ともにV8エンジンを搭載していてもキャラクターは見事に異なる
GTS、そしてトロフェオ。マセラティ レヴァンテのラインナップに待望のV8モデル、一挙2車種が加わった。
電子制御式4WDの“Q4”と組み合わせるため、クアトロポルテGTS用をベースに相当な範囲を設計し直した3.8L V8ツインターボエンジンは、シリンダーヘッドやピストン、コネクティングロッド、ツインスクロール式ターボチャージャーなど内部も多くが刷新されて、GTSで最高出力550ps、最大トルク734Nmを獲得。トップパフォーマンスを誇るトロフェオでは、トルクはそのままに、最高出力をさらに590psにまで引き上げている。
いずれも8速ATを組み合わせて、GTSでも0→100km/hを4.2秒、最高速は292km/hという速さを標榜。トロフェオではそれぞれ3.9秒、304km/hと、もはやスーパーカーレベルの動力性能を獲得している。
V8エンジンならではの豊潤な味わいのあるGTS
まずはGTSから試した。低重心感を強調する専用の前後バンパー、ダブルバーチカルバーと呼ばれる意匠を用いたラジエーターグリルを採用し、21インチのタイヤ&ホイールを履いた外観は、見るからにスポーティ。フルプレミアムレザーでまとめられたインテリアは、シフトレバーの形状と操作ロジックが変更され、より直観的に操作できるようになった。
まず好印象を抱いたのが乗り心地だ。サスペンションは引き締められているが、近年のマセラティに共通のピッチング方向の大きな動きがようやく抑えられて、姿勢が常にフラットに保たれるから、とても快適なのである。しかも、手応えの良いハンドルを切り込むと、間髪入れずに、しかもほとんどロールを感じさせることなく向きが変わり始める。まるで、ひとまわり小さなクルマを操っているかのような軽快感だ。
その上、エンジンはV8ならではの豊潤な味わいを堪能させてくれるのだから堪らない。トルクが充実しているだけでなく回転が滑らかで、サウンドは素晴らしいハミングを奏でる。SPORTモードに入れてアクセルペダルを開けていけば、まるで自然吸気ユニットかのように回転上昇にリンクして力が盛り上がり、ハイトーンのサウンドを炸裂させながら、最終的には7000rpmのレッドゾーンの先まで回り切るのだ。
ついついアクセルペダルを踏み込みたくなるトロフェオ
一方のトロフェオは、前後バンパーやディフューザー部分などカーボンファイバー素材を多用し、ラジエーターグリルをブラッククロームでまとめるなど、さらに精悍な仕立てとされている。22インチのタイヤはコンチネンタル製の専用開発品だ。
インテリアの目玉は“Pieno Fiore”プレミアムフルグレーンレザーの採用だろう。「経年に伴う風合いの変化を楽しめる」というこれは、現時点ではとてもしなやかな手触りを示す。
サスペンションはさらに硬められているが、こちらも不快なものではない。低回転域でのエンジンのGTSとほぼ同様で、つまり十分デイリーユースに対応する。本領を発揮させるには、SPORTモードに加え、このトロフェオだけに備わるCORSA(コルサ)モードに設定すればいい。
エンジン、ギアボックス、エアサスペンション、Q4、ESPやトラクションコントロール、そして排気系の設定が切り替わり、刺激たっぷりの走りが味わえる。
ピックアップの高まったエンジンは高回転域でさらにパワーを爆発させ、ハンドリングは切れ味を一段と高める。目線が高いこと以外は、まさにスーパースポーツと呼べる走りっぷりを堪能できる。
ついついアクセルペダルを踏み込みたくなるトロフェオと、日常域でも充足感たっぷりの走りの世界に浸らせてくれるGTS。同じV8ユニット搭載の、似ているようで結構違った2モデルの設定はレヴァンテの世界を大きく拡大してくれるに違いない。さて、どちらを選ぶべきか。ユーザーにとっては嬉しい悩みとなりそうだ。(文:島下泰久)
マセラティレヴァンテ GTS 主要諸元
●全長×全幅×全高=5020×1985×1700mm ●ホイールベース=3005mm ●車両重量=2300kg ●エンジン=V8DOHCツインターボ ●排気量=3799cc ●最高出力=550ps/6250rpm ●最大トルク=733Nm/3000rpm●トランスミッション=8速AT ●駆動方式=4WD ●車両価格=1800万円(データは日本仕様)
マセラティレヴァンテ トロフェオ 主要諸元
●全長×全幅×全高=5020×1985×1700mm ●ホイールベース=3005mm ●車両重量=2340kg ●エンジン=V8DOHCツインターボ ●排気量=3799cc ●最高出力=590ps/6250rpm ●最大トルク=734Nm/2500rpm●トランスミッション=8速AT ●駆動方式=4WD ●車両価格=1990万円(データは日本仕様)