世界に誇るべき、その伝統
6月末に15代目がデビューするクラウンだが初代は1955年に登場しており、その歴史は63年に及ぶ。これだけ長い期間にわたって、販売され続けているクルマは世界を見ても他に例がない。
唯一、クラウンに匹敵するモデルがあるとすれば“MINI”だが、それにしても誕生は1959年であり、しかも途中で生産メーカーが変わり中身も別物になっている。クラウンの15代、63年という歴史がいかに凄いかを改めて感じさせる。
こうなるとクラウンの開発者には歴史を引き継いでいくための大きなプレッシャーがかかることは想像に難くないだろう。しかも、このところ売れ行きは右肩下がりであるという現実もある。販売台数は2014年は4万9166台、2015年は4万4326代、2016年は3万9813台、2017年は2万9085台だ。
いまや隔世の感があるが、バブル景気真っ只中の1990年、8代目となる130系クラウンは年間24万台も売れていた。もちろん28年前とは経済状況などが大きく変わっているので致し方ない。しかしここ数年だけを見てもクラウンを取り巻く状況はよろしくない。
そうした中、新型クラウンの開発者は“世界基準”、“世界で戦える”ということを強調する。国内専用モデルであるにも関わらず、殊更に“世界”をアピールするのだ。ニュルブルクリンクでテストを行ったこともそのアピールの一環だろう。
実はそこに15代目となる新型クラウンの本質がある。結果としては15代目のクラウンも国内専用モデルだが、その中身は世界で通用するものであり、それと国内専用モデルであることのメリットを活かした心配りの行き届いた作り(ゴルフバッグを4つ搭載できるトランクルームなど)を高いレベルで融合させたということだ。
そして今後、クラウンの長い歴史をバトンタッチして行くには、本当の意味でのグローバルカーになる必要があるのではないかと思われる。現在の国内だけの販売状況を見ると、日本だけに留まっていることには無理があるだろう。
15代目となる新型クラウンの秘密とは「この先、グローバルカーになるための布石が打たれているのでは・・・」ということだ。そして、それだけの実力が十分にあることも、今回のプロトタイプ試乗会で感じ取ることができた。
クラウンはこの先、16代目、17代目・・・と歴史を刻んでいくべき使命を持つクルマだ。15代目の新型クラウンはそうした中でしっかりと位置づけられたモデルなのである。