モナコで見えた小さな変化、シーズンの流れも変わるか
モナコGPの決勝レース前にピレリが推奨したタイヤ戦略は、ベストが「ソフト」タイヤでスタートし10-22周で「ハード」に交換してそのまま走り切るというもの。セカンドベストとしては、「ソフト」タイヤでスタートし18-25周で「ミディアム」に交換する戦略があげられていた。
しかし、これは天候をはじめ状況が大きくは変わらないことを前提としたもの。決勝当日のモナコは90%の確率で雨が降るという予報もあり、各チームは雨も想定せざるをえない難しい状況だった。
そんな中で、シャルル・ルクレールのアクシデントにより、11周目に早くもセーフティカーが導入されることになる。ここで上位4台は一気にピットイン。ルイス・ハミルトン(メルセデスAMG)は「ミディアム」タイヤ、バルテリ・ボッタス(メルセデスAMG)も「ミディアム」に交換したが、マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)とセバスチャン・ヴェッテル(フェラーリ)はセオリーどおりの「ハード」を選択した。
なぜ、メルセデスAMGは周回数が67周も残っているのに、50周くらいが限界と言われる「ミディアム」タイヤを選んだのか。雨が降り始めるまでの繋ぎと考えたのか、それとも同じ「ソフト」タイヤで思ったほどレッドブルとのギャップを広げられなかったからか。
しかし、まとまった雨はいつまでたっても降ってこなかった。こうなると、どんどん「ハード」タイヤが有利となってくる。
実際、すでに60周目あたりにはハミルトンの「ミディアム」タイヤは限界に来ていた。それでもハミルトンはタイヤをいたわり、オーバーテイクのポイントをしっかりと抑えて、78周の長いレースをトップのまま走り切った。たしかにそれは見事だったが、余裕はまったくなかった。
2位の座はヴェッテルが手にしたが、それには理由があった。タイヤ交換の際に、ボッタスとフェルスタッペンのピットアウトリリーズのタイミングが重なり接触。ボッタスは右フロントタイヤをパンクして再度タイヤチェンジ(この時に「ハード」に交換)、フェルスタッペンには5秒ペナルティが科せられ、ともに後退することになったのだ。
しかし、このペナルティをのぞけば、フェルスタッペンにとって完璧なレースと言えただろう。序盤はハイペースで逃げるメルセデスと遜色のないタイムをマークし、終盤は完全に上回っていた。モナコでなければ勝てたレースだった。
次戦カナダGPが行われるジル・ビルヌーブ・サーキットはモナコとは大きく性格の異なるコースだが、ここでメルセデスAMGとレッドブル・ホンダがどんな走りを見せるのか。カナダGPはシーズンの流れが変わるポイントとなるかもしれない。
F1第6戦モナコGP決勝
優勝 44 L.ハミルトン(メルセデスAMG) 78周
2位 5 S.ヴェッテル(フェラーリ)+2.602s
3位 77 V.ボッタス(メルセデスAMG)+3.162s
4位 33 M.フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)+5.537s
5位 10 P.ガスリー(レッドブル・ホンダ)+9.946s
6位 55 C.サインツJr. (マクラーレン・ルノー)+53.454s
7位 26 D.クビアト(トロロッソ・ホンダ)+54.574s
8位 23 A.アルボン(トロロッソ・ホンダ)+55.200s
9位 3 D.リカルド(ルノー)+60.894s
10位 8 R.グロージャン(ハース・フェラーリ)+61.034s