メルセデスベンツとアウディが相次いで生産型EVを発表した。これら独プレミアムブランドの本格的なEVは米テスラの牙城を崩すことができるのだろうか。テスラはモデル3の生産がやっと軌道に乗ってきたようだが、財務状況は予断を許さず株価は急降下、ライバルを迎え撃つには万全といえる状況ではない。さてこの先、テスラと独プレミアムのEVはどんな戦いを繰り広げるのだろうか。

かなりホットな“ショータイム”

メルセデス・ベンツは9月4日、新型EV「EQC」を発表した。これはすでに発表していたメルセデス・ベンツのEVブランド「EQ」のラインナップのひとつであり、同社の最近のネーミング手法からして、“C”クラスに相当するものということだろう。

「EQC」は前後にモーターを持つ4WDで最高出力は408ps(300kW)、航続距離は450km以上になるという。生産は2019年から開始するが、発表会場となったノルウェーではすでに先行予約が始まっている。このあたりの手法はテスラに似ている。

次にアウディだが、ブランド初となるSUVのEV、「アウディ e-tron」を9月3日から生産開始と発表した。そして、9月17日には米サンフランシスコで発表会を開催するそうだ。

“e-tron”は従来、EVとPHVに付けられていたサブネームだが、本格的な量産型EVの第1弾にはそれが昇格して採用された格好だ。これには実はアウディ独自の4WDシステムを表す“クワトロ”の前例がある。このシステムを採用した当初のモデルは「アウディ クワトロ」と名付けられた。今後は“e-tron”のバリエーションが増えるに従って、これはまたサブネームになっていくのだろう。

「アウディ e-tron」の詳細は正式発表を待たなければならないが、いくつかある仕様の中でもっともパワフルなのはEQCと同じ最高出力408ps(300kW)となる。

さて、メルセデス・ベンツEQCとアウディ e-tronを現在、発表されている範囲で見た場合、かなり完成度が高いという印象が強い。言い方を変えると意外性がない。pプレミアムなEVの場合、そこが長所にも短所にもなるだろう。

そうした視点からするとテスラは“意外性の塊”だった。とくにモデルS以降はそれが顕著で、インパネのセンターに陣取る巨大なスマホのようなモニターや、まるでアプリをアップデートするかのようなサービス手法、さらにオーバーパワーと言えそうな爆発的な動力性能など、従来の自動車メーカーからは生まれて来るとは思えないEVである。

そこに新しい価値を好む人たちが飛びつき、テスラはブランド化していったわけだが、独プレミアムがこれから送り出す本格的EVは現段階では従来からのブランド価値の延長線上にあるように見える。クルマとしての形もこれまでの内燃エンジン車と本質的に変わらない。

そう思われないためにEV独自ブランドを展開するなどしているが、ユーザーがそれをどの程度、革新的なものとして受け入れるかは未知数だ。ユーザーは従来ブランドの延長線上にあるEVと受け入れるというのが自然であるし、それはメーカーにとっても決して都合の悪いことではないはずだ。

するとテスラの顧客と独プレミアムによるEVの顧客はかなり趣向が異なるということになる。テスラは生産体制や財務状況などの課題はあるものの、それをクリアすれば独プレミアムのEVをさほど怖れる必要はないだろう。テスラはすでにそれだけのブランド価値を持っている。

世界の自動車メーカーや異業種からの新規参入メーカーなどにより、プレミアムなEVについてはこれから競争が本格化する。“真の勝者”が見えてくるまでには、いましばらくの時間がかかるだろう。しかし、それは退屈な時間ではなく、かなりホットでクルマ好きとしては見応えがあるショータイムになるはずだ。

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