オトナが乗っても恥ずかしくない軽スポーツ。
1990年代からエアロパーツやサスペンションなど、ホンダの純正アクセサリーを手がける「ホンダアクセス」のブランドが、“モデューロ”。
そのホンダアクセスが培ってきた走りのノウハウを投入して製作したコンプリートモデルが、“モデューロX”だ。
現在のラインアップは、N-BOX(2012年2月デビュー)、ステップワゴン(2016年10月デビュー)、そしてこのN-Oneの3モデルだが、今後の増殖が期待されるシリーズだ。
今回、富士スピードウェイのショートコースで試乗する機会を得たので、サーキットでのインプレッションをお届けしよう。
前後に専用デザインのバンパーを装着し、ノーマルより10mmほど車高を下げたスタイルは、かなり精悍。ガンメタのホイールも似合っている。
軽自動車をドレスアップしていくと、どうも子供っぽいというかオモチャっぽくなってしまうものが多いのだが、このモデューロXはオトナが乗っても恥ずかしくない、いい雰囲気に仕上がっている。
インテリアもブラック基調でスポーティ。本革巻きステアリングとセレクトレバーには赤いステッチがアクセントで入れられ、“Modulo X”のロゴが入ったコンビシートなど、どう見ても軽自動車のインテリアとは思えないほど上質だ。
CVT(Sレンジ)やEPS(電動パワステ)は専用にセッティングされているが、エンジンはノーマルのまま。
したがってショートコースとはいえサーキットでの全開走行ではパワー不足は否めないが、そのぶんハンドリングは楽しめる。
直進安定性を高めながら操舵フィーリングを向上させたというステアリングは、思ったとおりのラインをトレースできる。
パドル操作の応答性を高めたCVTは変速レスポンスが良く、サーキット走行に向いている。Sレンジでパドルシフトを駆使して走ると、なかなか楽しい。この感覚は、S660のCVTと良く似ている。
足まわりはストリート走行を重視したセッティングだからガチガチではない。サーキット走行ではそれなりにロールはするが接地感はあり、不安感はない。
パッドとフロントのローターに専用パーツを採用したブレーキの利きも良く、ハードなブレーキングにも対応してくれた。
空力を重視した前後バンパーの効果は、今回のサーキット走行くらいではわからなかったが、いずれハイウエイ走行で試してみたいものだ。
189万8000円という価格は軽としては少し高めだが、多くの専用アイテムが装着されていることを考えれば納得できる。
駐車場の問題とか経済的な問題とか、さまざまな理由でクルマは軽自動車1台しか所有できない。
だから、S660やコペンはチョイスできない。でも、スポーティな走りは楽しみたい…などと悩んでいた人にとっては、N-One モデューロXは最高のオールマイティ・スポーツ軽といえるだろう。
(文:篠原政明/写真:原田 淳)
ホンダ N-One モデューロX 主要諸元
全長×全幅×全高:3395×1475×1535mm
ホイールベース:2520mm
重量:870kg
エンジン:直3DOHCターボ・658cc
最高出力:47kW(64ps)/6000rpm
最大トルク:104Nm(10.6kgm)/2600rpm
ミッション:CVT(7速マニュアルモード付き)
タイヤ:165/55R15
価格:189万8000円