同じ“力”を表すものだが、「トルク」と「パワー」では性質が違う
エンジンの性能を表す「トルク」と「パワー」という表現をごちゃまぜに使っているケースが多い。同じ力を表す言葉だが、実は性質が違うものだ。
わかりやすくするために、自転車を漕ぐときを例に説明すると、ペダルの上に乗せた足に掛かる力がトルクである。自転車の場合、体重が重ければトルクは大きいということになる。余談だが、筋肉が強くてもペダルを押す力が強くなるからトルクは大きくなる。
国際単位ではトルクはNm、パワーはkW
トルクはNm(ニュートンメーター)で表すのが国際単位。回転軸に長さ1mの棒を付け、その先端に掛かる力(N=)がトルクという回転力である。
自然吸気のエンジンでは1リットルあたり100Nmが標準的な数字だと覚えておくとわかりやすい。最近のダウンサイジングターボの代表格であるフォルクスワーゲンゴルフTSIに搭載される1.2リットルエンジンの場合、最大トルクが175Nmだから、1.75リットルエンジンに相当するトルクを発揮できるということになる。
パワーはスペック表では出力の項目で表し、kW(キロワット)が国際単位だ。ちなみに馬力(ps)に換算するにはkWに1.36を掛ける。パワーは、自転車に例えると何回転ペダルを漕いだかという仕事量だ。エンジン出力は機械で測ることができない。トルクを測定し計算で導き出されるのがパワーである。その計算式がこれだ。
W=2π×rpm×Nm
単純に「エンジン回転数×トルク=パワー」と考えればよい。例えばBMW X1 xドライブ20iの2L4気筒ターボエンジンの性能曲線を見ると、280Nm/1250-4600rpmというトルクカーブが見える。さらに最高出力は141kW/5000rpmになっている。トルクカーブの5000rpmは270Nmだから、これを計算式に当てはめてみよう。
2×3.14×5000rpm÷60秒x270Nm=14万1300W=141.3kW
と出せる。
トルクは加速力、パワーはスピードに関係が深い
ちょっと難しかったかな。実際のクルマでは、トルクは加速力に大きく影響し、パワーはスピードに関係が深い。ペダルを漕ぐ力=トルクが強ければ加速力が強い。でも高いスピードを出すためにはペダルをたくさん漕がなくてはならない。1秒間でできる仕事が、パワーだ。
力はあるけど仕事をしないヤツがいるだろう。トルクはあるけどパワーがないヤツだ。でもやせていて力はなくても、よく動けば仕事ができるパワーがあるヤツになれるぞ。