追う存在から追われる存在へ。世界水準のリアルスポーツへと華麗なる進化を遂げた4代目Z32は、90年代をリードする存在として周到に準備・開発されてきた。そのパフォーマンス、品質は国産スポーツの実力を世界に知らしめることになる。(この記事は2017年5月10日発売の「ホリデーオート6月号」より一部抜粋して構成しています)
ピュアスポーツカーの走りを取り戻したZ32
徐々にGT寄りになっていたコンセプトを一新、一気にピュアスポーツを目指したのがZ32だ。当時の日産が提唱していた901運動の成果のひとつでもあった。
基本レイアウトから一切の制約を排除し、近代スポーツカーの世界水準クリアを目指した日産の本気度は、それまでの古典ともいえるロングノーズからキャビンフォワードのロー&ワイドフォルムに一新した3ナンバー専用ボディにも表れている。
技術面での進化も著しい。エンジンは3ℓV6に統一され、しかもすべてDOHCとなった。特にターボは各バンクに完全に独立した吸排気系を備えるツインターボとして、280psに到達している。同時にNVCSで市街地レベルの速度域からのシャープなレスポンスを得ていたのもZの走りを支える技術のひとつだった。
フットワークでは、前後マルチリンクサスを新たに開発してコーナリングの限界性能を大幅に引き上げている。さらに、位相反転制御で回頭性を高めるスーパーハイキャスが搭載され、多少オーバースピード気味にコーナーに入っても破綻しない懐の深さも実現していた。
92年にZ初のコンバーチブルが登場したのも見逃せない。専用設計ボディは剛性が高く、オープンにありがちな脆弱さは最小限に抑えられた。特にカリフォルニアで、Zに新たな魅力が加わったと好評を得た。
(以下、第五話に続く)