MモデルのようでMモデルではない、Mパフォーマンスモデルが増えているが、MモデルとMパフォーマンスはどう違うのか。2018年9月6日に登場した「X4 M40i」の試乗をとおして、その違いを見てみよう。(Motor Magazine 2019年1月号より)

コンパクトクラスからSUVまで増殖するMパフォーマンスモデル

BMW M社は、1972年に設立されたBMWモータースポーツ社をルーツに、BMWの100%子会社として高性能モデル、及び部品開発を行うほか、ドライバーエクスペリエンス、インディビデュアル車の生産も担当する。

現在M社がコンプリートカーとして開発を手がけるのは、ベースモデルの頂点に位置し、車名自体がMで始まる「Mモデル(SUVやクーペ、ロードスターはX5 M/Z4 MのようにMのイニシャルが後付けとなる)」と、Mの後に続く3桁の数字でクラスと出力レベルを表す「Mパフォーマンス」の2種類(X4 M40iはSUVなので表示が異なる)。

Mモデルはもともとレース参戦用マシンとして登場したもので、レーストラックでの活躍も視野に入れたハイテクを投入し、軽量化のためのパーツの材料置換やボディワークも特別になるだけでなく、搭載エンジンやトランスミッションもM社が独自のチューニングを施している。

一方のMパフォーマンスは、レーシングスペックまでは必要ないが、一般道をよりスポーティに走れるようにエンジンや足まわりをM社がチューニングを行ったモデルだ。

現在、日本で展開するMパフォーマンスモデルは、1シリーズのM140iや2シリーズクーペのM240iなどのコンパクト系を中心としていたが、近年はSUVや、7シリーズ、8シリーズなどの大型モデルも増えている。その中の1台が、今回試乗したX4 M40iだ。

画像: ボディサイズは全長4760mm×全幅1940mm×全高1620mm。先代モデルに比べ、全長は80mm延長された。

ボディサイズは全長4760mm×全幅1940mm×全高1620mm。先代モデルに比べ、全長は80mm延長された。

画像: 長くワイドで低いプロポーションが特徴だが、ホイールベースと全長の拡大、ルーフラインの絞り込み変更により、快適性が大幅に向上している。

長くワイドで低いプロポーションが特徴だが、ホイールベースと全長の拡大、ルーフラインの絞り込み変更により、快適性が大幅に向上している。

X4 M40iに見る最新Mパフォーマンス像

2018年9月に日本に導入された新型X4は、2L直4気筒ターボ(252ps/350Nm)を搭載するスタンダードなxDrive30iとxDrive30i Mスポーツ。そして、最上級モデルのX4 M40i(360ps/500Nm)の3グレードである。

新型X4は先代に対しホイールベースを55mm拡大した2865mm。これは先に登場した新型X3と共通だが、X4は全長4760mm×全幅1940mmとボディサイズはひとまわり大きい。とくに全幅はかなりのボリュームで、都市部の狭い道路に入り込むと大きさを感じることもあった。

一方、全高は1620mmと、X3と比べて55mmも低い。この長くワイドで低いプロポーションがクーペを名乗る由来だが、新型はホイールベースと全長の拡大により、後席の足もとが広くなった上にルーフラインの絞り込みも後方に移動したことで、頭上空間が増し、快適性が大幅に向上している。

搭載するエンジン(B58B30A型)は、現在のBMWの直列6気筒を代表する最新ユニットで、搭載モデルによってパワーが調整されることが多く、最高出力は326ps〜340ps、最大トルクは450Nmというのが通常のスペックとなる。

しかし、X4 M40iはMパフォーマンスモデルらしく最大レベルへと引き上げ、360ps/500Nmを実現した。0→100km/h加速は4.8秒というからかなりの俊足だが、気難しいところはまったくなく、低速域からトルクは潤沢で、8速ATとの組み合わせで滑らかな走りを味わわせてくれる。

画像: B58B30A型直列6気筒ユニットはMパフォーマンスモデル用に360ps/500Nmまでパワーアップ。

B58B30A型直列6気筒ユニットはMパフォーマンスモデル用に360ps/500Nmまでパワーアップ。

画像: 路面状況をセンサーが感知する専用の「アダプティブMサスペンション」を採用。

路面状況をセンサーが感知する専用の「アダプティブMサスペンション」を採用。

パワフルな3L直6ターボと優れた足を持つX4 M40i

ターボエンジンということもあり、高回転域ではリミットの6500rpm付近で伸びを鈍らせるものの、そこに至るまでの回転フィールはトルクフルでピックアップが良く、実に気持ちがいい。

足まわりはダンパーの減衰力調整を備えたアダプティブMサスペンションと、大径21インチのランフラットタイヤのハードな組み合わせだが、それでも走行モードにかかわらず、乗り心地が粗くなっていない。路面のギャップを通過するとそれなりの突き上げ感はあるが、ショックの角が丸められ、バタつく余韻を残すことなく一度でいなしてくれるので、締まった乗り味がむしろ心地良い。

そんな足まわりに支えられたオンロードでの走りは、重心の高さをまったく意識させず、常に旋回中の姿勢がフラットで、理想のラインを自由自在にトレースできる。ここまで姿勢変化を抑えると、オフロードでの接地性がどうなのかちょっと不安になるが、BMWのSAVやSACは以前から実走行で中心となるオンロードに軸足を置いている感覚が強く、“軽快さ”という点では、数あるSUVの中でも上位に位置する。

X4 M40iは、BMWならではのSUV像を、もっともわかりやすく表現している1台だろう。(文:石川芳雄)

画像: マット感のあるガルバニック加工が施されたボタン類を採用することで、ラグジュアリーなインテリアを演出。

マット感のあるガルバニック加工が施されたボタン類を採用することで、ラグジュアリーなインテリアを演出。

画像: フルデジタルのメーターパネルは文字の大きさやレイアウト変更が可能。選択したドライブモードで色が変わる。

フルデジタルのメーターパネルは文字の大きさやレイアウト変更が可能。選択したドライブモードで色が変わる。

画像: レッドステッチが施されたレザーのスポーツシートを標準装備。サイドサポートは電動で調整することができる。

レッドステッチが施されたレザーのスポーツシートを標準装備。サイドサポートは電動で調整することができる。

画像: M40i専用のセリウムグレーをまとい、躍動感のある大型エアインテークを備えたフロントバンパーを採用。

M40i専用のセリウムグレーをまとい、躍動感のある大型エアインテークを備えたフロントバンパーを採用。

画像: 通常モデルの丸型マフラーエンドに対して、M40iはスポーティなブラッククロームを施した専用形状のオーバルマフラーエンドを装着。

通常モデルの丸型マフラーエンドに対して、M40iはスポーティなブラッククロームを施した専用形状のオーバルマフラーエンドを装着。

画像: スポーティなデザインの21インチ大径ホイールとブルーカラーが際立つ「Mスポーツブレーキキャリパー」を標準装備。

スポーティなデザインの21インチ大径ホイールとブルーカラーが際立つ「Mスポーツブレーキキャリパー」を標準装備。

BMW X4 M40i 主要諸元

●全長×全幅×全高=4760×1940×1620mm
●ホイールベース=2865mm
●車両重量=1870kg
●エンジン=直6DOHCターボ
●排気量=2997cc
●最高出力=360ps/5500rpm
●最大トルク=500Nm/1520-4800rpm
●トランスミッション=8速AT
●駆動方式=4WD
●車両価格=977万円

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