1971年に登場したマツダ「カペラ ロータリークーペGS」。流麗なボディラインと精悍なフロントマスクは、半世紀以上が過ぎた現在でも独特の存在感を放つ。その造形のヒントとなったのは、意外にも超音速ジェット機だった。斬新なスタイリングと12A型ロータリーエンジンの高性能を武器に、新しいスポーティカー像を示した一台を振り返る。

文: 小川秀樹
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マツダ創立50周年に誕生! ロータリーエンジンの普及を担った意欲作

1970年(昭和45年)5月、東洋工業(現・マツダ)は、新たな主力乗用車として初代「カペラ」を市場に送り出した。

画像: マツダ カペラ ロータリークーペ

マツダ カペラ ロータリークーペ

当時のマツダは、独自技術であるロータリーエンジンの可能性を追求し、その搭載車種を積極的に拡大していた。

1967年には、2ローター式ロータリーエンジンを搭載した世界初の量産車「コスモスポーツ」を発売。続いて「ファミリア ロータリークーペ」「ルーチェ ロータリークーペ」を投入するなど、ロータリーエンジンを核とした商品展開を進めていた。

こうした流れの中で登場したカペラは、ファミリアとルーチェの間を埋めるミドルクラスの乗用車として開発されたモデルである。

しかも、1970年はマツダの創立50周年にあたる記念すべき年だった。

開発には約300人ものスタッフが携わり、東京の帝国ホテルで発表会が開催されるなど、同社が並々ならぬ意気込みで世に送り出したクルマだったことがうかがえる。

ボディタイプは、実用性を重視した4ドアセダンと、スポーティな2ドアクーペを用意。

エンジンについても、通常のピストン式エンジンを搭載する1600ccモデルと、新開発の12A型ロータリーエンジンを搭載するモデルが設定され、幅広いユーザー層に対応した。

そして1971年(昭和46年)10月には、内外装や走行性能に改良を加えたGシリーズが登場。そのラインナップの中に、今回紹介する「カペラ ロータリークーペGS」が位置づけられていたのである。

超音速ジェット機がモチーフ! 55年前とは思えない流麗なフォルム

カペラの魅力を語るうえで欠かせないのが、当時としては斬新なボディデザインである。

開発陣がスタイリングの着想源としたのは、なんと超音速ジェット機だった。

空力理論をデザインにも取り入れ、スピード感と洗練された美しさを両立させようとしたのである。

その象徴ともいえるのが、ボディ側面を前後に走る「ウェイビーライン」だ。

直線的なラインを基本としながら、緩やかな曲面を組み合わせることで、風を切って進むような躍動感を演出している。

さらに、後方に向かって変化するベルトラインや、存在感のあるリアクオーターピラーも特徴的だ。ボディ全体はすっきりとまとめられているが、細部には力強さを感じさせる造形が採り入れられている。

画像: Gシリーズのインテリアには、スポーティな印象を強調するT字型ダッシュボードを採用。3眼式メーターを備えるほか、ボディカラーに合わせた室内色も用意されるなど、機能性とファッション性を両立させた空間となっている。

Gシリーズのインテリアには、スポーティな印象を強調するT字型ダッシュボードを採用。3眼式メーターを備えるほか、ボディカラーに合わせた室内色も用意されるなど、機能性とファッション性を両立させた空間となっている。

フロントマスクも、ジェット機のイメージを色濃く反映した部分である。

横長の六角形を基調としたグリルは、航空機のエアダクトを連想させるシャープなデザイン。低く構えたノーズとの組み合わせによって、スポーティな雰囲気を際立たせている。

ヘッドライトについては、1970年登場の初期型が角型2灯式だったのに対し、1971年のGシリーズでは丸型4灯式へと変更された。

リアまわりにも変化が見られ、初期型の丸型テールランプに代わって、Gシリーズには特徴的な六角形のテールランプが採用された。

画像: 緩やかな曲面を取り入れたボディラインと、存在感のあるリアクオーターピラーが美しいクーペフォルムを演出。1971年に登場したGシリーズでは、従来の丸型から六角形のテールランプに変更され、独特のリアビューが生み出された。

緩やかな曲面を取り入れたボディラインと、存在感のあるリアクオーターピラーが美しいクーペフォルムを演出。1971年に登場したGシリーズでは、従来の丸型から六角形のテールランプに変更され、独特のリアビューが生み出された。

この個性的なリアビューも、カペラを印象づける重要なデザイン要素となっている。

一方、室内にも当時のマツダらしい先進性が感じられる。

GシリーズではT字型のダッシュボードを採用。ドライバーの正面には3眼式メーターが配置され、スポーティな雰囲気を演出した。

また、GSには3本スポークのステアリングホイールやセンターコンソールなどが装備され、上級スポーツモデルにふさわしい空間に仕上げられていた。

ボディカラーとの組み合わせを考えた室内色の設定や、後席への乗り降りを容易にするウォークイン機構など、デザイン性だけでなく使い勝手にも配慮されていた。

半世紀以上前のクルマとは思えないほど洗練されたスタイリングは、今なおカペラ ロータリークーペGSの大きな魅力となっている。

最高速度190km/h! 新開発の12A型ロータリーエンジンが生み出した圧倒的な走り

先進的なデザインに負けないほど、カペラの走行性能も当時としては優れたものだった。

その心臓部に収められていたのが、マツダが新たに開発した「12A型」2ローター・ロータリーエンジンである。

それまで採用されていた10A型をベースに、ローターハウジングの幅を拡大。1ローターあたりの排気量を573ccとし、2ローター合計で1146ccの排気量を確保した。

