ルクレール優勝の一方で、ヴェッテルはなぜ4位に敗れたか
ベルギーGPが行われたスパ・フランコルシャンは高低差のある高速コースで、エンジンパフォーマンスが問われると言われている。しかしその一方で、すべての方向から強い力がかかるためタイヤに厳しく、タイヤ戦略、タイヤマネージメントがパフォーマンスに大きく影響した。
ベルギーGPが行われた9月1日、スパ・フランコルシャンの天候は雲が多いながらも晴れ。決勝前に雨が降り出して一時路面はウエットになったが、スタート時にはすっかりドライとなっていた。それもあって、気温は前日よりも10度以上も低く、路面温度も30度に達していなかった。また、レース中に雨が降る確率は60%という予報もあり、スパウェザーと言われるだけあって、予断を許さない状況だった。
決勝スタートのタイヤはQ3進出の10名は全員ソフト、そのほかのドライバーもほとんどがソフトタイヤを選択してグリッドに着いた(アレクサンダー・アルボン、ダニール・クビアト、ジョージ・ラッセル、ロバート・クビサ、アントニオ・ジョビナッツィの5名はミディアムタイヤを装着)。
レース前にピレリタイヤが推奨したタイヤ戦略は「ベストはソフトタイヤで18〜22周走行してミディアムに切り替えるワンストップ」となっていたが、表彰台に上がったドライバーはすべてその戦略をとった。
優勝したシャルル・ルクレール(フェラーリ)は21周目、2位のルイス・ハミルトンは22周目、3位のバルテリ・ボッタスは23周目に、いずれもソフトからミディアムに交換して、そのままワンストップでゴールしている。
そんな中、2番グリッドからスタートしたセバスチャン・ヴェッテルは一度ハミルトンに抜かれた後、ポジションを取り戻したもののタイヤの劣化に苦しみ、上位陣のなかでは一番早く15周目にミディアムタイヤに交換した。
そのためボッタスがピットに入った23周目にトップに浮上したが、周回を重ねるうちに次第にペースが落ち込み、チームの指示でルクレールにトップを譲った後、しばらくメルセデス勢を抑え込む役目にまわった。これが結果的に、ルクレールの優勝に貢献することになる。
ヴェッテルは可能な限りルクレールを援護。ハミルトン、ボッタスに抜かれて4番手に落ちた時点で再度ピットインして、ソフトタイヤに交換、この日のファステストラップを記録している。
15周目でのタイヤ交換は、メルセデスAMG勢のアンダーカットを警戒してのアクションとも考えられるが、ヴェッテルは想定よりも7周も早いタイミングでピットインしており、実際タイヤの劣化に苦しんでいたようだ。
レース終盤、ハミルトンが猛然とルクレールを追い上げたのも注目ポイント。ハミルトンとルクレールのタイヤ交換のタイミングは1周しか違っていないので、フェラーリはタイヤマネージメントで不利な状況があったのかもしれない。
一方、アレクサンダー・アルボン(レッドブル・ホンダ)は新品のミディアムタイヤを装着してスタートし、無理をすることなく少しずつポジションを上げ、23周目に新品のソフトタイヤを装着。そこから一気にペースを上げて5位に入賞している。スタート時にミディアムタイヤを装着したドライバーは5名いたが、同様に早めにソフトにスイッチしたダニール・クビアトも7位に入っている。第2スティントで新品のソフトタイヤを使ったのがポイントだが、終盤タイヤマネージメントに苦しんだドライバーが多い中、この戦略は今後注目されるかもしれない。
ピレリタイヤでは、今回のベルギーGPを「ルクレールは理論的に最速のタイヤ戦略を完璧に実行し、ハミルトンから激しいプレッシャーを受けながら、摩耗と劣化の速度を予想しつつ、最後までミディアムタイヤをうまく管理しました。 今日のドライバーにとって大きな課題のひとつは、前日までとは異なる気象条件にどう対応するかでした」と分析する。前日よりもずっと涼しく、路面温度は30度以上になることはなかったが、それでもレース終盤に中団グループの順位は大きく変動している。
心配された降雨はなく、レース展開に影響を与えるタイミングでのセーフティカー導入もなかったので、レースとしては大きな波乱もなく進み、ミディアムタイヤで第1スティントを長くとる作戦は不発、次戦イタリアGPでもこのタイヤ戦略とタイヤマネージメントは大きなポイントとなりそうだ。
2019 F1第13戦ベルギーGP決勝 結果
優勝 16 C.ルクレール(フェラーリ)44周
2位 44 L.ハミルトン(メルセデスAMG)+0.981s
3位 77 V.ボッタス(メルセデスAMG)+12.585s
4位 5 S.ヴェッテル(フェラーリ)+26.422s
5位 23 A.アルボン (レッドブル・ホンダ)+81.325s
6位 11 S.ペレス(レーシングポイント)+84.448s
7位 26 D.クビアト(トロロッソ・ホンダ)+89.675s
8位 27 N.ヒュルケンベルグ(ルノー)+106.639s
9位 10 P.ガスリー (トロロッソ・ホンダ)+109.168s
10位 18 L.ストロール(レーシングポイント)+109.938s