スーパーカーといえばエンジンはミッドシップ…と思われがちだが、コンベンショナルなFR(フロントエンジン リアドライブ)を採用しているモデルも、1960年代から21世紀の現代まで数多く存在する。そこで、FRならではの美しい佇まいも備えたスーパースポーツカーを紹介する連載企画をお届けしよう。

FERRARI 275GTB:フェラーリ 275GTB(1964-1968)

画像: 左右分割のバンパーや格子状のフロントグリルなどは、のちのフェラーリ車のアイデンティティにもなっていく。

左右分割のバンパーや格子状のフロントグリルなどは、のちのフェラーリ車のアイデンティティにもなっていく。

前回紹介した250GTOが1962年から1964年まで3年連続で世界スポーツカー選手権(正しくは国際マニュファクチャラーズ選手権)の王座を獲得したものの、レギュレーションの変更で排気量無制限のプロトタイプカーなども参入するようになる。こうなるとスポーツカーレースの世界はエンジンをミッドシップに搭載したレーシングプロトタイプが中心となってしまった。

そこで、250GTOの後継モデルとなる、市販型フェラーリのピュアスポーツモデルであるベルリネッタ(イタリア語で「高性能の屋根付きクーペ」の意味)は、レースなどのコンペティションをほとんど視野に入れず、ロードカーに徹して作られることになる。

こうして、1964年のパリ モーターショー(当時はまだパリ・サロンと呼ばれていた)で公開されたのが、ここで紹介する「275GTB」だ。

画像: 細いピラーが時代を感じさせる。スタイルから想像されるより視界は悪くなさそうだ。

細いピラーが時代を感じさせる。スタイルから想像されるより視界は悪くなさそうだ。

例によって、車名の275は1気筒あたりの排気量、したがって12気筒だから総排気量は3.3L(正確には3285cc)。GTBはグラン・ツーリスモ・ベルリネッタの略だ。275GTBは、ロードカーに徹した最初のフェラーリとも言える。また、GTBと同時にオープンモデルのGTS(グラン・ツーリスモ・スパイダー)も発表されている。

275GTBの成り立ちは250GTOの進化版であり、ロングノーズ ショートデッキのFRらしい美しいクーペスタイルは250GTOと似ている。長いフロントノーズに収まるV12 SOHCは前述のように3.3Lに排気量はアップされたが、ウエーバーのトリプルキャブレターを装着し、パワースペックは280ps/30.0kgmと3Lの250GTOと変わらなかった。

画像: 275GTB/Cスペチアーレ。3台だけ作られた、まさにスペシャルモデルで最高出力は330psに達したという。

275GTB/Cスペチアーレ。3台だけ作られた、まさにスペシャルモデルで最高出力は330psに達したという。

ハンドリングを改善するため、5速ミッションがデフと一体化されたトランスアクスル方式を新たに採用し、それにともないフェラーリの市販モデルとしては初めて4輪独立懸架となった。

GTSは顔つきやスタイリングがGTBとは少し異なる。いずれもボディデザインはピニンファリーナの手になるが、GTBはスカリエッティ、GTSはピニンファリーナが製作した。

GTBは進化を続け、ウエーバーキャブを6連装して300psにパワーアップした275GTB/6C、さらにオールアルミニウム製ボディをまとったレース用の275GTB/Cなども登場している。

そして1966年には、これも市販モデル初となるDOHCエンジンを搭載した275GTB/4が投入された。車名末尾の4は4カムシャフトを表し、最高出力は300psで変わらないものの、パワーバンドが広がっており格段に扱いやすくなっていたという。

画像: 俳優のスティーブ・マックイーンが所有していた275GTB/4。

俳優のスティーブ・マックイーンが所有していた275GTB/4。

フェラーリ 275GTB 主要諸元

●全長×全幅×全高:4360×1685×1350mm
●ホイールベース:2400mm
●車重:1100kg
●エンジン形式・排気量:60度V12 SOHC・3285㏄
●最高出力:280ps/7500rpm
●最大トルク:30.0kgm/5000rpm
●燃料タンク容量:86L
●トランスミッション:5速MT

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