LCにより華やかに幕を開けたレクサスの第三章
レクサスという日本発のプレミアムブランドが誕生してすでに27年が経過しているが、この間、ターニングポイントがひとつあった。それは2011年、スピンドルグリルを採用したGSがデビューしたときだ。ここでレクサスが誕生してからの第一章は幕を閉じ第二章となった。これ以降のレクサスはアグレッシブなデザインで、プレミアムブランドの中でいかんなく個性を発揮して存在感を高めたのはご存じのとおりだ。
そして今回、LCのデビューとともにレクサスの第三章が始まるという。「エモーショナルなデザイン」と「すっきり奥深いパフォーマンス」を目指す新世代レクサスの幕開けを象徴するモデルがLCなのだ。
具体的にはまずGA-L(グローバル アーキテクチャーラグジュアリー)プラットフォームが初採用される。これはFRモデル用のTMGAのようなもので、以後、レクサスのFRモデルはLSからISまで、このプラットフォームを使うことになる。それだけにこの出来映えによって、レクサスの将来が決まるといっても過言ではない。
GA-Lはまず低重心であることが特徴で、さらに軽量化を徹底、前後の重量配分はほぼ50対50を実現している、いわゆるフロントミッドシップレイアウトを可能にした。これに関連したこととしてはランフラットタイヤを全面採用してスペアタイヤをなくし、バッテリーをトランク部に収納したことも注目だ。
また、防音、防振性能に優れた高剛性ボディを実現するためにもGA-Lは役立つという。そのボディは“適材適所”の考えに基づいて、超高張力鋼板、高張力鋼板、スチール、アルミニウムを巧みに使い分けている。さらにCFRPも構造材の一部と外板に採用しているそうだ。
そしてもうひとつ。有段ギアを組み合わせたまったく新しいタイプのハイブリッドシステム、「マルチステージハイブリッドシステム」を採用したことも大きな注目点だ。エンジン後端にモーターを2個、その後に4段ギアを組み合わせており、10段の疑似変速制御を行う。ただし、10速のときはCVT制御により可能な限りエンジン回転を低く抑えて低燃費を実現するというハイテクだ。
さらにDレンジでのギアの選択にはAI-SHIFT制御を採用しており、ドライバーの運転スタイルに合わせた動きをする。これまでのハイブリッドの常識を覆す動的性能と走りの愉しさを実現したという。
次にエクステリアだが、これは12年の北米国際モーターショーで初お披露目されたLF-LCコンセプトのスタイリングを再解釈したというものだ。そしてそのデザインテーマは“セダクション&テクノロジー”ということで、それは佐藤恒治チーフエンジニアによれば「見た人を一瞬で魅了するようなコンセプトカーを超えるようなデザインであり、またこうした美しいデザインを追求することと、クルマを優れたパフォーマンスに仕上げることはつながっている」という。
実際によりよい運動性能のためにプラットフォームを低重心にしたことは、伸びやかなFRクーペシルエットの実現に貢献しているし、高レベルの空力性能を追求した結果が、艶やかなボディラインにつながっているというわけだ。「美しいものは高性能」ということか、逆に「高性能なものは美しい」のか。
細部を見ていくと、まずスピンドルグリルが実にゴージャスで、美しいFRクーペシルエットに馴染んでいるのがわかる。これまでスピンドルグリルはどちらかと言うと“迫力と存在感を増す”アイテムのように感じていたが、これだけ優雅な雰囲気を出すこともできるとは少々意外であったし、そのデザイン力は見事だと思った。
そして、もう一箇所、触れなくてはいけないのは、リアエンドのデザインだろう。ラインが三方向に流れるような造形には視覚的に様々な効果がありそうだ。力強さと安定感をイメージさせ、さらにひと目でレクサスLCとわかる、個性の主張にもなっている。このリアエンドのデザイン手法はフロントのスピンドリルに加え、今後のレクサス車にはすべて採用されるのかも知れない。(文:荒川雅之/写真:LEXUS)
※このレポートはMotor Magazine 2017年2月号に掲載したものです。走行フィールについては3月19日に配信予定です。