ワゴンの持つユーティリティと高い走破性が両立されている
2017年2月22日にフラッグシップとなるS90、V90、V90クロスカントリーの3モデルを一挙同時発表したボルボ カー ジャパン。これにて2016年1月上陸のXC90から始まった、90シリーズラインナップが完成を見たわけだが、今回は一度に3車種同時に登場したため、グレードによってデリバリーが遅れたり、あるいは試乗車の到着が待たれているモデルもあった。
V90クロスカントリーもその中の一台だ。実は前身となったXC70は僕個人2世代を乗り継いだお気に入り。それだけに新生90シリーズの中でもクロスカントリーは最も興味深い一台で、試乗車が揃うのを心待ちにしていたのである。
現在のボルボラインナップでは、専用デザインの本格的なSUVボディのモデルをXCと呼び、ワゴンベースで車高を上げたクロスオーバー車両は、ベースモデル名の後にクロスカントリーを付けるという風に名前を使い分けている。そのためクロスカントリーはXCに対してライトデューティーなモデルと解釈されそうだがそうではない。ボルボSUVのルーツは、実はこのクロスカントリーにこそあるのだ。
ボルボがSUV界に初進出したモデルが、850エステート改めV70となったワゴンをベースに車高を上げたV70XC(クロスカントリーと読む)なのだ。本国デビューは1997年。日本にも2001年に上陸を果たし、そして翌年には早くもXC70に改名し専用モデルとして一本立ちしている。
国土の77%が森林と湖のスウェーデンはフラットダートがとても多く、ワゴンのユーティリティと高い走破性を両立させたクロスオーバーモデルが重宝がられた。時を前後してボルボ初の本格SUVとなったXC90も登場しているが、当時これは北米市場に対応するのが主目的で、オフロード車としての資質や、アドベンチャーカー的なイメージ作りは、むしろXC70の方でより積極的に行われたという経緯があるほどなのだ。
V70よりも全高が低く前後方向の伸びやかさも増している
新しいV90クロスカントリーもまた、この流れを汲んで作られているのは疑い様がない。前後バンパー下部からフェンダーアーチのエクステンション、サイドシルをチャコールでマット仕上げのクラディングパネルで覆い、バンパー下面をスキッドプレート風のフィニッシュとする手法はすでに堂に入った感じ。V90は前身となったV70よりも全高が低く、前後方向の伸びやかさも増しているため、ワイドフェンダーがより安定感を増して見せる効果もあるようだ。
またV90のグリルはクロームの縦桟なのに対し、クロスカントリーのそれはクロームをドット状に配している。さらにサイドウインドウモールもV90はクロームなのに対し、クロスカントリーはマット仕上げ。全体に光り物を抑えている印象で、これが独特の雰囲気を生んでいる。今回の試乗車はボディカラーがV90にもあるオスミウムグレーメタリックだったが、ルミナスサンドメタリックやメープルブラウンメタリックなど、暖色系のボディカラーがより良く似合うのもクロスカントリーの特徴だ。
ボディサイズはV90に対し、バンパー形状の違いで全長が5mm長く、幅はクラディングパネルのために25mm広く、全高は最低地上高55mmの上乗せそのまま高くなっている。このボディに搭載されるのは、シングルターボにより最高出力254ps、最大トルク350Nmを発生させるT5と、スーパーチャージャー&ターボチャージャーのツインチャージにより最高出力320ps、最大トルク400Nmのパワースペックを実現したT6という、2つの2L直列4気筒直噴ガソリンエンジン。それぞれに手頃なMomentum(モメンタム)と、充実装備のSummum(サマム)の2グレードが設定されている。駆動は全車アクティブオンデマンド技術を採用した最新世代のハルデックスカップリング式AWDのみ。トランスミッションは8速ATで統一されている。後編ではいよいよその走りに迫ってみよう。
(後編に続く 文:石川芳雄/写真:永元秀和)
主要諸元 <V90クロスカントリー T5 AWD サマム> 全長×全幅×全高=4940×1905×1545mm ホイールベース=2940mm 車両重量=1850kg エンジン=直4DOHC直噴ターボ 1968cc 最高出力=187kW(254ps)/5500rpm 最大トルク=350Nm(35.7kgm)/1500-4800rpm トランスミッション=8速AT(ギアトロニック) 駆動方式=4WD JC08モード燃費=12.9km/L タイヤサイズ=235/50R19 車両価格=7,540,000円