コンパクトクラスからSUVまで増殖するMパフォーマンスモデル
BMW M社は、1972年に設立されたBMWモータースポーツ社をルーツに、BMWの100%子会社として高性能モデル、及び部品開発を行うほか、ドライバーエクスペリエンス、インディビデュアル車の生産も担当する。
現在M社がコンプリートカーとして開発を手がけるのは、ベースモデルの頂点に位置し、車名自体がMで始まる「Mモデル(SUVやクーペ、ロードスターはX5 M/Z4 MのようにMのイニシャルが後付けとなる)」と、Mの後に続く3桁の数字でクラスと出力レベルを表す「Mパフォーマンス」の2種類(X4 M40iはSUVなので表示が異なる)。
Mモデルはもともとレース参戦用マシンとして登場したもので、レーストラックでの活躍も視野に入れたハイテクを投入し、軽量化のためのパーツの材料置換やボディワークも特別になるだけでなく、搭載エンジンやトランスミッションもM社が独自のチューニングを施している。
一方のMパフォーマンスは、レーシングスペックまでは必要ないが、一般道をよりスポーティに走れるようにエンジンや足まわりをM社がチューニングを行ったモデルだ。
現在、日本で展開するMパフォーマンスモデルは、1シリーズのM140iや2シリーズクーペのM240iなどのコンパクト系を中心としていたが、近年はSUVや、7シリーズ、8シリーズなどの大型モデルも増えている。その中の1台が、今回試乗したX4 M40iだ。
X4 M40iに見る最新Mパフォーマンス像
2018年9月に日本に導入された新型X4は、2L直4気筒ターボ(252ps/350Nm)を搭載するスタンダードなxDrive30iとxDrive30i Mスポーツ。そして、最上級モデルのX4 M40i(360ps/500Nm)の3グレードである。
新型X4は先代に対しホイールベースを55mm拡大した2865mm。これは先に登場した新型X3と共通だが、X4は全長4760mm×全幅1940mmとボディサイズはひとまわり大きい。とくに全幅はかなりのボリュームで、都市部の狭い道路に入り込むと大きさを感じることもあった。
一方、全高は1620mmと、X3と比べて55mmも低い。この長くワイドで低いプロポーションがクーペを名乗る由来だが、新型はホイールベースと全長の拡大により、後席の足もとが広くなった上にルーフラインの絞り込みも後方に移動したことで、頭上空間が増し、快適性が大幅に向上している。
搭載するエンジン(B58B30A型)は、現在のBMWの直列6気筒を代表する最新ユニットで、搭載モデルによってパワーが調整されることが多く、最高出力は326ps〜340ps、最大トルクは450Nmというのが通常のスペックとなる。
しかし、X4 M40iはMパフォーマンスモデルらしく最大レベルへと引き上げ、360ps/500Nmを実現した。0→100km/h加速は4.8秒というからかなりの俊足だが、気難しいところはまったくなく、低速域からトルクは潤沢で、8速ATとの組み合わせで滑らかな走りを味わわせてくれる。
パワフルな3L直6ターボと優れた足を持つX4 M40i
ターボエンジンということもあり、高回転域ではリミットの6500rpm付近で伸びを鈍らせるものの、そこに至るまでの回転フィールはトルクフルでピックアップが良く、実に気持ちがいい。
足まわりはダンパーの減衰力調整を備えたアダプティブMサスペンションと、大径21インチのランフラットタイヤのハードな組み合わせだが、それでも走行モードにかかわらず、乗り心地が粗くなっていない。路面のギャップを通過するとそれなりの突き上げ感はあるが、ショックの角が丸められ、バタつく余韻を残すことなく一度でいなしてくれるので、締まった乗り味がむしろ心地良い。
そんな足まわりに支えられたオンロードでの走りは、重心の高さをまったく意識させず、常に旋回中の姿勢がフラットで、理想のラインを自由自在にトレースできる。ここまで姿勢変化を抑えると、オフロードでの接地性がどうなのかちょっと不安になるが、BMWのSAVやSACは以前から実走行で中心となるオンロードに軸足を置いている感覚が強く、“軽快さ”という点では、数あるSUVの中でも上位に位置する。
X4 M40iは、BMWならではのSUV像を、もっともわかりやすく表現している1台だろう。(文:石川芳雄)
BMW X4 M40i 主要諸元
●全長×全幅×全高=4760×1940×1620mm
●ホイールベース=2865mm
●車両重量=1870kg
●エンジン=直6DOHCターボ
●排気量=2997cc
●最高出力=360ps/5500rpm
●最大トルク=500Nm/1520-4800rpm
●トランスミッション=8速AT
●駆動方式=4WD
●車両価格=977万円