新ハイブリッドは走りが愉しい
まずハンドルを握ったのはハイブリッドのLC500hだ。ドライバーズシートに座ってハンドルに手を添えると、足は前方へ投げ出すようなポジションで、これは完全にピュアスポーツカーのコクピットだと感じさせる。そして前方視界は良好だ。ボンネットが低い効果もあるが、Aピラーとドアミラーの間に広めの空間があり、ここから斜め前方がよく見える。
アクセルペダルをゆっくりと踏んで走り出す。モーターのみによる発進だが、ペダルの踏み込み量に対するクルマの動きはリニアリティが高い。そして、車速を上げるとステップATのようにシフトアップしていくがそれが実に気持ちいい。この時点で、従来のハイブリッドモデルとはまったく異なるパフォーマンスを持っていることがはっきりわかる。
かと言って、これが従来からあるトルコン式ATとガソリンエンジンの組み合わせと同じようなフィーリングなのか言えば、それはまったく違う。これまでにない、新しいドライブフィールなのだ。そして、新しいからと言って、そこに違和感などは存在せず、すぐにしっくりと馴染め、スポーツカーとしてのドライビングを楽しめるのだ。
正直に言ってこれには感激した。もちろんクルマ全体のフィーリングなので、新しいハイブリッドシステムだけが優れているわけではないのだろう。しかし、いずれにしろドライビングを楽しむという視点からすると、このハイブリッドは素晴らしい。Dレンジでのシフトのアップダウンのタイミング、アクセルペダルの踏み込み対する反応などが実に自然だ。
公道の後、全長4kmほどのテクニカルなサーキットでも試乗したが、走行モードを「SPORT+」にすると、クルマ全体がピシッと引き締まるような印象になり、よく走って見せた。そして、ここで改めて、前後重量バランスの良さ、低重心なFRスポーツの愉しさを実感できた。
さて、この後に最高出力477psの5L、V8自然吸気エンジンを搭載するLC500でもサーキット試乗をしたが、これは王道をいくFRスポーツカーとして、その出来映えは見事だった。LC500hのシステム最高出力は359psで、LC500はそれを118ps上回り、なおかつ車重が50kg軽いのだから、サーキットで印象が異なるのは当然のことだろう。
スポーツカーの世界においても、いまや大排気量の自然吸気エンジンは貴重な存在なので、そうしたニーズに応えるという意味でも、いくらLC500hの出来映えがよくても、このLC500をラインナップする意義は大きいだろう。
レクサスLCは17年の春先に日本デビューを飾ることになる。その車両価格がいくらになるのかは多いに注目されるが、私見では1300から1400万円(編集部注:3月16日の発表によると1300万円から1450万円)といったところだ。
アメリカを中心に、そして日本でも、かなりな人気になるのではないかと思う。レクサス第三章は、これからLSのフルモデルチェンジへと展開していくわけだが、今回試乗したLCの出来映えからして期待は高まるばかりと言えそうだ。(文:荒川雅之/写真:LEXUS)
※このレポートはMotor Magazine 2017年2月号に掲載したものです。プロフィールについては3月18日に配信済みです。