この7月1日に発売が開始された、POTENZA S007A。このタイヤはPOTENZA S001の後継モデルで、プレミアムスポーツタイヤの新フラッグシップ商品となる。
POTENZAって?
まずはPOTENZA(ポテンザ)ブランドの紹介から。
POTENZAは今から39年前、1979年に誕生したブランドで、「乗用車用初の本格的スポーツラジアルタイヤ」として「POTENZA RE47」がデビュー。以来、F1をはじめとするモータースポーツで培われた技術を市販車にフィードバック。タイヤに必要な7つの性能(ドライ性能/ウエット性能/直進安定性/ライフ/乗り心地/静粛性/低燃費)を維持しながら、スポーツ性を極めたブランドとして世界中で認知されている。
今ではPOTENZAブランドの中でも、リアルスポーツタイヤの「POTENZA RE-71R」、カジュアルスポーツタイヤの「POTENZA Adrenalin RE003」があり、今回登場したプレミアムスポーツタイヤの「POTENZA S007A」と合わせて展開している。また一般道も走ることができるサーキット用リアルスポーツタイヤとして、POTENZA RE-05D/RE-07D/RE-12Dなどもある。
POTENZA S007Aって?
POTENZA ブランドにおけるプレミアムスポーツタイヤの歴史は、1996年に発売されたPOTENZA S-02にさかのぼる。その後2004年に登場したPOTENZA RE050、2010年のPOTENZA S001と進化を続け、フラッグシップタイヤとして市販用だけでなく、フェラーリやポルシェなど、数あるプレミアムメーカーの純正装着用タイヤとしても採用されてきた。
新しく登場したPOTENZA S007Aは、そんな従来のPOTENZA S001をさらに進化させたプレミアムスポーツタイヤだ。
発売サイズはPOTENZA S001から7サイズ増加の全80サイズ。これは車両の高性能化にともない、18インチ以上のタイヤ装着車両が増加したという市場環境の変化に対応したものだ。全80サイズすべてに希望小売価格を設定している。
トレッドパターンは流行りのストレートリブ基調
トレッドパターンは4本のストレートグルーブを中心とした、いま流行りの「強い」パターンだ。
中心のリブはブロックの溝をなくすことで(スムースリブ)、パターン剛性を16%向上。さらにセンター域のブロック幅を広げ(ワイドリブ)、パターン剛性を14%向上。またブロック端の角を丸め、台形状にすることで(マルチラウンドブロック)、リブ中央部の接地性を高めグリップを向上。高剛性パターンにすることで、初期応答性やコーナリング性を向上しているという。
またコーナリング中でもサイド部を強くしケース剛性を上げることで、サイド部の変形を抑えて接地性向上を図っている。
ワインディング路:ハンドリングが正確で気持ちが良い
実際にルノー・メガーヌスポーツツアラーGTに履いてみた。タイヤサイズは標準サイズの225/40R18 92Y XL。タイヤ空気圧も規定値どおり、前240kPa/後210kPaでセットした。
タイヤを履き替えて最初に感じたのは、その正確なハンドリング性だ。コーナーに入っていくとき、ハンドルを切ると遅れなくダイレクトにクルマが反応する。そこから先は、コーナーの曲率に合わせてハンドル舵角を決めれば、スーッとコーナーをクリアしていく。
強力なグリップで強引に曲がる・・・というイメージではない。外乱に惑わされることなく、ハンドルを切ったら切ったぶん曲がっていく。タイヤのケース剛性が強く、かなり高いコーナリング速度でもヨレた感じはない。シュアなハンドリングだからこそ運転が楽しくなるし、疲れにくい。これこそがブリヂストンが目指した「プレミアム」なスポーツ感覚だろう。
じつは従来のPOTENZA S001も、じつはクセがなく素直な特性で、個人的には好きな味のタイヤだった。じつは先日開催された試走会で、従来のS001と、この新S007Aを乗り比べる機会があったのだが、そうやって同条件(同じコース/同じ車種)で横比較してしまうと、とくにコーナリング時の接地感が、新S007Aの方が上回っているのがわかる。
試走会のクローズドコース、小さい曲率のヘアピンコーナーに高めの速度で進入し、ハンドルをこじるように追い込んでいっても、なかなかスキール音がしないのには驚いた。また、これだけ強いグリップなのに、限界を超えてからの最後の滑り出しが穏やかで、コントロールも容易だった。
ヨーロッパ系のプレミアムスポーツタイヤは、サイドをたわませ、タイヤ自体をサスペンションのようにすることで、コーナリング時の接地を安定させる考え方が多いのだが、このPOTENZA S007Aに見るブリヂストンの思想は異なる。サイド補強を行い、タイヤサイド部の横剛性を上げることでコーナリングのサイド変形を抑え、安定した接地感を生み出している。アプローチは異なるが、狙っているところは一緒だ。
首都高速走行:路面アタリは強いが、収束が早い
タイヤサイドが強くタイヤの横剛性が高い・・・と書くと、どうしたってネガティブな部分も想像してしまうだろう。具体的に言えば「乗り心地が硬いのでは?」ということだ。たしかに、こういうタイヤカテゴリーだとあまり重要視されないコンフォート性能だが、でもどんなプレミアムカーでも一般道や高速道を走るのは当たり前のことだから、プレミアムスポーツタイヤだからといって日常走行での性能がおろそかになってはいけない。
今回、首都高速道路でその走りを確かめてみた。路面の継ぎ目が連続して現れたり、そのギャップも大きかったりと、とくにスポーツ系のタイヤには厳しい場所だ。
じつはPOTENZA S007A、路面アタリそのものは、強めだ。それでも不快な感覚にならないのは、ギャップにトンッと当たってから先、振動が残らず一発で収束するからだろう。全体的には硬めな感覚は受けるが、スッキリとした味わいの印象なのだ。
これ、まっすぐ走っているときの接地形状は、従来のPOTENZA S001よりも、より円みのあるカタチになっているはずだ。だからこそ、アタリ自体が強くなっていながらも、カドの取れたスッキリ感となっている。
後編は、ウエット走行や高速道路/一般道など、より日常的なシーンを中心にインプレッションしよう。