三菱デリカ兄弟が売れている。兄貴分のデリカD:5は2007年に登場したご長寿モデルにもかかわらず、熟成を重ね、2025年度には過去最高の販売台数を記録。一方、弟分のデリカミニも2025年10月にフルモデルチェンジして以降、好調な販売を続けている。そこで今回からデリカ兄弟をじっくり使ってレポートする。まずは弟分のデリカミニからだ。(モーターマガジン2026年10月号を再編集)

文: 中村圭吾/写真: 永元秀和
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軽自動車に300万円は高い?デリカミニを1カ月使ってみた

画像: 見た目はほぼキープコンセプトといった感じだが、「デリ丸」モチーフのデザインはやややんちゃ感が抑えられて少し大人っぽくなった印象。とはいえ、中見は見た目以上に進化していた。

見た目はほぼキープコンセプトといった感じだが、「デリ丸」モチーフのデザインはやややんちゃ感が抑えられて少し大人っぽくなった印象。とはいえ、中見は見た目以上に進化していた。

デリカミニといえば、先代が2023年に登場したばかりだったにもかかわらず、わずか2年半で新型へと切り替わった。CMでもお馴染みの「デリ丸」をモチーフとした基本デザインこそ大きく変わらないものの、中身を大幅に充実させ、商品力を高めている。また、軽自動車でありながら最上級モデルでは諸費用などを含めると300万円を超える価格設定も話題となった。

それでも実際には装備満載の上級モデルが売れているという。もはや「軽自動車に300万円」という価格だけで判断する時代ではないのかもしれない。そもそもセカンドカーではなく、家族のメインカーとして選ばれているのでは?そんな疑問を胸に、約1カ月間使ってみることにした。

実は先代デリカミニも同様に長期レポートした経験がある。それから約3年。家族も少し大きくなり、ますますデリカミニを使い倒せる環境になった。

660ccでも高速道路は余裕! 驚かされた走りの進化と静粛性

画像: インテリアは12.3インチ大型ディスプレイにGoogle機能を搭載。Googleマップやアシスタント以外にも、Google Playを使えばさまざまなアプリを車内で楽しむことができる。

インテリアは12.3インチ大型ディスプレイにGoogle機能を搭載。Googleマップやアシスタント以外にも、Google Playを使えばさまざまなアプリを車内で楽しむことができる。

今回のテスト車は「T プレミアム DERIMARUパッケージ(4WD)」(車両価格は290万7300円)。ターボエンジンを搭載する最上級モデルだ。Google搭載インフォテインメントシステムや前後ドライブレコーダー、ETC2.0に加え、マイパイロットなどの先進安全・快適装備も充実している。

現行の軽自動車規格は1998年に改正されたもの。登録車が年々大型化する中、約30年にわたり基本的なサイズは変わっておらず、それが今では街中で扱いやすい絶妙な大きさとなっている。一方、限られた車体に年々厳しくなる安全基準や多くの先進装備を盛り込むことで、車両重量は増加傾向にある。それでも排気量は660cc、最高出力も64psという軽自動車の枠内。絶対的な動力性能だけを見れば、多くは望めないはずだ。

しかし各メーカーは、その制約の中で軽自動車のドライバビリティを着実に高めてきた。デリカミニを長期間、そして長距離走らせることで、それをあらためて強く実感した。

エンジン出力自体は変わらなくても、パワー特性やトランスミッション制御は確実に進化している。120km/hでの巡航も苦にならず、追い越し加速にも余裕がある。巡航時のエンジン回転数は3000rpm前後で、何よりボクシーなスタイルにもかかわらず静粛性が高いことに驚かされる。

ピラーやドアミラーなどの空力処理に加え、エンジンフードや車体の遮音対策もしっかり施されている。その結果、軽自動車はもはや「我慢して乗るクルマ」ではない。むしろ子どもが小さい4人家族なら、これ1台で完結できるところまで進化している。そう考えれば、1.5Lクラスのコンパクトカーと変わらない約300万円という価格も、決して高すぎるとは思わなくなってくる。

家族4人のメインカーとして十分 子どもたちも夢中になる快適装備

画像: シートアレンジも多彩だが、子どもが小さい(2歳と4歳)我が家4人家族の場合は、320mmのスライド機構を使って、後席を前方まで下げて使用。すると4名乗車でもスーツケースやベビーカーも余裕で収まる。

シートアレンジも多彩だが、子どもが小さい(2歳と4歳)我が家4人家族の場合は、320mmのスライド機構を使って、後席を前方まで下げて使用。すると4名乗車でもスーツケースやベビーカーも余裕で収まる。

使い勝手も申し分ない。我が家では後席が2人の子どもの専用スペース。チャイルドシートを2脚装着したまま後席を前方へスライドさせ、荷室を広げて使っている。これなら4人乗車でも、小さな子どもがいる家族には十分な荷室容量が確保できる。ベビーカーやスーツケースを積んで、2泊3日程度の旅行なら1台で難なくこなせる。

