ひと昔前、ハイパフォーマンスカーの証とも言われていたマフラーの2本出。かつては憧れの存在だったが、今ではエコカーだって2本出しにしていることもある。では、こうした2本出しにどんな意味があるのか、モータージャーナリストのこもだきよし氏に聞いた。

タイトル画像は4代目スバル レガシィのもの。

“マフラーの2本出し”から、本音と建前が見え隠れする

マフラー2本出しに意味があるのかという疑問だが、マフラーとは太鼓状の消音器のことだから、お題をより正確に言うなら「テールパイプ2本出しに……」ということになる。

そもそもこの2本出しは、性能アップのためハイパフォーマンスカーに採用されていたもの。大排気量で高性能なエンジンは、高回転まで回すとより多くの燃焼ガスを排出する。このとき、1本のガスの通路では流量を制限されてしまうので、2本にして効率良く排出できるようにしているわけだ。

ここでは“2本”としているが、最近ではセンター3本出しや、左右とも2本を配置して合計4本出しなどと、採用するモデル数だけでなくバリエーションも増えている。ただ、こうした複数本出しを採用する理由は右記のような排気効率の向上でなく、簡単に言ってしまえば“スポーティに見せたい”というデザイン上の理由が大きいようだ。

画像: BMW M4の4本出しテールパイプ。

BMW M4の4本出しテールパイプ。

だから、見せかけだけの2本出しモデルも増えている。エンジンルームからクルマの後部まで1本のエキゾーストパイプを通ってマフラーに入り、1本のパイプで出たあとにY字になって2本出しになるクルマがある。実はこれ、性能的にはまったく意味のないものである。

逆に、エンジンルームから2本のエキゾーストパイプとマフラーを通って、2本のテールパイプで出てくるのは本物の2本出しといえる。性能だけでなく、エキゾーストノートも勇ましくなり、スポーティさを強調してくれるはずだ。

画像: BMWの現行M3/M4のもので、2本のエキゾーストパイプを通っているいわゆる“本物”の複数本出しテールパイプだ。

BMWの現行M3/M4のもので、2本のエキゾーストパイプを通っているいわゆる“本物”の複数本出しテールパイプだ。

さらに、最近の複数本出しのテールパイプに、バルブの付いているクルマが増えている。

エンジン回転数が低いときにバルブを閉じて、排気流量を少し絞ることで燃焼効率が良くなり、結果的にアクセルペダルの踏み込み量と燃料消費量も小さくすることができる。逆にアクセル開度やエンジン回転数など、ある条件を超えるとバルブを開けて排気しやすくする。このときはやはりエキゾーストノートは大きくなる。

ちなみに、アイドリング時はバルブを開けている。冬場、排気の湯気が1本からしか出ていないと故障していると勘違いされてしまうからだ。

画像: ポルシェ マカンにオプション採用されているバルブ付きテールパイプ「スポーツエグゾーストシステム」。

ポルシェ マカンにオプション採用されているバルブ付きテールパイプ「スポーツエグゾーストシステム」。

電気自動車やハイブリッドカーが多く走っている世の中だが、一方で2本出しにしてスポーティさを打ち出すモデルが増えているという矛盾がある。ただこれは、人間の本音と建て前なのかもしれない。

画像: マツダ ロードスターのテールパイプも2本出しだ。マフラー内部はこうなっている。

マツダ ロードスターのテールパイプも2本出しだ。マフラー内部はこうなっている。

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