ちょーっとだけ前置きにお付き合いください。インドの自動車市場を紹介します
インドの自動車市場は大きく成長している。2017年の新車販売台数は400万の大台に迫る約397万台を記録し、これは前年比の約10%増だというからその勢いは凄まじい。同年に日本市場の新車販売台数は約523万台なので、もしこのままインド市場が成長し続ければ、単純計算で2020年に追い越されてしまう計算だ。いや、実際にはもっと早まるかもしれない。
そんな巨大成長市場で半数近く(2017年で45%以上)のシェアを握っているのがスズキだ。正確には、スズキが株式の過半数以上を保有するインドの子会社「マルチ・スズキ社」で、販売を一手に担う重要拠点のひとつ。販売だけでなく生産部門も担い、現在はバレーノ以外の全車種を輩出している。
ラインアップは日本でも馴染みのあるスイフトやバレーノ、ワゴンRなどの他に、スイフトをセダンにしたようなDZIREや7人乗りのERTIGAなど16車種と幅広いモデルを取り揃えている。
その中に、セレリオと呼ばれるモデルがある。全長3695×全幅1600×全高1560mmと、ヴィッツやマーチなどよりもひと回り小さいコンパクトカーだ。本音を言えば古臭ささえ感じるシンプルなエクステリアデザインだが、それでもインド市場ではかなり売れているという。販売価格を日本円に換算すると、約68万4000円〜約87万8000円(2018年3月8日現在)と低めの設定。発売から約1年半で販売台数10万台を突破するほど人気で、大衆車として親しまれているのかもしれない。
前置きが長くなってしまったがここからが本題
じゃあなぜ、このクルマを取り上げたのかと疑問に思えてくるだろう。ボクの琴線に触れたのは搭載されていた「E08A」というディーゼルターボエンジンだ。
このエンジンがおもしろい。調べてみると、四輪自動車に採用されている最小ディーゼルと思われる、0.8L 2気筒なのだ。排気量の小さいディーゼルエンジン開発は困難だといわれているなかで、スズキはインド市場からの要求に応える形で開発、2015年に投入した。
低回転からの高トルクや低燃費性能など実現し、フライホイールを最適化することで振動を、吸音材で燃焼音を軽減しているという。ちなみに燃費は27.62km/L(インド準拠)を達成しているという。スペックは下記のとおり。
E08A型ディーゼルエンジン
■形式:2気筒 DOHC 8バルブ インタークーラー付きターボ ■排気量:793cc ■ボア×ストローク:77.0×85.1mm ■圧縮比:15.1 ■最高出力:35kw(47ps)/3500rpm ■最大トルク:125Nm/2000rpm
実はこのエンジン、セレリオへの搭載をやめているということがこの記事を書いている途中で判明した(!?)。乗用車に搭載するには2気筒ディーゼルの振動や音が大きかったのだろうか、価格が高めの設定だったという話もあるが真相まではわからない。
「それじゃあ現行の世界最小ディーゼルではないじゃないか」と思った方、ご安心を。なんと今はスーパーキャリイというコンパクトなトラックに採用されているというのだ。日本で乗ることの叶わない世界最小ディーゼルエンジン搭載モデルは今もインドで販売され、どこかで元気いっぱいに走り続けていることだろう。
余談だが
こんなディーゼルエンジンを見つけた。なんと0.1cc単気筒だ。昆虫の羽音のような排気音が可愛らしい。意外と大食漢なところもまたイイ。