1989年に登場した「89C-V」でトヨタのル・マン制覇の夢は現実味を帯びてくる。量産エンジンでは世界のトップクラスに太刀打ちできないことを実感し、いよいよ本格的なグループCカーを開発、「89C-V」そして「90C-V」で欧州の強豪に立ち向かうことになる。
優勝こそ逃したが6位入賞、1990年のル・マンは可能性が見えたレースだった
トヨタ・トムス85Cで1985年のル・マン24時間に挑戦、この時からトヨタのル・マン挑戦の歴史が動き出した。その後、トヨタ・トムス85Cは、86C、87C、88Cへと進化したが、量産ベースの小排気量エンジンでは当時の並みいるCカーの強豪相手に優勝争いに加わることはできなかった。
それでも量産ベースのエンジンで一定の成果を収めたトヨタは、1989年いよいよ純粋なレーシングエンジンを搭載した本格的なグループCカー「89C-V」を開発、それを進化させたのが1990年の「90C-V」だった。
89C-Vに改良を加えた90C-Vは、全日本耐久選手権で速さと高い耐久性を発揮して、ル・マン24時間レースにトムス2台、サード1台の3台体制で乗り込んだ。
前年1989年のル・マンではポールポジションこだわったトヨタだが、この年は予選順位にこだわらず決勝レースを重視する戦略で臨んだ。すでに3.6L V8ツインターボのR36Vを開発していたが、エンジンをあえて信頼性の高い3.2L仕様としたことからも、この年にかける思いが感じられた。
決勝ではトムスの37号車とサードはリタイアに終わったが、トムスの36号車がマシントラブルで一時後退しながらレース終盤に盛り返して6位でゴール。優勝こそ逃したが、ル・マン制覇の可能性が見えるレースとなったのだった。
トヨタ 90C-V 1990年 主要諸元
●全長×全幅×全高=4795×1995×1000mm
●ホイールベース=2725mm
●エンジン=V8DOHCツインターボ
●排気量=3.2L/3.6L
●駆動方式=MR