テストドライバーに、ル・マン24時間レースの覇者を招聘するほどの本気度!
2018年6月1日デンマークの玩具メーカーであるLEGOは、ブガッティ シロンの1/8サイズLEGOブロックを発売した。外装からサスペンション、エンジンに至るまですべてLEGOのパーツで製作されたもので、そのパーツ数(約3600ピース)や精巧さなどからちょっとした話題になっていた。(https://web.motormagazine.co.jp/_ct/17173453)
それから約3カ月後の2018年8月30日、両社は驚くべき内容のプレスリリースを公開した。なんと、1万3000時間以上ものをかけて、実物大のブガッティ シロンをレゴブロックで開発・組み立てたというのだ。なぜこんな時間と費用のかかるものを創ろうと考えたのか、LEGOのレナ・ディクセン副社長によると「想像力の限界を広げるため、いくつもの“初挑戦”をしました」という。
ちなみに“初”を列記すると…
・自走可能な実物大車両の製作
・接着剤を使用しない実物大LEGOテクニックモデル
・LEGOテクニックのモーターを使用した大型モデル
・LEGOテクニックのブロックを使用した自走可能な大規模モデル
・透明なLEGOテクニックブロックの作成
・LEGO TECHNICブロックで耐荷重部品を作成
プロドライバーを招聘
さて、実際に製作されたLEGO版ブガッティ シロンを紹介していこう。遠くからだとボディに幾何学模様が装飾されたホンモノと見紛うくらい精密に組み立てられている。もちろんドアは開閉できるし、リアウイングは可動式で上部にせり上がってくる。もちろん外装だけでなく内装、シートやルームミラー、着脱式のハンドルもブロックでできている。
画像や動画を見ていて不思議なのはブレーキだ。タイヤやホイールはブガッティ純正のものを装着しているようだが、ブレーキはどう見てもブロックを組み立てたものである。これで制動できるとは到底思えないのだが・・・。実はホンモノのブレーキが隠れているのか、真相はわからない。
さすがにエンジンをブロックで製作することはできなかったようなので(笑)、駆動をモーターが担当する。これがまた笑いを誘う。LEGO テクニックはもともと「パワーファンクション」というモーターをラインアップしているのだが、もちろん玩具用のもので大きさと出力ともに“かなり”小さい。
そこで、パワープレーだ!なんと2304個ものモーターを集め、4032個のギアで駆動力をタイヤへと伝達するのだ。その最高出力はなんと! 5.3馬力・・・(チーン)。最大トルクこそ92Nm(理論値)を発生するものの、100万以上のピースで構成された約1500kgものボディを引っ張るには非常に、ひっじょーに心許ない。
こうしたリリースを読むとジョークにしか思えないのだが、実践している彼らはマジメも真面目、バカ真面目なのだ。というのも、完成したLEGO版実物大ブガッティ シロンをいざ走行テストしようという時、そのドライバーにLEGO社員ではなく、ル・マンやデイトナの24時間レースの覇者であるアンディ・ウォレス氏を招聘してしまったのだ!
ブガッティの公式テストドライバーであるから理解できないわけではないが、5.3馬力を得たLEGO版ブガッティ シロンの最高速はたったの20km/h。プロドライバーの腕前を必要とするとは思えないが、ヘルメットをかぶったアンディ・ウォレス氏は厳かにコクピットへとおさまり、デコボコした着脱式ハンドルを受け取り、装着。
LEGO版ブガッティシロンは(おそらく)ナンバーを取得できないので、走行テストの場にはクローズドコースが選ばれた。ドイツ・ヴォルフスブルク郊外にあるフォルクスワーゲングループのテストコース「Ehra Lessien」は、オリジナルのブガッティ シロンもここでテストしたのだという。
ちょっとかわいらしいモーター音とともに走り出したLEGO版ブガッティ シロンは、ルームミラーやドアミラーなどをプルプルと震わせながらゆっくりと、確実に“歩み”を進めていく。走行テストなのだから、ドライバーだって真剣そのものだ。そしてテスト成功とともに、動画の幕も閉じる。
ちなみに、ブガッティが発表したプレスリリースの最後は、このスペックで締められていた。
燃料消費量:1/100km:市街地モード35.2 /郊外モード15.2 /総合22.5 合計CO2排出量(516g/km)効率クラス:G
やはり、これはジョークだったのではないだろうか…。
ちなみにレゴブロックで製作された実物大の自動車には、こんなモデルが
スウェーデン イエーテボリにあるボルボミュージアムには、レゴで作られた初代XC90が展示されている。これもコラボによって誕生したのだという。ただし「実走はできない」と説明を受けた記憶がある。