スタートからゴールまですべて初体験の道を行く周遊コース
まずは東名高速を西に向かう。御殿場JCTから先はもちろん新東名をチョイス。新城ICは2015年に浜松いなさICから先に伸びた新東名上にあるからだ。年内に最高速度120km/hの実証実験が始まると言われる新東名だが、最近は大型車の通行も増えて、時折現れる3車線区間まで90km/hリミッターのトラックに塞がれる事も多い。
それでも車線幅に余裕がある上に、路面状態も良好な新東名は、旧東名に比べると走っていてストレスが明らかに少ない。不慮の渋滞も少なく、概ね流れは順調だから到着時間も予想しやすい。この日も流れはスムーズで東京から新城までの約250kmを難なくこなせた。
新城市は全日本ラリー選手権の最終戦「新城ラリー」の開催地としてしても知られるが、実は戦国時代に竹田の騎馬軍と織田・徳川の鉄砲隊が死闘を繰り広げた「長篠・設楽原の戦い」があった古戦場として有名な場所だ。史跡も多いため古くから歴史ファンを引きつけている。
ICを降りて約2km、最初に向かったのが1万5千の竹田軍勢を500人の城兵で守り、武田氏滅亡のきっかけとなったと言われる長篠城址だ。戦いの激しさから後に廃城となったため建物は何も残っていないが、広い緑地内にお堀や廓跡の表示があった。保存館も併設されており、展示物を一通り眺めると城での戦いがなんとなく理解できた。
武田軍との戦いを「実感」できる設楽原歴史資料館
新東名方面に少し戻って道の駅「もっくる新城」で一休みした後、長篠城址保存館と共通券(400円)で入れる設楽原歴史資料館へ。ここは近代的な作りの資料館で、特に膨大な量の火縄銃の展示が迫力だった。屋上に上がると周辺の景色が広がり、竹田の騎馬隊を苦しめたと言われる馬防柵(もちろん復刻版だが)などが望めた。
再びクルマに乗り込み馬防柵を間近な場所まで見に行ったり、各軍勢の本陣跡を探して新城市内を巡る。僕は特別に歴史ファンという訳では無いけれど、戦国時代の戦いがどのような物だったのか具体的なイメージが湧くこの場所は訪れる価値ありと思った。
新城市を後にし、国道257を豊川沿いに北上する。田峯(だみね)という交差点から狭い山道に分け入り、農村歌舞伎で知られる田峯観音や、田峯城址などを見て回る。どちらもさほど規模が大きい訳ではないが、天下統一の要所であった三河や美濃には城跡や、その城にまつわる神社・仏閣が多い。
このまま国道257で設楽町に抜けるのは単調そうなので、田峯から東に方向を変えて稲目トンネルを抜け、県道32を進むつもりでいた。このルートには四谷千枚田など見所や、狭い素掘りのトンネルが続く険しいワインディングがあると聞いていた。こういう山岳ドライブ、僕はわりと好きなのだ。
しかし千枚田まで行ったところで、仏坂峠が崖崩れ工事で通行止めと知る。本当は岩古谷山に新しいトンネルが完成して通行が楽になった国道473に抜けて設楽町にアプローチしたかったのだが、通行止めは如何ともし難い。山奥ではよくある事なので、ここは素直に田峯まで引き返し県道257を北上する事にした。
(この遠まわり、まだつづく)
名物にうまいもんあり……「五平餅」
旅の供:ダイナミックでシャープな走りが楽しめるスカイライン
今回のスカイライン特別限定車(タイプSP 60thリミテッド)はダイムラーから供給を受ける2Lターボや4WDのハイブリッドなどすべてのパワートレーンが選べるが、旅の供となったのは2WDのハイブリッドだ。
システム構成は1モーター2クラッチ方式。3.5L V6エンジン後方にトルクコンバーターに代えてモーターを組み込んだ7速ATを置いている。エンジンとモーター間にクラッチがひとつあり、これを切り離すことでロスなくEV走行が行えるほか、トランスミッションの後方にももう1セットのクラッチがあり、この断続で発進や変速を制御する。
システム総合出力は364psとかなり強力。フーガでデビューしたこのシステムをひとまわり小型軽量なボディに搭載したスカイライン350GTハイブリッドは、走り志向の強い一台である。実際、高速道路でアクセルを深く踏み込んだ時の加速はダイナミックそのもの。ドライブモードセレクターをスポーツにセットするとエンジンサウンドが凄みを増すうえに、パドルシフトの反応もよりシャープになり痛快だ。
一方でクルージングに移ると、100km/h近くでもエンジンを積極的に停止させEV走行に移る。この二面性が面白い。動力性能にも余裕があり、東京から新城ICまでの高速走行約250kmがとても楽だった。
(モーターマガジン 2017年3月号 「日本自動車紀行 第24回」より抜粋)