初めての乗用4WDモデルは試作のまま販売されず
スバルの小型車は1965年の東京モーターショーに登場したスバル1000から始まった。水平対向4気筒OHVを縦置きしたFFとして登場したモデルで、水平対向エンジンはピストンが互いに向かい合って動くことで往復運動の不平衡慣性力を打ち消し、低重心にできることで大きな注目を集めた。
ただしヘッド部のオイル管理、排気の取り回しなど難しいところも多く、スバル1000はエンジンの後方にデフ、ギアボックスを配していた。シンメトリカルはここから誕生している。さらにデュアルラジエターに電動ファン、インボード式フロントブレーキと、メカニズムの面でも先進性に富んでいた。
翌1966年5月から発売されたスバル1000は、1967年11月に68psのスポーツを追加する。国産初のラジアルタイヤを採用し、フロントブレーキはインボード式ディスクとなる。そして1969年3月にはボアアップでエンジンを1088ccとして「スバルff-1」を名乗る。ベースは62 ps、スポーツは77 psだった。
そうこうしていると、このクラスにライバルが増え、パワーを競うようになる。それに対抗すべく、さらなるボアアップで1297㏄を得て1970年7月に「スバル ff-1 1300G」が登場、80 psと93 psというパワーを手にしたのだった。
こうした中、1971年の東京モーターショーに4輪駆動の「スバルff-1 1300Gバン」が登場する。もともとは1970年に東北電力から「快適な巡回用車両」の依頼を受けたことが発端で、FFのスバル1000バンを4輪駆動に改造することになったのだった。
FFレイアウトをベースに、リアアクスルを組み込み、プロペラシャフトは無理やり室内を貫通させたという。その試作車は積雪地域でのテストで手応えを得て、本格的な開発に入ったが、結局、「スバルff-1 1300G 4WD バン」は市販には至らず、その4WDシステムはレオーネで陽の目を見ることになる。
4輪駆動の「スバルff-1 1300Gバン」は8台が製作され、うち5台が東北電力に納品されたという。スバルビジターセンターにはそのうちの1台が展示されているが、現存モデルはこの展示車のみだ。
スバル ff-1 1300Gバン 4WDバン(1971年)主要諸元
●全長×全幅×全高=3880×1480×14300mm
●エンジン= 水平対向4気筒
●排気量=1267cc
●最高出力=80ps/6400rpm
●最大トルク=10.1kgm/4000rpm
●車両重量=835kg
スバルビジターセンター
群馬県太田市のスバル矢島工場敷地内にあるミュージマム。工場正門を入ってすぐ右側にある。その名のとおり、工場を訪れた人に、スバルのモノ作り、歴史、哲学を広く理解してもらうための施設で、入場は無料。見学の際には担当者が丁寧に案内してくれるので、事前に予約が必要となっている。SUBARUの歴史を振り返ると、スバルの真面目なクルマ作りの一途さがひししと伝わって来る。
●住所:群馬県太田市庄屋町1-1
●入館料:無料(電話にて要予約/見学可能人数1名〜200名)
●開館時間(見学時間):9:00〜/11:00〜/13:00〜 (1日3回/所要時間約2時間)
●休館日:スバルビジターセンター ホームページの開館カレンダー参照
●駐車場:あり(無料、事前申し込みが必要)
●問い合わせ先:☎0276-48-3101
●クルマでのアクセス:東北道那須 館林ICより約70分、北関東自動車道 太田桐生ICより約30分
●電車でのアクセス:東武鉄道「太田駅」より車で約20分、同駅南口より朝日バス「熊谷駅」行き乗車、「マリエール太田前」下車、徒歩約10分、JR「熊谷駅」より車で約50分
●展示車両は入れ替わる場合あり。