シビックのフルモデルチェンジに合わせて、カタログモデルとして発売を開始したシビックタイプR。今回はその生まれ故郷とも言える鷹栖テストコースでいち早く試乗する機会に恵まれた。ニュルFF最速の走りをチェックする。

荒れた路面でも接地性が高くて高速旋回が可能!

画像1: 荒れた路面でも接地性が高くて高速旋回が可能!

シビックタイプRが復活した2年前、初めての2Lターボエンジンと、ニュルブルクリンク北コースでのFF最速のタイトルを引っ提げてのデビューには度肝を抜かれた。

最近の若者のクルマ離れには困っているというメーカーが多い中、「そうそう、こういうクルマが出てきてくれれば少しはクルマ好きも増えるはず」と熱く語った記憶がある。もっとも400万円を超えるプライスと750台限定と聞き、最後はトーンダウンせざるを得なかったものの、きっかけづくりとしては大いに称賛できた。

そして今回、シビックの日本への再投入と同時にタイプRもフルモデルチェンジを行ってきた。価格は450万円と若い人にはちょっと手が届きづらいものの、量産モデルとなり納車期間さえ我慢すれば誰にでも手に入れられる。先代モデル同様にイギリスの工場で生産し、日本に輸入され、ボディは5ドアHBがベース。寄居工場で生産される4ドアセダンベースのタイプRは存在しない。

画像: シビックシリーズは3タイプを設定。左からセダン、タイプR、ハッチバック。

シビックシリーズは3タイプを設定。左からセダン、タイプR、ハッチバック。

本誌7月号でベースモデルとなったシビックの走りが、従来のホンダ車にはないしなやかさと安定感に驚かされた、と書いた。タイプRはこの高い基本性能をベースにさらに進化させてきた。

久しぶりに走ったホンダの北海道・鷹栖テストコースはニュルを模して作ったというハードなコースのうえ、うねりも大きく並のスポーツモデルでは走行ラインの制限が多い。

画像2: 荒れた路面でも接地性が高くて高速旋回が可能!

そこをいきなり新型タイプRは全開で飛び込ませてくれた。ホンダのトップドライバーが先導する形での試乗となったが、そのラインはうねりやブラインドコーナーなどもお構いなしのレコードラインをとり、速度レンジも3、4速を多用するフルコース。そう、ホンダの本気度がよくわかる。

もちろん、だからと言って安心していられるわけじゃない。上下左右から入力されながらのコーナリングは、前走車が飛び込んで行けても一瞬の迷いでGが抜けそうになったり、進路が乱れそうな感覚に襲われる。

画像3: 荒れた路面でも接地性が高くて高速旋回が可能!

しかし、そんな不安をすぐに払拭してくれるのが、接地性の高いフットワークだ。フルボトムに近い状態でもフロントタイヤは進路をしっかりと見定め、躊躇した右足の反応をあざ笑うかのように高速旋回中もロールは一定。接地性の高い足元がしっかりと路面をつかんで姿勢を保ってくれている。なるほど、ニュルで鍛えてきただけのことはある。

画像4: 荒れた路面でも接地性が高くて高速旋回が可能!

10psアップのエンジンは吹け上がりの軽さも向上

安定感の高さに加えて、圧倒的な駆動力にも驚かされる。320psへと10ps引き上げられたパワーを、フロント2輪だけで伝達しているにも関わらず、旋回中の速度維持にまったくと言えるほど煩わされない。リアが安定していることで、まるで4輪が均一に駆動力を受け持っているかのような安定感で、姿勢はあくまでもドライバー中心。ウエット路面にも関わらずフロントが左右に乱れることが少なく、ボディは旋回方向に突き進む。

うねり路面での旋回ではさすがにドライバーの腰と首へのインパクトが強くて、フルボトムするほどの入力がある。それでもステアリングが少々左右に取られるだけでラインをピタリとトレース。いかに強靭なボディを持っているかがよくわかる。

画像: 10psアップのエンジンは吹け上がりの軽さも向上

先代モデルではリアが先にズシリと来てボディをシェイクさせたが、今回はそれが大きく緩和されている。リアの安定感の高さに加えて、懐深く受け止めるストローク感と強さは従来とは大きく異なっている。FFとは思えない駆動力の高さと安定感は、強靭なボディに加えて、新設計された独立式のサスの効果が絶大といってもいいだろう。

