▶▶▶写真9枚|「48年前のクルマとは思えない⋯」流麗なシルエットを持ったホンダの名車[初代プレリュード]
乗る人の感性を満たす、独創的なクーペの誕生
1978年(昭和53年)11月、ホンダは新たな2ドアクーペ「プレリュード」を発売した。その開発思想は、当時の国産乗用車の中でも個性的なものだった。

伸びやかなロングノーズと短いデッキが特徴的。低く構えたボディに細身のピラーを組み合わせ、軽快で洗練されたフォルムを実現している。
高い動力性能を追い求める純粋なスポーツカーでもなければ、多人数での移動を前提としたファミリーカーでもない。ホンダが目指したのは、オーナー自身のライフスタイルを充実させるための「スペシャル・プライベート・カー」だった。
その考え方は、車体のパッケージングにも明確に反映されている。乗車定員は4名ながら、室内空間は前席の快適性を優先。後席の広さを追求するのではなく、ドライバーと助手席の乗員が心地よく過ごせることに重点を置いた設計となっていた。
この割り切ったコンセプトが、プレリュードならではの流麗なスタイリングにもつながっている。
長く伸びたボンネットに対し、後部のデッキは短くまとめられ、全体のプロポーションは低くワイド。直線を効果的に用いたシャープなボディラインが、端正な美しさとスポーティな雰囲気を生み出していた。

前席重視のパッケージングから生まれた、美しい2ドアクーペのスタイリング。1970年代後半の国産車の中でも、ひときわ個性的な存在だった。
また、細身のピラーと緩やかに湾曲したウインドウの組み合わせも特徴的だ。軽快な印象を演出するとともに、運転時の良好な視界を確保するという実用面でのメリットも備えていた。
単なる見た目の美しさだけでなく、快適性や機能性まで考慮されたデザイン。初代プレリュードには、ホンダが考える新しい時代のパーソナルカーの理想像が凝縮されていたのである。
国産車初の電動サンルーフなど、先進装備も充実
初代プレリュードの先進性は、外観だけにとどまらない。室内に目を向けると、当時の国産車としては独創的な発想を取り入れた装備が数多く見つかる。
なかでも目を引くのが、インストルメントパネルに配置された「集中ターゲットメーター」だ。

スピードメーターとタコメーターを同軸上に配置した「集中ターゲットメーター」。独特の表示方法は視線移動の低減を狙ったものだった。
一般的な2眼式メーターとは異なり、速度計とエンジン回転計を同軸上に重ねて配置。両者をひとつにまとめることで、走行中の視線移動を抑えながら必要な情報を読み取れるように工夫されていた。
周囲には燃料計や水温計、各種インジケーターを集約。ロータリー式のオートラジオもメーターの横に収められ、運転姿勢を大きく変えずに操作できるレイアウトが採用された。
さらに、初代プレリュードを象徴する装備のひとつが、電動式サンルーフである。

国産車初の電動式サンルーフを採用したことも大きな話題に。Eタイプを除いて標準装備され、スイッチひとつで開放的なドライブを楽しめた。
国産車として初めて電動サンルーフを採用し、Eタイプを除くグレードに標準装備。スイッチ操作だけでルーフを開閉でき、クーペならではの快適な室内に、開放感という新しい魅力を加えた。
シートについても、前席の居住性やホールド性を重視しながら、質感の高い仕上がりを追求している。

前席の快適性を重視した室内設計を採用。落ち着いた雰囲気のシートは前後とも質感が高く、パーソナルクーペにふさわしい上質さを追求していた。
こうした装備の数々からも、初代プレリュードが単に移動するためのクルマではなく、ドライブそのものを楽しむために生み出されたモデルであることが伝わってくる。
快適性だけでなく、走りの質にも徹底してこだわった
優雅なスタイリングと充実した装備に注目が集まる初代プレリュードだが、走行性能についても、ホンダらしい技術的なこだわりが随所に盛り込まれていた。
今回紹介するXRに搭載されているのは、排気量1750ccのEK型直列4気筒SOHCエンジン。当時のアコードにも用いられていたCVCC方式を採用し、昭和53年排出ガス規制に適合していた。
最高出力は5速MT仕様で90ps/5300rpm、最大トルクは13.5kgm/3000rpmを発生。際立って高出力というわけではないものの、日常域での扱いやすさと軽快な走りを重視した特性に仕上げられていた。トランスミッションには5速MTのほか、ホンダ独自の自動変速機「ホンダマチック」も用意された。

初期型の1.8L CVCCエンジンは最高出力90ps(5速MT仕様)。1980年の改良ではCVCC-IIへ進化し、最高出力は95psに引き上げられた。
エンジンには、8個のバランスウエイトを備えるクランクシャフトを採用。コンロッドやピストンなどの運動部品も入念にバランス調整を行い、振動の低減と静粛性の向上を図っている。
さらに、2本のトルクロッドとV字状に配置されたエンジンマウントによって、車体へ伝わる振動を抑制。排気系には大型サイレンサーやフレキシブルパイプを組み合わせ、ドライブシャフトにもダイナミックダンパーを設けるなど、快適性を高めるための対策が施されていた。
ボディには、サイドパネル一体式の高剛性モノコック構造を採用。エンジンルームのサブフレームを車体と一体化することで、軽量化と剛性向上の両立を目指している。
前後のピラーやルーフサイドには二重箱構造を取り入れ、ドアの窓枠やルーフパネルも強化。衝突安全性への配慮だけでなく、走行時の振動や騒音を抑える上でも重要な役割を果たしていた。
足回りは、前後ともストラット式の独立懸架とし、スタビライザーも前後に装備。ダンパーをオフセットして配置することで作動時の摩擦抵抗を抑え、路面からの入力をしなやかに受け止める設計となっている。

前後ストラット式の4輪独立懸架を採用。スポーツカーを標榜するモデルではなかったが、軽快なハンドリングと優れた操縦安定性を備えていた。
こうしたサスペンションの工夫により、快適な乗り心地と軽快なハンドリングを両立。FF方式を採用しながら、ドライバーの操作に素直に応える操縦性を追求していた。
ブレーキはフロントにディスク式、リアにリーディングトレーリング式ドラムを採用。真空倍力装置によってペダル操作時の負担を軽減し、安定した制動性能の確保にも配慮されている。
その後、1980年には改良型のCVCC-IIエンジンを搭載し、5速MT仕様の最高出力を95psに向上。燃費性能や走りの質にも磨きがかけられた。
初代プレリュードの意義は、豪華な装備を備えた美しいクーペを送り出したことだけではない。先進的な室内設計、優れた操縦性、快適性を実現する技術などを、高い次元でまとめ上げた点にあった。

4本スポークのステアリングと独創的なインパネが印象的。とくに大型の集中ターゲットメーターは、当時としても斬新なコクピットを演出していた。
そして、その後のプレリュードがスペシャリティカーとして独自の地位を築いていくことを考えれば、初代が果たした役割は決して小さくない。
「前奏曲」を意味する車名のとおり、ホンダの新しいクルマづくりを予感させる存在だったのである。
ホンダ プレリュードXR(初代・SN型) 主要諸元
●全長×全幅×全高:4090×1635×1290mm
●ホイールベース:2320mm
●車両重量:900kg
●エンジン型式・種類:EK型・水冷直列4気筒SOHC(CVCC)
●総排気量:1750cc
●最高出力:90ps/5300rpm
●最大トルク:13.5kgm/3000rpm
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:175/70SR13
●新車時価格:138万円(東京地区)
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