フォーミュラE選手権の特徴のひとつに大都市の中心で行われることがあげられるが、これこそがこのシリーズの大きなカギとなっている。

環境に優しい電気自動車の有用性をアピール

フォーミュラEの舞台は、原則としてその国を代表する都市に作られた特設サーキット=公道ストリートコースとなる。例外的に今シーズン(シーズン5)の第4戦メキシコはF1GPも開催されるメキシコシティのエルマノス・ロドリゲス・サーキットで行われたが、ここは世界でも稀有な“首都にある常設サーキット”であり、大都市のコースで開催するというフォーミュラEのコンセプトから外れてはいない。

都市のサーキットでやることのメリットはいくつかある。ひとつは都市での持続可能なモビリティとしての電気自動車の価値と可能性をフォーミュラEを通してアピールできること。一般的なレースのイメージというのはサーキットを爆音を響かせるというものだが、フォーミュラEは耳栓が必要なこの種の音とは無縁(わずかなモーター音はある)で、普段は自動車の騒音や走行時の排気ガスに悩まされる市民に電気自動車の有用性を知らしめることができる。

エンターテイメント面でもメリットがある。まずは観戦のしやすさだ。既存のサーキットの場合、観戦場所に辿り着くまでは決して少なくない時間とお金の消費を強いられるが、大都市が開催地となるフォーミュラEでは安価な公共交通手段で気軽にサーキットを訪れることができる。

さらに観客層も、観戦のハードルの高さからどうしてもコアなレースマニアが多数を占めがちな既存サーキットに比べて、まだレースにさほど興味がない一般市民にアピールすることが可能。これはとくに参戦メーカー/サプライヤーにとっても大きな魅力だろう。もちろん大都市ということで、そもそも人口=潜在的観客数が多いことも見逃せない。

また、狭く観客席に近いストリートコースを走ることで、コース幅の広い既存サーキットを走る場合に比べて“速度感”が増す。まだ発展途上のレースシリーズであり、他のフォーミュラカーに比べて正直まだ迫力不足が否めないフォーミュラEの“弱点”を覆い隠してくれる利点も、大都市のストリートコースにはある。

画像: 大きな盛り上がりを見せた香港E-Prix。

大きな盛り上がりを見せた香港E-Prix。

画像: チリの首都サンチアゴで行われたイベントのコースは、街の中心部に隣接する公園内に作られた。

チリの首都サンチアゴで行われたイベントのコースは、街の中心部に隣接する公園内に作られた。

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