文: 石川順一
▶▶▶写真はこちら|カエディア「スマートレコードアイ KDR-BH2」(画像4枚)
アナログの美しさにデジタルを足したくない
丸いメーターがふたつ並ぶだけのコクピット。旧車やヘリテイジバイクを選ぶ人なら、その眺めも含めて愛車を気に入っているはずだ。とはいえ、知らない道を走るとなればナビを付けたくなる。ところがハンドルにスマホホルダーやモニターを据えると、せっかくのクラシカルな眺めに現代的なノイズが割り込んでくる。
画面の置き場に悩むのは、バイクを複数台持つ人も同じだ。たとえば平日は通勤用のスクーター、週末は趣味の大型ツアラーといった乗り分けをしているとしよう。車体に付けるスマートモニターやドライブレコーダーは、取り付けと配線が1台ごとに要る。どちらのバイクにも同じ環境をそろえようとすれば、手間も出費も2台分だ。
ナビも、後ろの様子も、走行の記録も、仲間との会話も欲しい。けれど車体には手を入れたくない。そんな望みに、載せる場所をバイクからヘルメットへ移すことで応えたのが、横浜のバイク用品メーカー、カエディアの「スマートレコードアイ KDR-BH2」だ。

前を向いたままナビが読める
KDR-BH2の主役は、シールドの内側、視界の上寄りに付ける透明なヘッドアップディスプレイ、HUDだ。のぞき込むと、映像は目の前の板にではなく、約3m先の空間に55インチ相当の大きさで浮かんで見える。
道路の先を見ている視線のまま、その上にナビの矢印が入ってくる。ハンドルの画面を確かめるときのように、視線を進行方向から手元へ落とさなくていい。交差点の手前で曲がる方向を確かめる一瞬も、前走車や対向車は視界に入ったままだ。視線を外さずに済むこと、それがこの製品のいちばんの価値といえよう。
その映像を生むのは、ソニー製のOLEDマイクロディスプレイ。輝度は3000ニットあり、周囲の明るさをセンサーが拾って自動で調整する。走っているうちに日が傾いても、明るさを手で直す必要はない。
そこに映し出されるのはスマホの画面だ。Apple CarPlayとAndroid Autoに対応し、使い慣れたナビアプリや音楽、通話をそのまま表示できる。スマホとはWi-Fiでつながり、2回目からは電源を入れるだけで自動接続される。屋外用の5GHz帯を使う場合はつながるまでに1分ほどかかるので、ヘルメットをかぶる前に電源を入れておくと出発がスムーズだ。
操作に画面タッチは要らない。ハンドルに付ける物理ボタンのワイヤレスリモコンか、声で動かす。マイクに「カエディア」と呼びかけてから「上」「右」と言えばカーソルが動き、「確認」で決定、「戻る」で取り消せる。CarPlayやAndroid Autoを使っている間はSiriやGoogleアシスタントも呼び出せる。雨の日でも、タッチパネルに反応しない厚手のグローブでも操作に困らないのは、ツーリングライダーにはうれしい点だ。

後ろの様子も、走りの記録もおまかせ
HUDに映せるのはスマホの画面だけではない。ヘルメットの後頭部には、手のひらに収まる十字形の本体を両面テープのベースで固定する。ホルダー込みでもたった85gと、かぶっていて重さを感じさせない。中央に広角120°のカメラがあり、その映像をHUDに呼び出せば、振り向かなくても後ろの交通状況が分かる。ミラーの死角を、前を向いたまま減らせるのだ。前傾のきついスポーツモデルでも、上体の起きたクルーザーでも、カメラの向きを上下20°の範囲で動かして乗車姿勢に合わせられる。
このカメラは、そのままドライブレコーダーになる。画質はフルHDで、明暗差の激しい場面でも白飛びや黒つぶれを抑えるHDR/WDR補正つき。フレームレートはLED信号機の点滅と重なりにくい27.5fpsだ。付属の64GBカードに上書きしながら録画を続け、GPSで位置も記録する。別売りのフロントカメラ、1万5400円を足せば前後同時の録画になる。あおり運転や追突に備えた記録が、車体に配線を1本も引かずに手に入るわけだ。
そうなると気になるのは電池のもちだろう。内蔵バッテリーでの連続使用は3〜4時間、録画を続けると1.5〜2時間になる。片道30分ほどの通勤なら、往復とも録画しても内蔵だけで足りる。日帰りツーリングなら、別売りのオプションバッテリー、9680円を足そう。録画しながらで3〜4時間、録画なしなら8〜12時間まで延びる。こちらもヘルメットに付けるタイプで、専用ケーブルでつなぐから防水性も保たれる。本体の防水性能はIP66。あらゆる方向からの強い噴流水に耐える等級なので、出先で雨に降られても慌てなくていい。満充電までは約2.5時間で、充電はUSB Type-C。出先で残量が心もとなくなっても、昼食の間に継ぎ足しておける。
仲間のインカムが他社製でもつながる
同梱のスピーカーとマイクを付ければ、KDR-BH2はインカムにもなる。メッシュ通信では最大9台、最大4kmの範囲でつながる。網の目のように互いを結ぶ方式なので、誰かが給油で列を離れても残りの会話は途切れず、戻ってくれば自動で復帰する。
仲間が別のメーカーのインカムを使っていても構わない。専用アプリを通してスマホのモバイル通信で話す方法なら最大15台、カエディア以外の製品とも通話でき、スマホの電波が届くかぎり距離の制約もない。Bluetoothで他社インカム1台と直接つなぐことも可能だ。すでに気に入ったインカムを持っているなら、ナビ音声や音楽をそちらへ出力して、KDR-BH2には表示と録画を任せる使い方もできる。電波の入りにくい山あいに備えて、Bluetooth対応のトランシーバーとも接続できる。

