740kg
●エンジン:直4 DOHC+モーター
●総排気量:2488cc
●最高出力:131kW(178ps)/6000-6200rpm
●最大トルク:237Nm(24.2kgm)/3800-4000rpm
●モーター最高出力:4kW(6.5ps)/1000rpm
●モーター最大トルク:60.5Nm(6.2kgm)/100rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:2WD/4WD
●燃料・タンク容量:レギュラー・2WD=56L/4WD=58L
●WLTCモード燃費:2WD=15.2km/L/4WD=14.2km/L
●タイヤサイズ:225/55R19
●車両価格(税込):2WD=407万円/4WD=430万6500円

おすすめ関連記事

This article is a sponsored article by
''.