2019年4月にマイナーチェンジされたフィアット 500Xに試乗した。今回のウリは、エクステリアの刷新と新世代エンジンの搭載。その走りっぷりは、激戦区のコンパクト インポートSUVのライバルに対してアドバンテージはあるのだろうか。

デザインセンスは、さすが。パワフルな新エンジンもマル

日本でも人気のフィアット 500(チンクェチェント)の兄貴分として、AセグメントからBセグメントにアップしてSUVテイストを加えたのが500X(チンクェチェント・エックス)。

日本には2015年の秋から導入され、2019年の4月に初めてのマイナーチェンジが行われた。主な変更点は、フロントまわりを中心としたエクステリアの刷新と、新世代エンジンの搭載だ。

画像: バンパーやライト類のデザインを変更し、SUVらしい精悍な顔つきになった。

バンパーやライト類のデザインを変更し、SUVらしい精悍な顔つきになった。

エクステリアでは前後バンパーのデザインが変更され、SUVらしい少し強そうな顔つきになった。ヘッドライトのまわりのデイタイムドライビングライトやポジショニングライトは上下で分割されるデザインとなり、フィアット「500」のロゴをモチーフにしたデザインを採用した。

このあたりのデザインセンスは、さすがイタリア車。日本車も、こうしたセンスは見ならって欲しいもの。またライト類がLEDに変更されたのもうれしいポイントだ。

エンジンは、新世代のオールアルミ製1.3L 直4「ファイアフライ」ターボエンジンに換装された。従来型のエンジン(1.4L)より排気量は小さくなったが、パワースペックは11psと20Nmもアップ。よりダウンサイジング化が進められた。組み合わされるミッションは6速DCTと変わらない。

なお、今回のマイナーチェンジで日本仕様のパワートレーンは1.3Lターボ+6速DCT+2WD(FF)のみの設定となり、4WDはフェードアウトした。ちなみに、500Xの兄弟車であるジープ・レネゲードの日本仕様も2019年2月にマイナーチェンジされたが、こちらには4WDが設定されている。

画像: 1.3Lにサイズダウンしたが従来型より11psと20Nmパワーアップしている。

1.3Lにサイズダウンしたが従来型より11psと20Nmパワーアップしている。

今回の試乗車は、装備が充実した500X クロス。もっとも、ベース車の500Xでも安全&快適装備は必要レベルにはあるが、受注生産なのでほとんどの人がこの500X クロスを選ぶのではないだろうか。

さて、従来型と直接比較したわけではないので、11psと20Nmのパワーアップを実感することはできなかったが、最近のB-Cセグメントのクルマに搭載されているエンジンと比較して考えれば、パワー的には十分。

DCTはポンポンとはシフトアップせず、低目のギアをセレクトして加速していく。DSGの感覚は初期のVWのDSGを思わせるもので、低速時の加減速は少しギクシャク感を伴うのだが、市街地走行レベルの車速に乗ってしまえば問題はない。

6速80km/hのエンジン回転数は約1750rpm、100km/hでは約2200rpm。静粛性も問題ない。

画像: ボディ同色のパネルがオシャレなインテリア。センターダッシュのモニターはスマホ対応。

ボディ同色のパネルがオシャレなインテリア。センターダッシュのモニターはスマホ対応。

SUVテイストだから少し背は高く、コーナリング姿勢は外から見ているとロールは意外と大きいとカメラマンに教えられたが、運転している限りは気になるレベルではなく、ハンドリングはけっこう軽快。乗り心地はファミリーカーとしては少し硬めだが、SUVとして考えれば妥当な線にある。

また、ヒルホールド機構が備わらないので、坂道発進時にアクセルを踏んでもクルマが動き出すまでにラグがあり、その間に後退してしまうことがある。これは従来型から変わっていなかったポイントで、ぜひとも改善して欲しかった。

アイドリングストップはクルマが完全停止するまでは作動せず、逆に再始動も少し時間がかかる。日本の渋滞走行ではエンジンはすぐに停止しないほうがありがたいし、発進時は早めにブレーキを踏む足の力を少し弱めてエンジンを再始動させるとか、前述の坂道発進を含めて、コイツを意のままに操れるようになると、それはまたクルマ好きとしては楽しみになるのかもしれない。

画像: 500Xクロスは8ウエイ電動アジャストの本革シートが標準装備。

500Xクロスは8ウエイ電動アジャストの本革シートが標準装備。

ボディ同色のパネルにブラウンレザーのシートなど、インテリアもオシャレだ。タッチパネルモニターはスマホ対応でカーナビやオーディオも使えるが、欲を言えば画面がもう少し大きいとうれしい。
前面衝突警報、車線逸脱警報、アダプティブクルーズコントロール、LEDヘッドランプ、フルオートエアコンなど、安全&快適装備も十分以上のレベルにあり、もはやラテンのクルマだからこの手の装備は…なんてあきらめる必要はなくなった。

今回、約460km(市街地3割、高速6割、郊外路1割くらい)走行し、平均燃費は14.0km/L。高速走行が多かったとはいえWLTCモード燃費の数値(13.5km/L)を上回ったのだから、実燃費はカタログ値と大きく変わらないだろう。

MINI クロスオーバーを筆頭に、アウディ Q2、ルノー・キャプチャー、姉妹車のジープ・レネゲード、間もなく日本に導入されるシトロエン C3エアクロスやVW T-Rocなど、コンパクトなインポートSUVは、けっこうライバルが多い。

いっそのこと500Xもアバルトが手を入れれば、走りもアピアランスもライバルに対してアドバンテージが高まるように思えるのだが…。(文:篠原政明/写真:安西英樹)

試乗記一覧

画像: デザインセンスは、さすが。パワフルな新エンジンもマル

500X クロス 主要諸元

●全長×全幅×全高:4280×1795×1610mm
●ホイールベース:2570mm
●重量:1410kg
●エンジン種類:直4 DOHCターボ
●排気量:1331cc
●最高出力:111kW<151ps>/5500rpm
●最大トルク:270Nm<27.5kgm>/1850rpm
●WLTCモード燃費:13.5km/L
●トランスミッション:6速DCT
●タイヤ:215/55R17
●車両価格(税込):334万円

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