『トヨタメディアサービス』が、新たに『トヨタ コネクティッド』という社名で再スタートする。設立は2000年と、まだまだ企業体としては若いトヨタ自動車の子会社のひとつだが、注目度はダントツだ。最大の使命は文字どおり「つなげること」。「G−BOOK」のサービスなどに取り組んだ黎明期から同社を率いているのは、トヨタ自動車の常務役員を兼務している代表取締役社長 友山茂樹氏。実はこの友山氏が、とても興味深い人物だった。
画像: タイトル写真は、2016年のデトロイトオートショーで出品された衛星通信機能搭載の実験車。友山茂樹氏は、トヨタの専務役員としてプレゼンを担当した。1958年生まれ、群馬大学機械工学科を卒業後、1991年に当時のトヨタ自動車工業株式会社に入社した。2004年にトヨタ自動車株式会社e-TOYOTA部部長に就任、中国出向などを経て、2010年常務役員となり以来、事業開発、情報システム事業、IT本部、モータースポーツ本部など、多種多様な部門を統括してきた。『トヨタメディアサービス』の前身を、豊田章男氏とともに立ち上げた。

タイトル写真は、2016年のデトロイトオートショーで出品された衛星通信機能搭載の実験車。友山茂樹氏は、トヨタの専務役員としてプレゼンを担当した。1958年生まれ、群馬大学機械工学科を卒業後、1991年に当時のトヨタ自動車工業株式会社に入社した。2004年にトヨタ自動車株式会社e-TOYOTA部部長に就任、中国出向などを経て、2010年常務役員となり以来、事業開発、情報システム事業、IT本部、モータースポーツ本部など、多種多様な部門を統括してきた。『トヨタメディアサービス』の前身を、豊田章男氏とともに立ち上げた。

トヨタとトヨタ車の「つながる力」戦略を支える中核企業

2000年に同社が設立された当時の名は、『ガズーメディアサービス株式会社』だった。現トヨタ自動車社長(当時は取締役)の豊田章男氏とともにその発起人となったのが、友山氏である。インターネットもあまり普及していない時代に、「ITと自動車事業が融合する時代が来ると予見し、『ITによってお客様との接点を作る』との想いで、2000年に創立しました」と、当時を振り返っている。

2002年「G-BOOK」の運用を開始、タイなどへの海外展開を推し進めるとともにその機能をどんどん進化させていった。PHV/EV用の充電サポートツールの開発、販売に加え、スマートグリッドにおける電力使用情報を集約する「トヨタスマートセンター」など、クルマの電動化、IT化を支える数々のシステム構築にも携わってきた。現在では、テレマティクス、スマートコミュニティのサービスに加え、デジタルマーケティングやソリューション事業にも取り組んでいる。

現『トヨタ メディアサービス』の企業活動に関しては、リクルートページの説明が整理されていてとてもわかりやすい。就職も転職も無関係でもなかなか面白いので、興味がある方はぜひ。

2017年7月1日付で変更される『トヨタコネクティッド』という社名は、もともと北米の子会社『TOYOTA Connected ,Inc.』で使われていたものだが、今回の変更によって中国も含めてグローバルで統一される。そして、クルマとITをめぐるさまざまな協業関係やコラボレーションに関しても、より中核的な役割を期待されているようだ。その活動の広がりとともに、友山氏が夢見る「人とクルマと社会をつないで、豊かで心ときめくモビリティ社会」が、世界中へとまさに「つながって」いくことになる。

画像: 現段階でトヨタ的「つながるクルマ」の理想を体現しているのは、この「Concept-愛i」だろう。2017年CESで発表されたこのコンセプトカーは、AIによる密接なパートナーシップや、安全、安心といった移動の質を高めるエージェント技術など、モビリティのひとつの未来像を提案している。

現段階でトヨタ的「つながるクルマ」の理想を体現しているのは、この「Concept-愛i」だろう。2017年CESで発表されたこのコンセプトカーは、AIによる密接なパートナーシップや、安全、安心といった移動の質を高めるエージェント技術など、モビリティのひとつの未来像を提案している。

