文: 石川順一
▶▶▶写真はこちら|ENNE「ENNE ZERO」(画像4枚)
通勤の悩みを解決する特定原付の選択肢
会社まで5km。自転車なら20分、電車なら乗り換えを挟んで30分。それなら自転車の方がいい。そう考えて電動アシスト自転車を見に行ったものの、まだ決めきれずにいる。
迷う理由は、たぶん2つある。ひとつは、結局は漕ぐこと。夏の朝、会社の洗面所で息を整える時間まで考えると、電車のほうが楽な気さえしてくる。もうひとつは帰り道の坂。アシストがあっても、荷物の多い日は途中で足をつきそうだ。
それならと、免許不要で2輪タイプもたくさんある特定原付が魅力的に映る。ただ、大半は電動車。バッテリーが切れたらどうしたものか。不安は残る。
そんな通勤の悩みを解決できる、答えのひとつがENNE ZEROだ。区分は特定小型原動機付自転車。モーターの定格出力は、区分上限いっぱいの600W。親指でスロットルを押すだけで、最高速度は20km/hまで。

株式会社ENNEの「ENNE ZERO」。運転免許の要らない特定小型原動機付自転車で、人が漕ぐ力でそのまま車輪を回すこともできる。カラーはサンドロック、スノーホワイト、ワーロック、デスティニーの4色。写真は16インチタイプ。
600Wという数字は、通勤向けの電動アシスト自転車と比べてみるといかに強いかがよく分かる。あちらの駆動ユニットは240Wほどで、ENNE ZEROはおよそ2.5倍だ。しかも速度は20km/hで頭打ちだから、その出力が速さに化けることはない。行き先は、発進のひと押しと、坂を上る力だ。その2つの場面では、瞬間的に1500Wまで引き出す。他の特定原付同様、夏の朝に洗面所で息を整える時間も、坂の途中で足をつく瞬間も、もう経験しなくて済むというわけだ。
漕ぎながら走れば、距離は延びる
ただし、スロットルだけで走れる距離は50km。片道5kmの通勤なら5日分で、充電は週に一度。そして、うっかり忘れる日もある。そんな時役立つのがENNE ZEROを特徴づけている装備、ペダルだ。
そもそも特定原付では、ペダルを備えたモデルをあまり見かけない。実はこれ、漕いで20km/hを超えてはならないという規制の壁によるもの。そのため、各社はペダルを足置きに変えるか、ENNE自身の旧モデルのように発電用としてペダルを使うか、原付一種区分で売るかを選んでいる。しかし、ENNE ZEROは漕いでも速度が上がらないよう車体側で抑えることで、走行用のペダルを残した。
そのため、ペダルは自転車のようにチェーンでそのまま後輪につながっている。漕げばタイヤが回る、ごく素直な作りだ。あいだに電気が入らないから、残量がいくつであろうと、脚の力はそのまま進む力になる。
そして、いざという時のためだけのものでもない。ENNE ZEROは、漕ぎながらモーターの力を足すこともできる乗り物だ。脚の力が加わるぶん、モーターだけで走るより長く走れる。スロットルだけなら50kmのところ、この走り方なら最大142kmまで航続距離を伸ばせる。
灯りを点けたまま、脚で帰る
バッテリーが空になっても、自転車と同じように自力で帰ってこられるという点もメリット。しかも電欠時にも、灯りは消えない。実は、スロットルを押して600Wのモーターが回らなくなった時点でも、バッテリーはわずかに残っているし、予備電源まで備えているからだ。LEDの灯りを付けるくらいの電力は十分賄える。ヘッドライトも最高速度表示灯も機能し続けるというわけだ。
ちなみに予備電源が見込んでいるのは、10km以内の移動まで。片道5kmの通勤であれば、行きでも帰りでも、電欠時の心配はあまりいらない。
予備の電源を使い切ってしまっても、走っている間なら発電されて灯りは点く。夜間でもなんとか視界を確保できるだろう。いざというときのそのまた先まで備えた乗り物なのだ。

灯火類はLEDを採用。消費電力を抑えており、足こぎ走行による発電でも十分機能する。
重さは電動アシスト自転車と変わらない
車体重量は22kg。一般的な電動アシスト自転車とほぼ変わらない。フレームはサドルの下から大きく弧を描いて低くなる、見慣れたアンダーボーンフレーム。またぐときに脚を高く上げなくて済む。ブレーキは前後ともディスク。適用身長は140cmから210cmと幅広く、体格を選ばない。
そのうえ、この車体は畳める。1360×570×1040mmが、750×500×600mmに。長さは半分近く、高さは6割ほどまで縮むから玄関にだって置いておける。
バッテリーも着脱可能。部屋に持ち込んで充電できるから、車体を持ち込む必要がない。電動アシスト自転車と同じ程度の容量なので、帰ってきて挿しておけば翌朝には充電は終わっていると考えていい。
差額で買うのは、息の上がらない朝だ
ENNE ZEROは現在先行予約を受付中で、価格は14インチが税込218,900円で、16インチが251,900円。電動アシスト自転車と比べると若干高いが、その差で買うのは、毎朝の20分をどう過ごすかという選択権だ。夏の朝、あまり疲れずに出社するか、あえて運動代わりに心拍数を上げて出社するかも、自分で決められるようになる。
買った後の手続きが必要なものの、申請はそう難しくない。ナンバーは市区町村の窓口で、販売証明書と本人確認書類を出せばその場でほぼ受け取れるし、交付そのものは無料だ。自賠責保険への加入は必須だが、こちらはコンビニで完結する。
保険料にしたって60か月で12,040円。軽自動車税は年に2,000円程度。合わせて年4,400円ほどしかかからず、車検は不要という点も手軽だ。
たったの5km。されど5km。その間の20分を、上り坂でも軽快に進める。しかもバッテリーが尽きたら漕いで帰ればいい。そんな不安とは無縁の通勤を始めたいなら、ENNE ZEROはちょうどいい相棒となってくれるだろう。

ENNE ZERO 主要諸元
- メーカー:株式会社ENNE
- 車両区分:特定小型原動機付自転車/運転免許は不要・16歳未満は運転禁止
- 通行区分:車道と歩道または路側帯の区別がある道路では、車道の左側端に寄って通行
- 最高速度:20km/h(歩道モードは非搭載)
- アシストモード:5段階で切替(ペダルを漕ぎながらモーターの力を足すアシスト走行が可能)
- 定格出力/瞬間最大電力:600W/1500W
- 車体重量:22kg(14インチ・16インチ共通の公表値)
- サイズ:組立時 1360×570×1040mm/折畳時 750×500×600mm
- タイヤ:14×1.95インチ(14インチモデル)
- 航続距離:スロットル走行時 50km/ペダル走行時 142km〜(いずれも理論値。体重や道路状況により変動)
- 電欠時:メインバッテリーに内蔵された予備電源により、一定時間、保安部品が作動(10km以内の移動を想定)
- 車体最大荷重:150kg/適用身長:140〜210cm
- バッテリー:48V 10.5Ah(車体から取り外し可能)
- 駆動:ペダルはチェーンで車輪を駆動(走行用ペダル)
- フレーム:アルミニウム合金/防水レベル:IP54/ブレーキ:前後ディスク
- 装備:リアキャリア、前後フェンダー、最高速度表示灯、親指スロットル/灯火類:LED
- カラー:サンドロック/スノーホワイト/ワーロック/デスティニー
- 価格(税込):14インチ 218,900円/16インチ 251,900円(第3次先行販売価格)
- 保証:フレーム2年/バッテリー・モーター1年
- 納期:2026年9月予定
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