![画像: トヨタ・スポーツ800の原型となったパブリカ・スポーツ。ドアではなく、スライド式のキャノピーを備えた個性的なモデルだった。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783018/rc/2017/10/05/d21050281eb3e27d7ab94b09e167d5c6bdd69ca3_xlarge.jpg)
トヨタ・スポーツ800の原型となったパブリカ・スポーツ。ドアではなく、スライド式のキャノピーを備えた個性的なモデルだった。
トヨタスポーツ800の原型は、1962年の第9回東京モーターショーに出品された「パブリカ・スポーツ」の名で出品されたコンセプトカーでした。後方にスライドするキャノピー(天蓋)が特徴でしたが、生産型では雨天の際の不便さ、乗降時の利便性(特に女性には不便)を考慮して通常のドアに改められています。しかし 1965年(昭和40年)3月に登場した「トヨタスポーツ800」には、簡素なデザインのフロントグリル、オーバーライダーだけのバンパー、無駄のない曲面構成のボディなど、デザイナーの主張はそっくり引き継がれていました。
![画像: 全長 3610×全幅 1465mm。これは後のユーノスロードスターよりも 36cm全長が短かく 21cm幅が狭い、極めてコンパクトなサイズだった。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783018/rc/2017/10/05/76c3f64a5005a2bf44681ccd85d1006058e3c972_xlarge.jpg)
全長 3610×全幅 1465mm。これは後のユーノスロードスターよりも 36cm全長が短かく 21cm幅が狭い、極めてコンパクトなサイズだった。
![画像: トヨタ・スポーツ800 の空力ボディは航空機のそれに近かった。ボンネットはアルミパネル、ハードトップは FRPとし徹底した軽量化が図られている。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783018/rc/2017/10/05/7610647ee320b0b08bbb4bdc8d226a04716d9688_xlarge.jpg)
トヨタ・スポーツ800 の空力ボディは航空機のそれに近かった。ボンネットはアルミパネル、ハードトップは FRPとし徹底した軽量化が図られている。
![画像: FRP製のハードトップを外した状態。ハードトップは大人ならひとりで脱着できる重さに設計されていた。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783018/rc/2017/10/05/f701df61d3b6f57e14b24a021be177207c75e221_xlarge.jpg)
FRP製のハードトップを外した状態。ハードトップは大人ならひとりで脱着できる重さに設計されていた。
このボディにはふたつの大きな特徴がありました。ひとつはそのサイドウインドーに、曲面ガラスを使用したことです。これは前面投影面積の減少に大きく寄与していました。ふたつめは、有名なポルシェ911の “タルガ・トップ” の登場よりも約 1年早く、着脱可能のルーフ・パネルを採用したことです。これらの特徴を備えた航空機を思わせるエアロダイナミック・ボディの設計には、入念な風洞実験が行われました。それにより、前面投影面積は 1.33㎡と、ポルシェ904の 1.32㎡とほぼ同一となりました。また空気抵抗係数Cd値は 0.30をやや上まわる、優れた数字を示しています。
トヨタスポーツ800は、量産車パブリカのコンポーネンツ(構成部品)を多用して安価につくられていますが、エンジンにもこの手法が用いられました。2U型はパブリカの空冷水平対向 2気筒OHV型(U型)に手を加えたものでした。ボアは 5mm延長してありますが、ストロークは 73mmと同じで、排気量は 697ccから 790ccへとアップされています。気化器もベンチュリー径を増大し、気筒当り1個ずつ取りつけてありました。またクランクシャフトまわりも強化され、圧縮比は 8から 9に高められています。4速ギアボックスを介し 0〜400m加速は 18.4秒、最高速は 155km/hを実現。これは当時の代表的なライト・ウエイト・スポーツカー、オースチン・ヒーレー・スプライトのそれよりも 10km/h高い数値でした。
![画像: エンジンはベースが経済車パブリカ用なので 60km/h定地燃費は 31km/ℓ(!)というバイク並みの燃費だった。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783018/rc/2017/10/05/38a5be3c4026ca0b6b98a47af3d9f69202105aeb_xlarge.jpg)
エンジンはベースが経済車パブリカ用なので 60km/h定地燃費は 31km/ℓ(!)というバイク並みの燃費だった。
![画像: この時代のスポーティカーのマストアイテム、ナルディタイプのステアリングホイールを装備。その奥には 4つのメーターが並ぶ。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783018/rc/2017/10/05/9baf85cf771ceeffc76785a6fbc505fd0148dc47_xlarge.jpg)
この時代のスポーティカーのマストアイテム、ナルディタイプのステアリングホイールを装備。その奥には 4つのメーターが並ぶ。
上手に走らせれば燃費は市街地で 18km/L、郊外のクルージングでは 28km/Lと、まさに当時の若者の軽い財布にはとても優しいものでした。トヨタスポーツ800は、日本のモータースポーツのいわば青年時代を象徴する、そんな 1台だったのです。
トヨタスポーツ800 主要諸元
■ボディサイズ:全長3580×全幅1465×全高1175㎜
■ホイールベース:2000㎜
■車両重量:580kg
■トランスミッション:4速MT
■エンジン:2U-B・水平対向2気筒 OHV 790㏄
■最高出力:45ps/5400rpm
■最大トルク:6.8kgm/3800rpm
■サスペンション形式:前=ダブルウイッシュボーン/後=リーフ・リジッド
■車両価格:59万5000円(1965年当時)
なお、本記事のより詳しい内容は「国産名車 昭和を駆け抜けた日本のスポーツカー」という本で見ることが出来ます。
![画像: 「国産名車 昭和を駆け抜けた日本のスポーツカー」のトヨタスポーツ 800のページ。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783018/rc/2017/10/05/ba0f6ef795f3bfc18872cd67cc7f14bfafce9153_xlarge.jpg)
「国産名車 昭和を駆け抜けた日本のスポーツカー」のトヨタスポーツ 800のページ。