無駄がないから美しい。運転に「集中」するために「集中」された機能。
余計なスイッチ類や不要なデコレーションは、極力排されているように見える。スイッチ類はさまざまな機能をグループ化したうえで、センターコンソール部に集中配置されているようだ。すべてはドライビングを「タスク」としてとらえ、集中して「こなす」ことにこだわった結果として生み出されたという。
一方で、理屈ではなく感覚的なドライビングファンの演出にもこだわりがある。たとえばインパネからドアにかけての流れるようなつながりや、高めのセンターコンソールが作り出す絶妙な包まれ感は、クルマとドライバーの一体感を高めている。全体的な面使いなどはとてもシンプルだが、それがかえってグレード感を上げているようにも感じられる。もちろん各部に使われている素材は、非常に上質なものだ。
シンプルなのに上質。シックなのに華やか。絶妙に贅沢な空間。
コンセプト8シリーズのインテリアには、感性に訴えかける機微と、理路整然としたエンジニアリングの帰結として生まれた機能美が融合している。そしてダイナミックに攻め込んでいくスポーツカーとしての才能と、プレミアムクーペとして心と時間を豊かに満たす品格を高い次元で兼ね備えている。そんな空間に、BMWが目指す「最高」のスポーツ性が芽生えることになったワケだ。
そうした「機微」を実感させ「機能美」を確実に操るためのデザイン的な工夫も、枚挙にいとまがない。とくにドライバーがクルマに触れる部分の「密着感」には、非常に強いこだわりがあるようだ。たとえばシートのデザインは一見、どことなく中世の貴婦人が正装としてまとっていたゴージャスなドレスを思わせる。だが、形状そのものはとてもスリムでクルマとの一体感をそうとうに高めてくれそうだ。シェルはカーボンファイバー製、表皮は最高級レザー。当然のごとく、軽くて上質だ。
思い切り立体感溢れるステアリングホイールは、鈍い輝きを放つアルミスポークがシャープに進行方向へと突き出すイメージだろうか。グリップ部のダークレザーとのコントラストは、シックな中に豪華さを兼ね備えて魅せる。赤いアルマイト処理が施されたパドルシフトの存在感も、ひときわ鮮烈だ。
それはまぎれもなく、新型8シリーズのプレビューでありプロローグ。
一部には「あくまでデザインコンセプト。市販モデルは別モノ」という説もある。しかし、公式リリースの最後にはしっかり記されていた。「BMWコンセプト8シリーズは、BMWが来年に同じフォルムで市場に導入する新型車のプレビューです」と。
新たな伝説のプロローグは、すでに始まっている。