ゴムのようにしなやかに、プラスチックのように強く
ブリヂストンは、2016年12月に「新規ポリイソプレンゴムの合成に成功」と発表した。これは、独自のGd(ガドリニウム)触媒を用いることで、天然ゴムに匹敵する「強い」合成ゴム=次世代ゴムを作るという技術だった。
今回は、そのGd触媒技術をさらに進化させた成果という。
ブタジエンやイソプレンなど合成ゴム成分と、エチレンなどの樹脂成分を、Gd触媒を用いて分子レベルで結びつける(共重合)ことに成功。これにより、一般的な合成ゴムよりも「強い」天然ゴムに比べて、耐亀裂性は5倍以上、耐摩耗性は2.5倍以上、引っ張り強度は1.5倍以上という、しなやかさと強靱さを兼ね備えるHSRを開発することに成功した。
ちなみにHSRを日本語にすると「共役ジエン/オレフィン共重合体」というらしい。
原材料であるゴム成分、樹脂成分の割合を変えることで、さまざまな特性を持つHSRになるという。発表会では、フレーク状のものからシート状、エイヒレのような手ざわりのもの・・・と、合計4種類のHSRが展示してあった。簡単に言えば、よりプラスチックに近いゴム、またはよりゴムに近いプラスチック・・・というものを自在に作り出す技術を、ブリヂストンはすでに確立している・・・ということだ。
世界初のポリマー、HSRでタイヤはどう変わる?
今回開発に成功したHSRは、さらに加硫することにより、天然ゴムに比べて耐摩耗性は173%アップ、引っ張り強度は55%アップするという試験データがある。このため、タイヤの次世代材料として有望視されている。
強度が強いということは、たとえばサイドウオールを薄くしても、今よりも強いタイヤが作れる可能性もある。この素材を用いることで、全体として軽量な「ウルトラライトタイヤ」が開発できる可能性もあるし、より少ない材料使用量でタイヤに求められる性能を達成できる可能性もある。またカーボンを入れなくても強度を出せることから、たとえば従来のゴム部分が透明になった自動車用タイヤが誕生する可能性だってゼロではない。
今回開発された世界初のポリマー、HSRだが、その素材の特性を考えるといろいろな分野への展開が考えられる。
タイヤだけではなくそれ以外の製品へ適用についても積極的に検討を進めるため、今後オープンイノベーションで対応していくという。