暑い時期には左右スライドドアのサンシェードを下ろし、リアサーキュレーターをオンにするのが我が家の基本スタイルだ。普段乗っている少し古いクルマにはプライバシーガラスもなければ、後席の空調設備もないため、貼り付け式のサンシェードと扇風機で対応している。それだけに子どもたちもデリ丸の快適さに気づいてしまったようで、エンジンをかけた瞬間から「サーキュレーターを強くして」と注文が入るようになった。

画像: 家族で出かける際の後席は子ども専用。軽自動車とはいえ室内空間が広いがゆえに、前方からのエアコンのみでは後席の温度は下がりづらい。そんなときもロール式のサンシェードとサーキュレーターが用意されているので快適。

家族で出かける際の後席は子ども専用。軽自動車とはいえ室内空間が広いがゆえに、前方からのエアコンのみでは後席の温度は下がりづらい。そんなときもロール式のサンシェードとサーキュレーターが用意されているので快適。

シートバックテーブルも子どもたちの遊び場に早変わり。停車中にはYouTubeを見たいという。いいのか悪いのか・・・いや、家族にとっては、きっといいのだ。

そんなファミリーカーとしての便利さばかりが目立つが、デリカミニは運転する側にとっても決して我慢を強いるクルマではない。前述した動力性能を含め、走りの質は非常に高い。

画像: チャイルドシートを2脚装着。スライド機構を活かして荷室と足元のスペースを調整できるのもポイント。

チャイルドシートを2脚装着。スライド機構を活かして荷室と足元のスペースを調整できるのもポイント。

500kmのロングドライブも難なくこなす 返却したくなくなるデリカミニの実力

画像: 全高が高いがゆえに、走りに不安は覚えるかと思いきや意外なほど安定志向で安心安全なドライブが可能。

全高が高いがゆえに、走りに不安は覚えるかと思いきや意外なほど安定志向で安心安全なドライブが可能。

今回の長期テスト中、一度だけ高速道路で前走車が避けた落下物に遭遇した。幸い後続車がいないことを確認できたため、しっかり減速してからハンドルを切って回避したのだが、100km/h前後から急減速し、進路を変えるという場面でも姿勢を大きく崩さなかった。背の高い軽ハイトワゴンであることを考えれば、その安定感には私だけでなく同乗していたカメラマンも驚いたほどだ。

それはファミリーカーとしてデリカミニに求めたい、安心感や信頼感をあらためて実感する出来事でもあった。スーパーハイトワゴンが登場した当初は、高速安定性を不安視する声も少なくなかったが、この数年での進化は著しい。

実際、高速道路では速度域が上がっても、横風や雨に見舞われても安定感は高い。今回の試乗車が4WDであることに加え、165/60R15という軽自動車としては大径のタイヤを履いていることも効いているのだろう。往復500km程度のロングドライブも苦にせず、1カ月を通してファミリーカーとして不満や不安を感じる場面はほとんどなかった。

ただし燃料タンク容量は軽自動車らしいサイズ。高速巡航では15〜16km/L前後の燃費を記録したものの、500kmを無給油で走り切るのは難しい。また、マイパイロットの設定速度が120km/h区間でも115km/hまでなのは少々残念だった。もっとも、そこまでの高速・長距離移動を軽自動車に求めること自体、想定を超えた使い方なのかもしれない。

とはいえ、それらを差し引いても「軽自動車だから」という言い訳をほとんど必要としないほど、充実した1台だった。300万円という価格も、1カ月間家族のメインカーとして使った後では、最初とは少し違って見えてくる。

そして3年前のテストと同じく、返却の日が近づくと寂しくなる。クルマそのものの出来の良さはもちろんだが、そこはやっぱり「デリ丸」の力なのだろう。

さて、次回はいよいよ兄貴分、デリカD:5へ。デリカミニで感じた「家族の1台としての実力」は、さらに大きく、たくましい兄ではどう変わるのか。じっくり使って確かめてみたい。

画像: 三菱デリカミニから「デリカアニ」ことデリカD:5へ乗り換え。その模様は次回お伝えしたい。

三菱デリカミニから「デリカアニ」ことデリカD:5へ乗り換え。その模様は次回お伝えしたい。

三菱 デリカミニ T プレミアム DERIMARUパッケージ 主要諸元

●全長×全幅×全高:3395×1475×1815mm
●ホイールベース:2495mm
●車両重量:1050kg
●エンジン種類:直4DOHCターボ
●総排気量:659cc
●最高出力:47kW(64ps)/5600rpm
●最大トルク:100Nm(10.2kgm)/2400~4000rpm
●トランスミッション:CVT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:レギュラー・27L
●WLTCモード燃費:17.8km/L
●タイヤサイズ:165/60R15
●車両価格(税込み):290万7300円

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