見事なメルセデスの作戦、レッドブル・ホンダの戦略は間違いではなかった
オーバーテイクが難しいとされるハンガロリンク、かといって1周の距離が短いこともあってポジションを落とすようなタイヤ戦略も効率的ではない。そのためハンガリーGPはしばしば退屈なレースになるが、今年のグランプリは実に見応えのあるものとなった。
ポールポジションのフェルスタッペンは、スタートに集中し、まずレースをリードする展開に持ち込む。背後から迫るハミルトンを懸命にディフェンスし、25周目にピットインしミディアムタイヤからハードタイヤへに交換。そのまま1ストップで走り切る戦略をとる。
一方のハミルトンはタイヤ交換のタイミングを引き延ばし、31周目に同じようにミディアムタイヤからハードタイヤに履き替える。そしてすぐに、6周分走ったタイヤを装着するフェルスタッペンを猛然とプッシュ。39周目には一旦パスしかけるが、姿勢を乱して抜くことができない。
その後、ふたりのタイヤの状況がほぼ同じになると、優勝争いは再び膠着状態に。ここでハミルトンは次の作戦に出る。
48周目になんとミディアムタイヤに交換、フレッシュでタイムの出るタイヤで終盤に逆転しようという作戦だ。この時、3番手のルクレールと大きな差があったからこそできた作戦だった。
ハミルトンがコースに戻った時点で、フェルスタッペンとの差は21秒、残り周回数は22周。逆転可能なタイム差だった。レッドブルにとっては、不意を突かれたところもあったのだろう。この時すぐにフェルスタッペンも同じようにタイヤ交換すれば、そのままの順位でコースに戻れたが、躊躇している間にギャップを詰められ、そのチャンスはなくなってしまった。トップを走るドライバーはどうしても保守的な戦略をとることになってしまうものだ。
ここからは逃げるフェルスタッペンと追うハミルトンとの緊迫のタイムレースとなった。しかし、レース終盤にはふたりのラップ差は明白になり、残り4周となった時点でハミルトンにあっさりとかわされてしまう。
2番手となったフェルスタッペンは、そのまま走り切ることもできたが、3番手のヴェッテルとの差がたっぷりとあったので、ソフトタイヤに交換して2位をキープしたままファステストラップを記録した。
ホンダの田辺豊治 F1テクニカルディレクターは、レース後「フェルスタッペン選手は最後の最後に惜しくもポジションを譲り、2位でフィニッシュとなりました。チャンピオンであるメルセデスのマシンのパフォーマンス、ドライバー、戦略の底力を強く感じたレースになりました。我々としても、後半戦でさらなる勝利を勝ち取るべく、車体、パワーユニットなど、チーム全体でパフォーマンスの向上を図ります。F1としてはここから短い夏休みに入ります。また後半戦に向けて万全の準備を進めていきます」とコメント。このところのホンダのパワーユニットの好調ぶりに自信が溢れている。
マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)
「最善は尽くしましたが、ルイス(ハミルトン)のほうが少しスピードがありました。とはいえ、他車と大きなギャップを築きましたし、2位という結果は十分に喜ぶべきものだと思います。もちろん、ポールポジションからスタートしたので、当然優勝したかったですが、ファステストラップをマークしつつ、2位表彰台を獲得することが、現実的に僕たちができた最高の結果だったのではないでしょうか。同じタイヤを装着していたときは、ハミルトン選手を抑えることができました。ただ、彼らが3番手との差を活かして選択した2ピットストップの作戦がうまく作用しました。トップを守り抜こうとタイヤを最大限に使ってトライしましたが、毎周1、2秒で差を縮めてきたルイスに成す術はありませんでした。フレッシュタイヤを装着した彼はすぐに僕との差を縮めたので、オーバーテイクされることも予想していました。できる限りのことはやったので、後悔はありません。だんだんとトップへ近づいてきています」
次戦第13戦ベルギーGPの決勝は9月1日、スパ-フランコルシャン・サーキットで開催される。
F1第12戦ハンガリーGP決勝 結果
優勝 44 L.ハミルトン(メルセデスAMG) 70周
2位 33 M.フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)+17.796s
3位 5 S.ヴェッテル(フェラーリ)+61.433s
4位 16 C.ルクレール(フェラーリ)+65.250s
5位 55 C.サインツ(マクラーレン・ルノー)+1周
6位 10 P.ガスリー (レッドブル・ホンダ)+1周
7位 7 K.ライコネン(アルファロメオ・フェラーリ)+1周
8位 77 V.ボッタス(メルセデスAMG)+1周
9位 4 L.ノリス(マクラーレン・ルノー)+1周
10位 23 A.アルボン (トロロッソ・ホンダ)+1周