10月25日の日本発表以来、その流麗なフォルムから大きな注目を集めている5ドアファストバックデザインの5シーターモデル、フォルクスワーゲンのアルテオン。日本ラインナップにおいてはフラッグシップに位置する。そのスポーティさを強調したRラインのハンドルを、発表前にドイツ本国で握ることができた。

文:島下泰久/写真:フォルクスワーゲン グループ ジャパン

画像: 試乗はアウトバーンと一般道がメイン。フォルクスワーゲンのドレスデン工場での取材を終え、フランクフルトを目指しアウトバーン4号線を西に向かって走る。

試乗はアウトバーンと一般道がメイン。フォルクスワーゲンのドレスデン工場での取材を終え、フランクフルトを目指しアウトバーン4号線を西に向かって走る。

流麗なフォルムを持つアルテオンだが、使い勝手をまったく犠牲にしていない

フェートンの後継モデルであり中国市場の専用車となっているフィデオンを除けば、ラインナップで最高峰モデルとなるフォルクスワーゲンの新型車がアルテオンだ。日本にも近日導入予定のこのニューカマーで、ドイツ国内1000km以上の長距離テストを敢行したので、その印象をお伝えしたい。

最大のハイライトは、やはりそのスタイリングだろう。全長4862mmの5ドアファストバックボディは、2837mmものホイールベースを確保したことで前後オーバーハングが短く切り詰められており、それが1450mmと低い全高、最大20インチの大径タイヤ&ホイールとも相まって美しいプロポーションを描き出している。エモーショナルに過ぎないクリーンなたたずまいは、良い意味でフォルクスワーゲンらしい。

画像: フォルクスワーゲン アルテオンは東京モーターショー2017にも出展される。

フォルクスワーゲン アルテオンは東京モーターショー2017にも出展される。

とは言え、決して没個性というわけではないのはフロントマスクを見れば明らかだ。フェンダーまで回り込んだボンネット、そのオープニングラインがそのまま車体後方まで貫き、鋭い眼光のヘッドライトユニットとの連続感あるクロームのバーを持つラジエーターグリルなどが作り出すその顔は個性も、迫力もある。品良く、けれど飽きさせないデザインに好印象を抱いた。

インテリアの意匠は基本的にパサートに倣うが、空調ダクトをダッシュボードの端から端まで通したデザインは、むしろこちらでこそ外装との統一感が色濃い。フルデジタルインストルメントパネルのアクティブインフォディスプレイ、全面タッチパネル化によりハードスイッチを廃したインフォテインメントシステムなど、最近のフォルクスワーゲンの定番ハイテク装備はもちろん余さず採用されている。

画像: 5ドアファストバックのリアスタイルをもつアルテオン。

5ドアファストバックのリアスタイルをもつアルテオン。

全高は低くなっているが、室内空間には依然として大きな余裕がある。前後席とも頭上、肩まわりのスペースは広大だし、後席の足下スペースもありあまるほどだ。後席は3人掛けだが、シート形状の工夫により、左右席では不満のないホールド感を得ることができる。

しかも試乗したRラインには、3ゾーンフルオートエアコン、オプションのナパレザーインテリアなども備わっていたから、最高峰モデルとしての資質も申し分なしと言っていい。ラゲッジルーム容量は通常時ですら563L、最大で1557Lにも達するのだ。少なくともそのスタイリングは、使い勝手をまったく犠牲にしていないのである。

アルテオンは快適性も使い勝手も優秀。だからこそ、どうアピールするかが重要

試乗車のパワートレーンは最上級仕様で、最高出力280psを発生する2.0TSIユニットと組み合わされるトランスミッションは7速DCT、そしてフルタイム4WDの4モーションを備えていた。

画像: アルテオンはドイツ本国でガソリンとディーゼル計6種類のエンジンラインナップする。この試乗車は最強版の280ps仕様の2.0TSI。ボンネットの開き方も要注目だ。

アルテオンはドイツ本国でガソリンとディーゼル計6種類のエンジンラインナップする。この試乗車は最強版の280ps仕様の2.0TSI。ボンネットの開き方も要注目だ。

走らせて、まず嬉しくさせられたのがエンジンの爽快感。ゴルフR用がベースというこのユニットは、いつものTSIらしく実用域で非常に扱いやすい。加えて、高回転域に向けてリニアなパワー感を伴いながら勢いよく吹け上がる、胸のすくフィーリングをも実現しているのだ。2.0TSIとだけ聞くと新鮮味に乏しく感じられるのは事実だが、このエンジンには感情が揺さぶられた。

シャシは直進性に優れ、減衰力可変ダンパーとDCCのおかげで乗り心地も上質。アウトバーンと市街地主体の試乗だったためコーナリングについて深くは語れないが、長距離ツーリングでも快適で、かつ飽きの来ない上々の走りっぷりが実現されていた。

強いて言えば、オプション装着の245/35R20サイズのタイヤ&20インチホイールは、快適性の面でも走りの落ち着き感の面でも19インチあたりがちょうど良さそうと感じたが、気になったのはそれぐらいだ。

もちろん先進安全装備も充実している。カメラ映像とナビゲーションシステムのデータを活用したACC(アダプティブクルーズコントロール)やコーナリングライト、他車のふらつきなどの挙動にも対応するレーンアシスト等々、新しい機能も多数搭載されているのだ。ただし、日本仕様の詳細は現時点では不明だ。

スタイリングには魅力があるし、走りっぷりも望外に良い。快適性も使い勝手も申し分なく、ブランドイメージを牽引するモデルとしての資質には十分満足できるアルテオン。

しかしながら、クルマが良いというだけではユーザーへの訴求力は不十分だ、というのはこれまでもずっと問われてきたことだ。フォルクスワーゲングループジャパンはそうした前例に鑑み、どんなユーザーに、何をもってアルテオンをアピールしていくのか。この出来なら、成否はそこにかかっていそうである。

アルテオン Rライン 2.0TSI 4モーションの主要諸元(数値はEU準拠)

全長×全幅×全高=4862×1871×1450mm ホイールベース=2837mm 車両重量=1716kg エンジン=直4DOHCターボ 1984cc 最高出力=206kW(280ps)/5100-6500rpm 最大トルク=350Nm/1700-5600rpm トランスミッション=7速DCT 駆動方式=4WD 燃費=13.7km/L タイヤサイズ=245/45R18

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