高回転型自然吸気エンジンを持つGT3
『ポルシェ』と名の付くモデルは、それが何であってもサーキットを疾走する姿が思い浮かぶもの。そんな中にあっても、「これこそが、“サーキットに最も近い”1台」と断言したくなるのが、GT3というグレード名が与えられた911だ。
今から半世紀以上も前に初代モデルが誕生した、誰もが知るポルシェ911。そこに、初めてGT3というグレードが設定されたのは1999年のこと。
“普通の911”とは別モノのレーシングテクノロジーを満載した高回転/高出力型の自然吸気エンジンに、サーキット走行を念頭に置いたシャシやエアロパーツを組み合わせたこのグレードは、ベース車両がモデルチェンジを行うたびに進化を遂げ、スピード性能に磨きをかけた。ここに紹介するのは、991後期型をベースとした、数えて6代目となるモデルだ。
9000rpmまで引っ張る快感
後席を廃し、防音・遮音材までもを削って軽量化に努めたボディに、そんなサーキット生まれのエンジンを積んだ結果の加速シーンは、当然何とも刺激的! 電光石火の素早い変速を実現させるDCT仕様でも、従来型ではリスト落ちをしていながら強い要望に応じて今回”復活”となったMT仕様でも、アクセル操作に敏感に反応する自然吸気エンジンを、快音とともに9000rpmまで引っ張るのはこの上ない快感だ。
一般路走行では、歴代GT3史上で最良の快適性に驚かされたフットワークは、サーキットに到着してレーシングスピードへと達すると、今度はノーズの軽いRRレイアウトが実現させるシャープそのものな身のこなしや、空力性能の良さも実感させられるグリップ能力の高さに、また新たな驚きを味わわされることになった。
過酷さで知られるニュルブルクリンクの旧コースを「従来型よりも12.3秒も速く周回する」という最新のGT3は、現在では数多く用意される911ラインアップの中にあっても、やはり特別な1台そのものなのである。
最新型の最大の特徴は、フルモデルチェンジが図られたエンジン。500psを発する4Lのユニットは、911GT3カップカーや911RSRといった、最新のレーシングマシンに搭載されるものとほぼ同様の内容の持ち主。最高出力を8250rpmという高い回転数で発生し、許容回転数は9000rpmに達するという点も、その生い立ちを証明するかのようだ。
911GT3主要諸元
●サイズ=4562×1852×1271mm●ホイールベース=2457mm●エンジン=対向6DOHC 3996cc●最高出力=500ps/8250rpm●最大トルク=460Nm/6000rpm ●車両価格=2115万円