トラディション(伝統)とともに明らかになるビジョン(展望)。
BMWグループが、デビューからほぼ30年を経て初のフルモデルチェンジを果たす新型「8シリーズ」の姿をお披露目したのは、毎年世界中から数千人の愛好家が集うというクラシックカーのビッグイベント『コンコルソ デレガンツァ ヴィラ デステ』だった。イベント全体のテーマは「80日間世界一周 —記録の時代への誘い-」で、イメージは19世紀末の「トラディション(伝統)」だとか。
しかし一方で、このイベントに展示されるクルマのコンセプトには、実は「ビジョン(展望)」も組み合わされているそうだ。いわゆるふつうのクラシックカーのコンクールではない。さすがに1999年からBMWが後援しているイベントらしいと言えそうだが、その象徴的なコンテンツのひとつが「コンセプトカー&プロトタイプ賞」というプライズの存在だろう。
そんな過去と現在と未来までミックスしたかのような舞台で、「コンセプト8シリーズ」は現した。そのデザインスタディは、「2018年にローンチされる予定の新型8シリーズクーペ」であり、「BMW社の歴史の中でも最大級のニューモデル攻勢の一端」であることが、公式に表明されている。
BMWクーペの本質とは、純粋無垢なダイナミクスをまとったモダン・ラグジュアリーにあり。
「7」を超える「8」は、まさにそのトップエンド プロダクトの要であり、上級セグメントでの地位を高める重要な武器として「実戦投入」される。「X7」などとともに、この非常に収益性が高いクラスでの新たな可能性を模索する狙いもある。シンプルに言えば「ガッポリ儲ける」ことを宿命づけられているモデルであり、そのためのこだわりと仕上げに妥協はない。
新8シリーズクーペのスタイリングは「シャープかつダイナミックなフォルムと、モダンで贅沢なしつらえが両立できることを実証している」と、BMW AGの取締役会長 Harald Krüger氏は語っている。「8シリーズはまさに何ものをも寄せ付けないスポーツモデルとしての絶対的パフォーマンスの頂点にある」と断言しながら、このニューフェイスが「高級車と呼ばれるクルマたちと、同じセグメントにあるクーペの基準を引き上げることになる」存在であり、クーペのみならず高級車というジャンルでのリーダーシップをとることをアピールしている。
BMWグループのデザインを担当する上級副社長 Adrian van Hooydonk氏は、「純然たるダイナミクスとモダンな高級感を体現する豪華なスポーツカー」として、コンセプト8シリーズのデザインワークに込められているのが、BMWのスタイリングを決定づける要素ひとつひとつに対する「斬新な解釈」だと語っている。くっきりとしたキャラクターラインや明確なボリューム感など、新しいデザインアプローチが盛り込まれているが、それらはもちろん、彼が考えるドライバーズカーらしさの純粋な表現にほかならない。(その2◎エクステリア編につづく)