まるで“スポーツカー”
2011年の秋に開催された東京モーターショーにおいて、日本初お披露目となったレンジローバーイヴォーク。あれから5年の歳月が流れたが、そのスタイリングの素晴らしさは、まったく色褪せることがない。いまも街中で遭遇すると、つい見とれてしまう。
そして“かっこいいな”と改めて思う。同じように思う人はどうやら世界中にたくさんいるようで、イヴォークはランドローバー社躍進の立役者になっている。
さて、そのイヴォークに注目のモデルが追加された。コンバーチブルである。そもそもスタイリッシュなイヴォークのオープンモデルとあれば、それはかなり期待が高まろうというものだ。ソフトトップを上げた状態での初対面となったが、その期待が裏切られることはなかった。
ルーフを収納するスペースが必要になるので、Cピラーあたりからリアエンドにかけての形状はノーマルルーフのモデルとはかなり異なるが、うまくクーペ風に仕上がっている見事なデザインである。
ソフトトップをしたまま試乗へと出かけた。首都高から東名に入ったが高速巡航では9速ATのメリットが大いに発揮された。デビュー時は6速ATだったが14年モデルからこのZF社製9速ATを採用している。当初はスムーズさに物足りなさを感じるという声もあったようだが、すでに2年あまりが経過していることもあり、その間に熟成が進んだ。ずいぶんとパワートレーン全般がスムーズに馴染んだようだ。
そして、最高出力240ps、最大トルク340Nmというエンジンの能力をあらゆる場面でうまく効率よく引き出している印象を受けた。100km/hでの巡航では9速でエンジンは1600rpmとなる。同じ9速ATでもメルセデスベンツEクラスのものは、Dレンジで100km/h以下では9速にはほとんど入らない。
その点、イヴォークの9速ATは100km/hという制限速度の日本において、100%力を発揮するタイプと言っていいかも知れない。また、100km/hまででは風切り音などはまったく気にならなかった。遮音性は高く、ノーマルルーフモデルと変わらずに車内での会話などはできる。
高速道路を下りて一般道をしばらく行き、ちょっとしたワインディングも走ってみたが、乗り心地は全般に硬めである。ちなみにタイヤは標準装着の245/45R20サイズで、銘柄はコンチネンタルのコンチクロスコンタクトだった。ちなみに、このタイヤは“デザイン性とパフォーマンス性を兼ね備えたSUV用タイヤ”ということだ。
ステアフィールはしっかりとしていて、リニアリティが高く好印象を受けた。また、ハンドルを握ったときのグリップ感もいい。さらに剛性感が高いシートも特長的で、とくにサイドサポート性は非常にしっかりとしているので、ワインディングロードで少々ハードな走行をしても身体をがっちりホールドしてくれるので安心だ。
キャビンを見てみよう。まず留意ポイントは乗車定員が4名ということだろう。ノーマルルーフモデルは4ドアもクーペも5名だが、コンバーチブルはリアシートがセンターできっちりと分かれている。
そして、このリアシートに乗り込むのは少々たいへんではある。高めに足を上げてボディのサイドシル部分を“よっこいしょ”とまたぐような感じだが、一度リアシートに収まってしまうと、これが結構快適である。コンバーチブルに限ったことではないが、着座位置がフロントシートより高いので、前方がよく見渡せて圧迫感が少ないのだ。ソフトトップを上げたときでも満足できるレベルだった。
インパネまわりでは10.2インチのタッチパネルを持つ最新インフォテインメントシステムが、センターコンソール上に文字どおり幅を効かせている。ジャガー&ランドローバーのアイコンとなっているダイヤル式シフトセレクターの手前には、路面状況に合わせて選べる走行モードのスイッチがある。インパネはデジタルとアナログが的確に使い分けられていて、操作性もデザイン性も優れていると感じた。
さて、イヴォークはそもそもありきたりのSUVではないが、このコンバーチブルは、いろいろな意味において“スポーツカー”と言った方が実態に近いと思った。愛情を注ぐに値する個性あるクルマだ。(文:荒川雅之/写真:永元秀和)
●主要諸元〈イヴォーク コンバーチブル HSE ダイナミック〉
全長×全幅×全高=4385×1900×1650mm
ホイールベース=2660mm
車両重量=2020kg
エンジン=直4DOHCターボ 1998cc
最高出力=177kW(240ps)/5500rpm
最大トルク=340Nm/1750rpm
トランスミッション=9速AT
駆動方式=4WD
JC08モード燃費=9.6km/L
タイヤサイズ=245/45R20
車両価格=7,650,000円