ボルボ V70からの乗り換えにちょうどいいかもしれないV90 T5 モメンタム
今月からモーターマガジンの長期テスト車として、V90クロスカントリー T5 AWD サマム(V90CC)を導入した。ボルボの90シリーズの中で、この「T5」と名付けられたモデルが搭載するエンジンは、2L直列4気筒直噴ターボである。ちなみに「T6」は、これにさらにスーパーチャージャーによる過給も加わり、そして「T8」には、そこにさらにモーターが加わるプラグインハイブリッドである。
この長期テスト車のV90CC T5はとても軽快に走り、気に入っている。と同時にT5のパワートレーンを積んでいても車重が100kg近く軽いV90 T5がもとても気になっていたのだ。そんな時に、“V90のT5”の試乗車が導入されたとの一報を受け、さっそくテストドライブに借り出すことにしたのだ。
V90CCのT5とV90のT5。同じエンジンと8速ATを積んでいるので最高出力、最大トルクは変わらないが、この2車の大きな違いは駆動方式である。前者は車名にAWDとあるように、4WDシステムを搭載し、後者はFFである。それが車重の違いにもなっている。
試乗車となるV90 T5 モメンタムは、もっともベーシックなV90シリーズである。唯一のFFモデルということもあり価格はかなりリーズナブルな664万円。V90/V90CC/XC90といったボルボのフラッグシップの中で一番安いカタログモデルというわけだ。ちなみに同じFFのS90 T5 モメンタムはもっと安く644万円だが、限定車なので予定販売台数が終了したらもう購入することができないのである。
さて、V90の話に戻ろう。このT5モデルは前述したようにT6とエンジンが違うが、もうひとつ大きな違いがある。それがホイール&タイヤサイズである。T6は255/35R20となり、ホイールも8.5J×20インチである。しかしT5のそれは245/45R18、8.0J×18インチである。実はこの違いは大きく、最小回転半径もT5の5.7mに対し、T6は5.9mとなる。小回り性能を重視するならやはりT5に分がある。
乗り心地にも大きな違いがあった。T5は走り出した瞬間からとても快適なのだ。T6のスポーティさとは違い、コンフォート志向が強いと言ってもいい。物足りない人は、“ダイナミック”モードも用意されているので、スポーティに走りたいときはそれを選択すればいいだけだ。幅広いユーザーに受け入れられるのはやはりこのT5だろう。
この快適なT5に乗っていたら、少し前のボルボ車の乗り味を思い出した。V70である。あのなんとも言えない肩の力の抜けたような“ほんわか”とした雰囲気をこのV90 T5は持っている。現在、V70に乗っている人でなかなかあの世界観を持つクルマが現れないと思っていたら、ぜひV90のT5を試して欲しい。それらに共通する“ボルボらしさ”を感じるはずである。
一番ベーシックなモデルだからといっても、そこはボルボらしく安全・運転支援機能は充実している。
T5グレードにメーカーオプションとして用意されるのは、チルトアップ機構付電動パノラマガラスサンルーフ(20万6000円)、メタリックペイント(8万3000円)、クリスタルホワイトパールペイント(10万3000円)、Bowers&Wilkinsプレミアムサウンドオーディオシステム(45万円)、電子制御式リアサスペンション/ドライビングモード選択式FOUR-Cアクティブパフォーマンスシャシー(20万円)などだ。
つまり、自動ブレーキもアダプティブクルーズコントロールも、360度カメラも縦列・並列駐車を支援するパークアシストパイロットも、車線維持機能を持つパイロットアシストも、タッチパネル式大型ディプレイも全部装備されている。
個人的にちょっと残念なのは、V90CC T5 サマムにはあるシートマッサージ機能とシートベンチレーション機能がT5 モメンタムにはオプションでも用意されないことだけだ。ただ、そうしたことを除けば、これ1台で大満足できるクルマだろう。
文:千葉知充(モーターマガジン)/写真:永元秀和
V90 T5 モメンタム主要諸元
●サイズ=4935×1880×1475mm ●車両重量=1740kg ●エンジン=直4DOHCターボ 1968cc ●最高出力=187kW(254ps)/5500rpm ●最大トルク=350Nm(35.7kgm)/1500-4800rpm ●トランスミッション=8速AT ●駆動方式=FF ●JC08モード燃費=14.4km/L ●車両価格=664万円