さらに、排気ポートの形状を工夫することで排気効率を改善し、トルク特性の向上も図られている。

最高出力は120ps/6500rpm、最大トルクは16.0kgm/3500rpmを発生。排気量の数字からは想像しにくいほどの高性能を実現していた。

画像: カペラのために新開発された12A型ロータリーエンジン。573cc×2ローターから最高出力120psを発生し、滑らかな回転フィールと優れた加速性能を両立した。その後もマツダを代表するロータリーエンジンのひとつとして、長く活躍することになる。

カペラのために新開発された12A型ロータリーエンジン。573cc×2ローターから最高出力120psを発生し、滑らかな回転フィールと優れた加速性能を両立した。その後もマツダを代表するロータリーエンジンのひとつとして、長く活躍することになる。

注目したいのは、その走行性能である。

最高速度はロータリークーペが190km/h、セダンでも185km/hに達した。

さらに、停止状態から400mを走り切る加速タイムは、2名乗車時で15.7秒を記録。5名乗車でも16.2秒という、当時のスポーツカーに匹敵する実力を備えていた。

この強力なエンジンを支える足まわりにも、相応の技術が投入されている。

フロントサスペンションにはストラット式を採用し、リアには4リンク式のリジッドアクスルを組み合わせた。

さらに、ダンパーには高圧ガスを封入した単筒式のド・カルボンタイプを採用。放熱性や減衰性能にも配慮することで、高速走行時の安定性を追求した。

また、1971年にはロータリーエンジン車として世界初となるAT仕様「REマチック」も設定された。

3速ATとロータリーエンジンを組み合わせたこの仕様は、クラッチ操作を必要とせず、ロータリー特有の滑らかな加速を楽しめることが魅力だった。

画像: ロータリーエンジンの滑らかな特性を生かすために設定された3速AT「REマチック」。1971年に登場したロータリー車初のAT仕様で、クラッチ操作なしでも力強い加速を味わえるなど、運転のしやすさとスポーティな走りを両立させていた。

ロータリーエンジンの滑らかな特性を生かすために設定された3速AT「REマチック」。1971年に登場したロータリー車初のAT仕様で、クラッチ操作なしでも力強い加速を味わえるなど、運転のしやすさとスポーティな走りを両立させていた。

そして1972年(昭和47年)には、さらにスポーツ性能を高めた「カペラ ロータリークーペGSII」が登場する。

GSIIではサスペンションの設定が見直され、車高を40mm低下。ボディサイドにはアローストライプが施され、より精悍な外観となった。

エンジンも改良され、最高出力は125ps/7000rpm、最大トルクは16.3kgm/4000rpmへと向上した。

さらに5速MTを採用したことで、0-400m加速は15.6秒に短縮。最高速度は190km/hを維持しながら、よりスポーツ走行に適したモデルへと進化している。

こうした性能を武器に、カペラはモータースポーツの世界でも存在感を発揮した。

当時のマツダは、ロータリーエンジンの高性能を広くアピールするため、積極的にレース活動を展開していた。

その一翼を担ったカペラは、「風のカペラ」という愛称とともに、多くのクルマ好きに鮮烈な印象を残したのである。

美しいスタイリングと強力なロータリーエンジンを兼ね備えた初代カペラは、マツダが独自技術を武器に存在感を高めていた時代を象徴する一台といえるだろう。

【歴代モデル】角型ヘッドライトが特徴! 1970年登場の初期型

1970年(昭和45年)5月に発売された初代カペラのロータリークーペ。

フロントには角型2灯式ヘッドライトを採用し、リアには左右に2灯ずつ、合計4灯の丸型テールランプが配置されていた。

画像: 1970年(昭和45年)5月に発売された初代カペラのロータリークーペ。

1970年(昭和45年)5月に発売された初代カペラのロータリークーペ。

こうしたデザインは翌1971年のGシリーズ登場に伴って変更され、ヘッドライトは丸型4灯式、テールランプは六角形を基調とした形状へと進化した。

初期型とGシリーズではフロント・リア双方の表情が異なり、それぞれに独特の魅力が感じられる。

【歴代モデル】車高を40mmダウン! 走りを極めた高性能版GSII

1972年(昭和47年)に追加された「カペラ ロータリークーペGSII」は、シリーズの中でも特にスポーツ性能を重視したモデルである。

最大の特徴は、従来型より40mm低く設定された車高と、スポーツ走行を意識して強化されたサスペンションだ。

ボディサイドにはアローストライプが施され、足まわりには165SR13サイズのラジアルタイヤと4.5Jホイールを採用。

さらに、12A型ロータリーエンジンの最高出力は従来の120psから125psへと引き上げられ、トランスミッションも5速MTとなった。

最高速度は190km/h、0-400m加速は15.6秒を記録。走行性能を一段と高めたGSIIの当時の新車価格は114万円だった。

画像: 1972年(昭和47年)に追加された「カペラ ロータリークーペGSII」

1972年(昭和47年)に追加された「カペラ ロータリークーペGSII」

マツダ カペラ ロータリークーペGS(S122型) 主要諸元

●全長×全幅×全高:4150×1595×1395mm
●ホイールベース:2470mm
●車両重量:975kg
●エンジン型式・種類:12A型・2ローター
●排気量:573cc × 2
●最高出力:120ps/6500rpm
●最大トルク:16.0kgm/3500rpm
●トランスミッション:4速MT
●タイヤサイズ:165SR13
●新車価格:87万円

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