自然吸気V12ユニットが奏でる伝説的なサウンド
色々なクルマを乗り継いできた人が最後に行き着くクルマのひとつがランボルギーニといわれている。中でもアヴェンタドールはこれ以上はないという究極を求めるユーザーが選ぶクルマだ。今回はその極限にいるアヴェンタドールSロードスターの試乗インプレッションをお伝えしよう。
撮影日の早朝、アヴェンタドールSロードスターに乗って担当編集者が自宅まで迎えに来てくれた。家の壁を震わせるようなその排気音を聞いてご近所の奥さんが玄関から顔を出し、アヴェンタドールを目を丸くしながら見ている。クルマに詳しくない人でも視線を釘付けにする威圧感は、さすがランボルギーニといえる。
コクピットに乗り込んでドライビングポジションを合わせる。2シータースポーツカーだが、乗ってしまえば窮屈感はない。シートやハンドルの調整範囲が広く、自分好みに調整できるのも利点だ。
エンジンの始動は、まるでミサイルの発射ボタンを押すかのようだ。赤いカバーを上に跳ね上げてから、スタートボタンを押すと6.5L 60度V型12気筒エンジンが唸りをあげる。排気音はマッスルカーのようなドロドロした低音だけでなく、ちょっと高めの音質も混じっていることで高回転型エンジンだということが想像できる。
最高出力740psは8400rpmで発生され、690Nmの最大トルクは5500rpmで絞り出される。最近のダウンサイジングターボエンジンに慣れてしまうと、8400rpmまで回ることだけでワクワクしてしまう。エンジン特性は高回転型だが、そもそも排気量が6.5Lもあるので低回転域でも力は十分にあり、市街地走行も苦痛ではない。
アクセルとブレーキの2ペダルだが、ギアのセレクトレバーは設定されず、ステアリングコラムに搭載される右側のパドルを引けば1速に入る。ISR(インディペンデント シフティング ロッド)と呼ばれるシングルクラッチの7速AMTで、パドルシフトでもATモードでも走ることができる。
排気量の醍醐味であるターボラグのない鋭い加速
アクセルペダルを踏み込むとターボラグなしで驚愕の加速を披露し、大排気量NAの醍醐味を味わうことができる。100km/hでのエンジン回転数は7速で2200rpm、最高速の350km/hだと7700rpmという計算になる。
道幅の狭いワインディングロードでも苦もなく走れる。ただ直線を突っ走るだけと思っているなら、それは大間違いだ。ハンドルの切り角に対して正確にノーズがインに入り込んでいく。これはLRS(ランボルギーニ リアホイール ステアリング)のメリットもあるのだろう。低速では逆位相、高速では同位相に動く。その動きを直接感じることはないが、ハイスピード域で危険回避のような操作をすると瞬間移動する。
リアウイングは収納、L(ロー)、H(ハイ)の3段階に変化する。スイッチ操作もできるが、自動でも上がる。サーキット用のドライブモード「コルサ」だと低いスピードでもHに設定される。「ストラーダ」では130km/hなるとHになり、110km/h以下になるとLに設定される。「エゴ」では好みのドライブモードにプリセットできる。たとえばパワートレーン、ハンドル、サスペンションのそれぞれをストラーダ、スポーツ、コルサから選択できる。
脱着式のルーフを外すと官能的サウンドに酔いしれる
手動で脱着するルーフは左右2分割式で、外したルーフはボンネット内に収納できる。ボンネット裏にはウインドディフレクターが収納されておりフロントウインドウ上部に装着することで風の流れがスムーズになり、走りやすくなる。爽快なエキゾーストノートはオープンの方が乗員にとっては気持ち良いサウンドに聞こえる。
アヴェンタドールSロードスターは誰にでも勧められるものではないが、たしかに非日常を味わうには最高のクルマだ。(文:こもだ きよし)
ランボルギーニ アヴェンタドール S ロードスター 主要諸元
●全長×全幅×全高=4780×2030×1136mm
●ホイールベース=2700mm
●車両重量=1625kg
●エンジン=V12DOHC
●排気量=6498cc
●最高出力=740ps/8400rpm
●最大トルク=690Nm/5500rpm
●トランスミッション=7速AMT
●駆動方式=MR
●0→100km/h加速=3.0秒
●車両価格=4996万9107円