世界初、3Dプリンターでブレーキキャリパーを形成
約1000psを発生するW16気筒エンジンを搭載して日本で約2億円というプライスタグをつけたブガッティ ヴェイロン。その次世代モデルとして2016年2月にジュネーブ国際モーターショーで世界初公開されたシロンは、1500ps/1600Nmを叩き出す8L W型16気筒クワッドターボエンジンと7速DCT、4WDを組み合わせ、0→100km/h加速は2.4秒というモンスターマシンである。
そんなシロンには現在、鍛造アルミニウム製のブレーキキャリパー(フロント8ピストン・リア6ピストン)が採用されている。最高速380km/hという超高速からのフルブレーキングに耐えられる性能と強度を誇る。
そして今回、その性能をさらに高めるチタン製のブレーキキャリパーを開発したというのだ。ブレーキキャリパーにチタンを採用するのは量産車メーカーでは世界初だという。
使われているTi6AI4Vと呼ばれるチタン合金は、宇宙産業のロケットエンジンや航空機などに使用されているもので強度が高い。さらに、構造が非常に複雑であることから、チタンブロックから鍛造することは事実上不可能。そこでドイツの研究機関Laser Zentrum Nordと共同で、高性能な400Wのレーザー溶融装置4台による3Dプリンタを駆使しての形成となるという。
2213工程・45時間かけて削り出されたブレーキキャリパーは、700℃の窯で熱処理、さらに100℃の窯で安定させるという。これにより肉厚わずか1〜4mmという美しい形状となる。
完成したブレーキキャリパーの大きさは長さ410mm、幅210mm、高さ136mm。ピストンは従来と同じくフロント8・リア6で、重さはわずか2.9kg(フロント)。従来のアルミニウム製が重量4.9kgなので約40%軽量化したことになる。
バネ下重量1kgの軽量化はバネ上を10kg軽量化(15kgとも)したことに相当する効果があるという話は聞いたことがあるだろう。ブレーキだってもちろんバネ下(サスペンションスプリングより下)の構造物だ。そのため、フロントだけでバネ下4kgの軽量化は、走行性能や乗り心地を大きく変えることだろう。しかも、車両重量が大きいほど効果が如実に現れるというからシロンの進化の度合いは計り知れない。
2018年上半期から採用されていくというから楽しみにしている人もいる、かもしれない。