コンパクトカー作りの巧みさにおいて際立った実力を持つスズキから、新しいコンセプトのモデルが登場した。全長わずか3700mmでボデイは900kgを切る超軽量のクロスオーバー、ありそうでなかった個性と言えそうだ。
画像1: 【試乗】スズキ イグニス ハイブリッド MZ 2WDは、スズキだから作れたニュークロスオーバー

スズキには魅力的なコンパクトカーが数多く揃っている。小型車に限っても、ソリオ/ソリオバンディット、スイフト、SUV系ではSX4 Sクロス、ジムニーシエラなど、さまざまなニーズに応えるラインナップとなっている。

そこに新たに登場したイグニスは、軽自動車のハスラーとの近似性さえも感じさせるが、確かにそれらのどのモデルとも違う。

スペックを見て、まずその小ささに驚く。全長3700mm、全幅1660mm、全高1595mm、今回試乗した車両の重量はわずか880kgしかない。このコンパクトなボディと高めのアイポイントが生み出すパッケージが大きな特徴となる。スズキのDNAを感じさせるアイコンが散りばめられたデザインが強い印象を放ち、実際のサイズほど小さく見せないのがポイントだ。

最大の魅力はこのデザインとパッケージにあると言っていいいだろう。シンプルなデザインだが実用一点張りではなく、適度に車高を高めたことで様々な用途に対応する走行性能や積載性能、利便性を備えている。

画像: 1.2Lエンジン+モーターのマイルドハイブリッド。減速時に蓄えた電力を燃料消費の多い発進/加速時に使う。

1.2Lエンジン+モーターのマイルドハイブリッド。減速時に蓄えた電力を燃料消費の多い発進/加速時に使う。

パワーユニットは全車1.2L K12C型デュアルジェットエンジンとモーターを組み合わせたマイルドハイブリッドを搭載。ソリオ/ソリオバンディットで定評のシステムで、取材車のJC08モード燃費は28.0km/Lを達成している 。なお、FFのほか、ビスカスカップリング式の4WDも設定する。

「使い勝手の良いスタイリッシュなコンパクトクロスオーバー」という開発コンセプトが示すとおり、雪道や荒れた路面でも安心して走行できるロードクリアランス/最低地上高を確保する点にも注目。4WD車にはヒルディセントコントロールやグリップコントロールを標準装備している。

走りは全体的には穏やかな印象。雪道やぬかるみなど滑りやすい路面や燃費を考慮してのことか、発進時はすーっと滑らかにトルクが立ち上がる。軽量コンパクトなボディだけにアクセルペダルを深く踏み込めば鋭い加速が生まれるが、通常の踏み込みではあえてモーターとエンジンのトルク特性をコントロールしているのだろう。速度を乗せていけば軽快に走らせることができるし、そういった走り方がこのクルマにふさわしい気がする。

快適装備の充実ぶりも見逃せないところ。全方位モニター、自動ブレーキ、車線逸脱防止機能、誤発進防止機能、Apple CarPlay対応、運転席シートヒーター(4WD車は助手席にも設定)、後席足下へのヒーターダクト、リアフォグランプなど、このクラスとして一歩先を行っている。

メカニズムを見るとソリオ/ソリオバンディットに近いが、スライドドアを持つ都市型トールボディワゴンとは明らかに違う。強いて言えば、SX4 Sクロスとハスラーの中間的存在となるのだろうか。

ライバルとしては、トヨタ アクアX-URBAN、フォルクスワーゲン クロスアップ!などがあるが、それらとも個性がやや異なるようにも思える。もっと気軽に、もっと自由にどこにでも行けそうな、ありそうでなかったコンパクトカーの誕生だ。(文:松本雅弘/写真:小平寛)

画像: 豊富なボディカラーもイグニスの大きな魅力だろう。個性的な全8色に加え、ブラックルーフ仕様も用意する。

豊富なボディカラーもイグニスの大きな魅力だろう。個性的な全8色に加え、ブラックルーフ仕様も用意する。

●主要諸元<イグニス ハイブリッド MZ 2WD>
全長×全幅×全高=3700×1660×1595mm 
ホイールベース=2435mm 
車両重量=880kg 
エンジン=直4DOHC 1242cc 
最高出力=67kW(91ps)/6000rpm 
最大トルク=118Nm(12.0kgm)/4400rpm 
モーター=直流同期電動機 
モーター最高出力=23kW(31ps)/1000rpm 
モーター最大トルク=50Nm(5.1kgm)/100rpm 
トランスミッション= CVT 
駆動方式=FF 
JC08モード燃費=28.0km/L 
タイヤサイズ=175/60R16 
車両価格=1,641,600円 
※取材車のボディカラーはネオンブルーメタリック。OPのセーフティパッケージ(97,200円)、全方位モニター付メモリーナビゲーション(142,560円)を装着。

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