マツダ車によるエコ耐久レース「マツ耐」参戦に向けて、ホリデーオート9月号ではタイヤテストの模様をお届けした。転がり抵抗の少ないタイヤは確かに燃費は良いが、サーキットでのラップタイムを考えるとベストな選択ではないということがわかった。そこでタイヤはブリヂストンのスポーツタイヤ「POTENZA RE-71R」をチョイス。高いコーナリングスピードを活かしてラップタイムを保ちながら、エコランテクニックを駆使して燃費も確保しようという走法がカギとなる。
ただ、まだ1度もレースをしていないだけに、どんな走り方が本当にベストなのか、さらにガス欠症状がどの段階で発生するのか、まだまだわからないことがたくさんある中でレース当日を迎えることになった。この不安要素が最後に爆弾となることは、この時は夢にも思っていなかった…。
まずは予選。今回、ボク(副編カトー)の相棒に選んだのは、1週前に行われた86レースの十勝戦で優勝を飾ったばかりの橋本洋平氏(愛称:ハッシー)。予選だけは思いっきりアタックして、その順位でグリッドに並ぶということもあって、ハッシーには渾身のアタックをお願いした。
すると彼はその期待に応えて、予選はブッチギリのタイム(1分5秒8)でポールポジションを獲得。2位のデミオが1分12秒1だから、まあ当たり前なのだがまずクルマの速さは証明することができた。
しかし、このレースのキモは速さではない。レースタイムの2時間30分を給油なしで走りきらなければならないため、いかに効率的に燃費良く走るのかが重要なのだ。この「速さと燃費のバランス」を最も高次元でバランスさせたマシンとドライバーだけが、栄冠を勝ち取ることができる。
さて、我がチーム、作戦としては昨年のこのレースの優勝周回数が112周だったことを踏まえて、最低でも113周することを目指す。まあ、うまくいけば114周で優勝できるかな…、ぐらいに正直甘く考えていた。
決勝レースがスタートしてみると、童話「ウサギとカメ」よろしく、我々ウサギチームのRX-8号は序盤のレースを先頭で引っ張る。しかし、その時間は長くなかった。スタートドライバーのハッシーは1分15秒台のペースで周回を重ねるが、カメ軍から先代デミオ号が我々に肉薄。ペースはウサギよりも速く、5周目にはあっさりとトップを明け渡してしまう。
我々ウサギRX-8号もペースを上げたいのだが、燃費がキツくてこれ以上ペースを上げられないのだ。さらに13周目には初代アテンザワゴン号の追撃も交わすことができず3位に転落。ピット内には暗〜いムードが漂い始める。
しかし、ハッシーは諦めることなく、どんな走り方がベストなのかを探りつつ周回を重ね、45分が経過した段階でカトーに2位でバトンを渡す。
カトーは事前にハッシーに教わっていた走り方を忠実に守って走行を重ねる。中でもとくに重要なのは「ストレートの後半(コーナーの手前)でいかに長くアクセルオフをするか」ということ。このアクセルオフしている時は燃料消費がゼロなので、これが当然燃費に効くからだ。コーナー直前までブレーキをガマンするので慣れないとコワイのだが、そんなことも言ってられない。カトーも淡々と1分15秒台での周回を重ねる。しかし、ここで予期せぬトラブルが起こる。
筑波サーキットのレース時の気温は34度と暑かったので、ドリンクを積んでいったのだが、ペットボトルにつないでいたホースが外れるという事態が発生。カトーは30分をすぎてぐらいから意識が朦朧としてきめたが、それでも気力を振り絞ってトップを追走する。そして55分を走ってテール・トゥ・ノーズまで追いついたところで、2位で再度ハッシーにバトンタッチした。
そして満を持してハッシーが追撃!といきたいところだが、燃費がギリギリの状態で走っているので、おいそれとペースアップするわけにはいかない。ガマンの走りを続けていると、トップを走っていた初代アテンザ号がピットインしたこともあって(3回のピットインが義務)、なんと109周目には再びトップに立つ。ピットはここで沸き立つのだが、その直後に残り時間5分というところでハッシーの悲痛な叫びがケータイから入ってくる。
「ウワァー、ガス欠症状が出始めた」
タンクにはまだ3L以上のガソリンが残っているはずだが、レーシングスピードで走っていると、RX-8は最後までガソリンを吸ってくれないのだった。テストで確認できていなかった不安が最後の最後の最後で的中したのだ。
「マジかよ…」
いったん緊急ピットインをして、マシンの様子を探ってみると、まだエンジンはかかる。どうやらゆっくりなら走れそうだ。このレースはチェッカーを受けないと完走扱いにはならない。なのでとにかくチェッカーを受けるために、トップがファイナルラップに入ったところで再度コースインする。ハザードランプを点けたままゆっくりの走行となってしまったが、なんとか5位でチェッカーを受けることができた。
優勝した先代デミオ号の周回数は116周で、昨年よりも4周も積み上げてきたのにはアッパレだった。我々ウサギRX-8号は最終的には113周ということで、当初の目標をクリアすることができたが、レースのレベルが飛躍的に上がってしまって、それに追いつくことができなかったのは残念だ。
それにしても最後の最後でトップがガス欠でピットインしてしまうなんて、なんとも劇的な幕切れだった。今回、マシンを提供してくれたリアルテックのハマちゃんがこのままで黙っているわけがない(もちろん自分も!)。どこかできっちりリベンジしたい!