エンジンも4000rpmを中心としてシュンシュン反応する感じは従来よりも軽くて、パワーの密度も感じられる。ファイナルレシオが3.842から4.111へと低速寄りに変更されたことで、高いギアでもパワーバンドに乗せやすく、中速コーナーでは常に鋭いレスポンスが得られて、加速体勢を保っていられる。

画像: サーキットを攻略するため鍛え上げられた2.0ℓ VTECターボ。モノスクロールターボや排気側VTEC+大流量エキゾーストシステムの採用で320psを発生する。各部の徹底した軽量化で2Lターボ世界最軽量も実現。

サーキットを攻略するため鍛え上げられた2.0ℓ VTECターボ。モノスクロールターボや排気側VTEC+大流量エキゾーストシステムの採用で320psを発生する。各部の徹底した軽量化で2Lターボ世界最軽量も実現。

剛性感の高いボディをベースに新設計のリアサスやさらなるシャシの進化によって高い接地性を生み、それが安定した駆動力を生み出し、ニュルでのFF最速タイムにつながったことはよく理解できた。その優れた安定感がパワーを無駄なく伝達して、速さに加えてドライバーの操る楽しさを与えてくれたといっていい。FF最速は理想的な前輪駆動車に進化した結果なのだ。

コンフォートモードなら街乗りでも快適に乗れる

チャレンジングなコースに耐えうる電子制御デバイスの効果も大きい。従来型同様、走行シーンに合わせてアダプティブダンパーやパワステフィール、姿勢抑制機能等の設定変更がスイッチひとつでできる。Rモードを選べばハードな減衰力と駆動力を積極的に生かす仕様でドライバーをサポートし、今回追加されたコンフォートモードでは減衰力を穏やかにして乗り心地の良さを演出。街乗りでのカドのない乗り味を生み出し、従来あった圧迫感からは解放された。

画像: 走行シーンに合わせてドライブモードが選べる。基本がSPORTでサーキットも攻められる+Rと街中で使うCOMFORTの3種を設定。

走行シーンに合わせてドライブモードが選べる。基本がSPORTでサーキットも攻められる+Rと街中で使うCOMFORTの3種を設定。

もっとも攻め込んでいるときに安心できたRモードでのダンピング感は一般のワインディングロードではやや圧迫感は残り、いかにしっかり感を増しているかがよくわかる。コンフォートを採用できたことで、走り側に大きく振ることもできたことなど、幅の広い乗り味を楽しめる。

これなら街乗りでは硬めながらもカドのないフラットな乗り味で快適に過ごすことができるし、いざ飛ばそうとしたときにはサーキットもタイム狙いで走ることもでき、幅広いユーザーに走る楽しさを与えてくれるに違いない。

画像: 専用の20×8.5Jホイールにコンチネンタルのスポーツコンタクト6(245/30ZR20)を履く。前ブレーキはブレンボ製対向4ポット。

専用の20×8.5Jホイールにコンチネンタルのスポーツコンタクト6(245/30ZR20)を履く。前ブレーキはブレンボ製対向4ポット。

価格的にも走りが楽しめる輸入車のレベルと比べても遜色がないし、むしろ性能だけで言えばお買い得感も十分にある。外観が派手なばかりに、本質の良さに接しにくい人も多いと思うので、ここはぜひ、おとなしいエアロのタイプRも用意してほしい。少しでも価格が抑えられれば若い人も手が届きやすくなるし、欧州車志向の人にも受け入れやすくなる。

タイムよりも実用性を求める人だってたくさんいるはず。それでもきっと身近なサーキットでは抜群の速さを見せることは確か。この優れたパフォーマンスを多くの人に味わってもらい、パワードバイホンダの実力の高さを知ってもらい、クルマの魅力を再認識してほしいと思う。

画像: 乗り込んだ瞬間に心を昂らせる視認・操作系。ドライブモードにより回転計周辺の色味が変わる。DカットタイプのステアリングもR専用だ。

乗り込んだ瞬間に心を昂らせる視認・操作系。ドライブモードにより回転計周辺の色味が変わる。DカットタイプのステアリングもR専用だ。

画像: 専用設計の前シートは内臓ワイヤーで大きな面を作り高速旋回時の前後左右Gからドライバーをサポート。

専用設計の前シートは内臓ワイヤーで大きな面を作り高速旋回時の前後左右Gからドライバーをサポート。

画像: コンフォートモードなら街乗りでも快適に乗れる

■文:瀬在仁志 ■写真:井上雅行/玉井 充

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