スピン、スピン、スピンの連続。たまーに成功する振り返しが気持ちいい!!
1月下旬、大寒波に見舞われた日本列島。これによる積雪、路面凍結などが交通機関に大きな混乱を巻き起こしたことは記憶に新しい。とくに雪上・氷上運転に慣れていない非降雪地域での立ち往生やスリップなどが散見された。あんな恐ろしい光景を見たら、いくら高性能なスタッドレスタイヤを履いていても外出する気力を失くしてしまう。
と、そんなマイナスイメージばかりが先行してしまいそうな雪上・氷上走行だが、もしそこでクルマをコントロールできたとしたらどれだけ楽しいことだろう。タイヤを空転させながらコーナーを曲がることができたらどんなにカッコいいことか。非降雪地域育ちのボクにとって、まるで夢のようなドラテクを体得するべく、果敢(無謀?)にもFRのマツダ ロードスターで氷の張った女神湖(長野県)に向かった。
首都圏で積雪を観測する直前の1月20日、ここで、ある氷上ドライビングスクールが開催されていた。数々のラリーを制した経験を持つ日下部保雄氏が代表を務めるプロスペック主催の「iceGUARD 6&PROSPEC ウインタードライビングパーク」だ。一般道では体験できない状況で走ることで、運転のワクワク・ドキドキ感を味わってほしいと、およそ20年前から女神湖を会場にはじめられたスクールだ。
湖上には低速・中速コーナーを組み合わせた複合コース、スラロームや定常円、8の字コースが設置され、50分×4枠合計3時間以上も体験することができる。
インストラクターは日下部氏を含めて8名、片岡良宏氏や松井猛敏氏などいずれもラリーや耐久レースなどで活躍した猛者ばかり。女神湖に特設された3つのコースにインストラクターが配置されて、依頼すればライン取りからハンドル&ペダルワークまでほぼマンツーマンでレッスンしてくれる。
1月の女神湖といえば例年雪に覆われ、多くの自動車メーカーが雪上・氷上試乗会場に使用することでも知られている。しかし当日の最高気温は6℃。つまり、氷の表面に水が浮いてかなり滑りやすい状況ができ上がっているのだ。
実際に走りはじめると、最新スタッドレスタイヤを履いているにもかかわらず駆動輪はほとんどグリップしてくれない。ゆっくりと加速はできるものの、ラフな操作をしようものならあっという間に制御不能な状態に。前輪がグリップを失ってアンダーステアとなり、コーナーを曲がりきれない人も続出していた。
そこで、日下部氏にFR車で氷上をキレイに曲がるコツを聞くと、「まず直線で、エンジンブレーキを使って減速しながらグリップする範囲で小さくハンドルを切る。するとコーナー外側に向かって遠心力が働く。そこでゆっくりアクセルペダルを踏んで駆動力をかけると、後輪がグリップを失ってリアが滑り始める。この状態を維持できれば曲がりたい方向へ向いてくれる」と教えてくれた。
ここでのポイントは“前輪のグリップ”と“素早いハンドル操作”だ。超低μ路において、操舵輪のグリップしている時間を少しでも稼ぐことが重要なのだという。この原理を応用すればフェイント(振り返し)もできるようになるというが、頭で理解してもマスターできないのが現実。FFや4WDモデルがスイスイ走るのを横目に、ロードスターに乗ったボクは何度もスピンしながら約3時間みっちり走りこんだ。
その成果か、プログラムの最後に用意されたタイムアタックで後輪駆動クラスのトップタイムをマークできた。ただこれは車両重量約1トンというロードスターだからこそできたのかもしれない。日下部氏いわく「氷上においても車両重量の軽い方がよりグリップする」からだ。
そのタイムよりも、たま〜にキマるスラロームでのフェイントや定常円旋回の気持ち良さは格別だ。もっと精進せねばと心に誓った次第である。