ITと同じくらい、モータースポーツにも熱心にも取り組んでいる。

この友山氏、『トヨタコネクティッド』だけではなくトヨタ社内の事業部門や関連カンパニーを複数統括している。2016年4月からトヨタは「もっといいクルマづくり」と「人材育成」の促進を目標として、さまざまな体制変革を推し進めているが、その中で2017年4月1日付で友山氏が担当する部署は、以下のとおりである。

事業開発本部(本部長)
渉外・広報本部
情報システム本部(本部長)
コネクティッドカンパニー(President)
GAZOO Racing Company(President)
Chief Information Security Officer

シンプルにクルマ好きとして気になるのは、『GAZOO Racing Company』のPresidentという肩書きだろう。実は友山氏は、やはり豊田社長(当時副社長)とともにGAZOO Racingを立ち上げた人物なのだ。2015年にはモータースポーツ本部副本部長となり、そのままカンパニー化された組織でPresidentを務めている。ITだけかと思ったら、しっかりエモーショナルな部分でも「熱い」。なんともマルチな人物だ。

将来のクルマビジネスを変えていく発想の原点は「転職情報誌」にあり?

そんな友山氏の多彩な発想の原点が、もしかすると「転職情報誌」にあるのかも…と思わせるエピソードがある。時は2015年、9月14日。東京理科大学の葛飾キャンパスで「日本自動車工業会 大学キャンパス出張授業 〜 クルマはもっと面白くなる! IoTで変わる車と社会 〜」と題して、友山氏の講演会が開催された。

その時の告知ポスターの謳い文句によれば、「入社当時、転職情報誌を読みあさる日々を過ごしたという当人が、いつの間にか会社のイノベーションを先導する存在になってしまった、という自らの人生を振り返り…」というから、興味深い。見逃してしまったのが、実に悔しいくらいだ。裏面のプロフィール部分にも「転職情報誌」の件は、繰り返し明記されている。

画像: www.toyota-ms.co.jp
www.toyota-ms.co.jp

どちらかと言えば「グ〜タラ系」だった友山氏が一念発起するきっかけとなったのは、さらに若かりし頃の豊田章男氏(当時係長)との出会いだったという。それでも、「入社数年目から転職情報誌を読みあさる日々」が、もしかするとそれまでのトヨタにはなかった発想や行動力の源になっているのかもしれない。あくまでもそこは、勝手な憶測に過ぎないのだが。機会があればぜひ一度、ご本人にお話を伺って確認してみたいと思う。

こんなところでも「つながる」活動に参加

たとえば「大小問わずさまざまな企業や研究機関等がもつ新しいアイデア、テクノロジー、ソリューションや、すでにサービスを開始している事業を活用して、新たなサービスを共同開発していくこと」を目的とするオープンイノベーションプログラム「TOYOTA NEXT」。2016年12月に募集が始まったこのユニークな活動でも、友山氏は選考予定メンバーの筆頭に名を連ねている。「もっとつながる」ための「もっともっとつなげる」友山氏の活動は今後、ますます広がると同時に深化していくことは間違いない。

画像: 「すべての人の移動の不安を払拭する安全・安心サービス」など、5つのテーマを基本に募集が始まったオープンイノベーションプログラム「TOYOTA NEXT」だったが、7月末までには協業する企業の選定が終わる予定だ。どんなプロジェクトが具体的に立ち上がるのか、ちょっと楽しみ。

「すべての人の移動の不安を払拭する安全・安心サービス」など、5つのテーマを基本に募集が始まったオープンイノベーションプログラム「TOYOTA NEXT」だったが、7月末までには協業する企業の選定が終わる予定だ。どんなプロジェクトが具体的に立ち上がるのか、ちょっと楽しみ。

画像: 2016年11月2日に開催されたトヨタの新たな「コネクティッド戦略説明会」で、友山氏はプレゼンを行った。ちょっと尺は長いけれど、YouTubeで公開されている「オンステージ」の模様は一見の価値あり。 www.youtube.com

2016年11月2日に開催されたトヨタの新たな「コネクティッド戦略説明会」で、友山氏はプレゼンを行った。ちょっと尺は長いけれど、YouTubeで公開されている「オンステージ」の模様は一見の価値あり。

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