付けるのはヘルメット、だからどのバイクでも使える
ここまでの機能は、すべてヘルメットの側で完結している。本体とディスプレイの土台は両面テープで貼り、ディスプレイは強力なマグネットで土台に吸着する。車体側に付くのは、ハンドルのスイッチ横に貼る電池式のリモコンひとつ。バッテリーから電源を引く作業も、配線を通す作業もない。コクピットの眺めは、買ったときのままだ。
だから乗るバイクが替わっても、リモコンを除けばいつもの環境がついてくる。通勤のスクーターでも週末の大型車でも、レンタルバイクでも同じことだ。別売りの空気圧センサーを使う場合も、車両を複数登録して切り替えられる。
HUDを帽体に組み込んだスマートヘルメットという選択肢もあるが、そちらはヘルメットまるごとの買い替えになるし、価格は10万円以上。耐用年数を考えるとなかなか思い切った決断になる。だがKDR-BH2なら、フルフェイス、システム、ジェット、オフロード、レトロタイプと、いま使っているヘルメットに後付けできる。本体のカバーはグレー、ブラック、レッド、グリーンの4色が同梱され、ヘルメットの色に合わせて着せ替えられる点も魅力だ。
8万9980円で、4つの機能が一度にそろう
ラインナップはフルフェイスに合わせやすいワイヤーマイク付き「KDR-BH2-W」と、ジェットやシステムに合わせやすいアームマイク付き「KDR-BH2-A」の二種類あり、いずれも価格は8万9980円。

カエディア自身、ハンドルに付けるスマートモニターを2万円台後半から5万円台で用意している。それと比べれば値は張るが、KDR-BH2にはHUD、後方モニター、ドライブレコーダー、メッシュインカムの4つが入っている。しかも車体への取り付け作業がないので、そのぶんの工賃がかからず、バイクを買い替えても増車しても買い足しが要らない。長く、何台にもわたって使うほど割安といえるアイテムだ。
丸いメーターがふたつ並ぶコクピットは、そのままでいい。KDR-BH2ならナビの矢印も、後ろのクルマも、仲間の声も、ヘルメットの中で完結できる。気になったら、まずは3m先に浮かぶ映像をのぞきにカエディアのショールームへ行ってみよう。
カエディア スマートレコードアイ KDR-BH2 主要諸元
・製品区分:ヘルメット装着型ヘッドアップディスプレイ(後方カメラ・録画・インカム機能つき)
・対応ヘルメット:フルフェイス、システム、ジェット、オフロード、レトロタイプ
・対応スマートフォン:iPhone 6S/iOS13以上、Android11以上(Apple CarPlay/Android Auto対応)
・本体重量:85g(ホルダー付き)
・ディスプレイ:OLED、640×400、輝度3000ニット、コントラスト比10000:1、視野角24°
・映像の見え方:約3m先に55インチ相当
・明るさ調整:手動/自動
・後方カメラ:200万画素(FHD 1920×1080)、27.5fps、広角120°、上下20°調整、HDR/WDR、ループ録画、GPS 1Hz
・記録メディア:microSDカード 最大64GB(クラス10 UHS-I U3相当、64GBを1枚付属)
・インカム:メッシュ最大9台・最大通信距離4km、モバイル通信接続は最大15台、他社インカムとのBluetooth接続は1台まで
・ヘッドセット:40mmスピーカー、ADSPノイズ低減
・通信:Bluetoothデュアルモード、Wi-Fi 5GHz(屋内W52/屋外W56切替)および2.4GHz
・CPU/RAM:8コア 1.8GHz/2GB
・バッテリー:1400mAh内蔵(連続使用約3〜4時間、録画時約1.5〜2時間)、充電約2.5時間(USB Type-C)
・防水:IP66
・操作:専用アプリ、ワイヤレスリモコン、音声コマンド
・付属品:本体用取り付けベース、ディスプレイ用取り付けベース、ヘッドセット、ワイヤレスリモコン、リモコン用マウント、カバー4色、ディスプレイ延長ロッド、プラスドライバー、両面テープ、クリーニングシート、USB充電ケーブル、microSDカード(64GB)
・オプション:バッテリー KDR-MB4000(4000mAh、9680円)、フロントカメラ KDR-MX335(1万5400円)、空気圧センサー KDR-MP01
・価格:8万9980円(税込。KDR-BH2-A アームマイク/KDR-BH2-W ワイヤーマイク)
・保証:1年
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