文:島下泰久/写真:メルセデス・ベンツ日本
エンジンの反応がシャープで思うままの加速が得られる
走りの味付けも、予想どおりなかなかハードだ。ボディはオープンとは思えないほどにガッチリとした剛性感に満ちていて、硬めのサスペンションと大径タイヤによる鋭い入力も、不快なものとして伝えてはこない。実にソリッドな感触である。

ソフトトップの開閉に要する時間は約11秒で50km/hまでなら操作可能。
おかげでハンドル操作に対する応答も切れ味良く、右に左に軽やかなステップを踏むことができる。もちろん、この鋭いレスポンスには、アクティブリアアクスルステアリングも大いに貢献しているのだろう。街中でも感じられる、自分を中心にクルマが旋回していくような感覚には、まったく違和感がないとは言わないが、小気味良いのは確か。これにはオープンならではの上屋の軽さも効いているのかもしれない。
エンジンのレスポンスも、やはり凄まじくシャープだ。全域でフラットなトルクを発生し、いつでもどこでも思うままの加速を得ることができる。いや、あまりの吹け上がりの速さに、しばしば期待以上の速度まで達してしまうほどだ。

「コンフォート」、「スポーツ」、「スポーツ+」の3つからモードを選択できるAMGスピードシフト7速DCTを搭載する。

メルセデスのオープンモデルらしくAMGパフォーマンスシートにはエアスカーフやベンチレーション機能も用意。

4L V8ツインターボエンジンは、AMG GTより35psアップの最高出力557psを発生、最大トルクは680Nmとなる。

ハイパフォーマンスブレーキシステムを装着。ディスク径はフロント390×36mm、リア360×24mmとなる。

走っていて気になるのは今どきのオープンカーとしては大きめの風の巻き込みである。タイトなドライビングポジションに、少ない小物の置き場。ハードな乗り心地に猛々しいパワートレーン、そして飛ばすと容赦なく室内に入り込む風……まるでアメリカンモーターサイクルにでも跨っているんじゃないかという気にさせる走りである。
普段使いだとかアバンチュールだとか、そういう使い方が望みならメルセデスにはSLという選択肢がある。AMG GT Cロードスターは、走ることそれ自体を、そこで感じる刺激こそを目的に選ぶべきクルマと言うことができそうだ。

メルセデス・AMG GT C ロードスター諸元表(EU準拠)