会見場となったのはホンダの青山本社1階のショールーム。さっそうと姿を現した佐藤琢磨選手は、ホンダスマイルから花束を受け取った後、マイクを片手にインディ500優勝について語り始めた。
ラスト5周のバトルで勝算はあった!
「ラスト5周、トップに出てから本当にいろんな事を考えました。2012年からのインディ500は、トップで逃げ切るということがマシンの空力特性上、非常に難しくなったんです。それは先頭を走るクルマの切り裂く空気の壁というか抵抗が非常に大きく、後ろのクルマの方がスリップストリームを使って追い抜きやくなったからです。だから最終ラップかその1周前までは前に出たくないという傾向が最近は見られました。なので、なぜ5周も前にトップに立ってしまったのか、チームのみんなもファンのみんなも心配になったのかもしれない。しかし、僕には勝算がありました!」
「なぜかというと、残り5周あれば、どんな状況であっても巻き返すことができる自信があったんです。もし、エリオ・カストロネベスが翌周に勝負をかけてきて抜かれたとしても、僕は2周は我慢して最後の2周で勝負をかけようと思っていた。もし、エリオが2周かけて抜いてきたなら、僕は1周我慢してやはり最後の2周で勝負をかけるつもりだった。もし、エリオが残り3周で勝負をかけてきたなら、それは2周半をかけて追いかけてきたということになるので、そのときは1コーナーさえうまく押さえられれば次の2周後はチェッカーフラッグになるので、なんとか逃げ切れると思っていました。」
「実際、残り2周になるときにエリオが追いついてきたんだけど、彼はわざと抜かないのか、それとも抜けないのかはわからなかった。でも、僕はどのラインをディフェンスすればうまく押さえられるかを、その前のバトルの際にシミュレーションしていて、1コーナーでうまく彼を押さえることができた。それからはもう風向きも考えながら、スリップストリームにも入られないように、ストレートごとに自分から先に違う動きをして、なんとかなんとか逃げ切れることができた。それはもちろんホンダのパッケージングがあったらこそ。最終ラップの最終コーナーを超えたときに、自分たちが勝つんだと実感しました。」
レース中、ストレートでは約380km/h、コーナーのボトムでも約340km/hというスピードで駆け抜けるインディマシン。そんな超高速で走るだけでなく、熾烈なバトル中に、冷静に戦略を考えられる琢磨選手の精神力の強さを物語るエピソードだった。
ホンダからはご褒美はなんと「NSX」のプレゼント!
ホンダの八郷社長からは、お祝いのコメントと優勝のご褒美として、なんと「NSX」が贈られた。
「佐藤琢磨選手、日本人初のインディ500優勝、本当におめでとうございます! ホンダを代表して私からお祝いを申し上げたいと思います。シーズンが始まる前に、琢磨選手とはもう1度優勝しようと話をしておりましたが、それがインディ500で実現できたことに本当に感動しております。今日はその想いを込めて、ホンダから贈り物を用意させていただいきました。それは琢磨選手にも開発に携わっていただいた『NSX』です。本当におめでとう。これからもがんばって下さい。みなさんもこれからもご声援、よろしくお願いいたします。」