南フランスでマクラーレンの最新モデル「GT」に乗り、それが狙いどおりに 「マクラーレン第4のシリーズ」に仕上がっているのを確かめることができた。(Motor Magazine 2019年11月号より)

GTのために用意されたファストバックボディ

マクラーレンGTは、これまでの「アルティメット」「スーパー」「スポーツ」と縦に連なるスーパースポーツのモデルラインナップから、商品性を少し横にズラして作られた文字どおりの「GT」だ。「サーキット走行を楽しめる動力性能を持ちながら、大陸横断できる能力も兼ね備えています」(GTのチーフエンジニア、アダム・トムソン氏)。

そのために、専用のファストバックボディをまとい、広大な前後のラゲッジスペースを用意している。快適な乗り心地のために、720S譲りの「プロアクティブシャシーコントロール」システムやステアリングシステムなどにはGT用としての最適化を実施。「モノセル2」に進化したカーボンファイバー製シャシや4L V8ツインターボエンジン、7速DCTなどは変わらない。つまり、速さに実用性と快適性を併せ持たせたのである。

メディア試乗会のベースとなったサントロペのホテル庭園に置かれたGTは、これまでのどのマクラーレンとも異なって見える。ヘッドライトやフロントマスクは穏やかな形状となり、ボディサイドは微かな抑揚が付けられながら、エアインテークに収束している。細いクロムメッキに縁取られたサイドウインドウの形状も、GTならではのものだ。

そして、GTをGTたらしめているのがリアスタイルだ。ファストバックスタイルを採るため、大きなリアガラスがテールまで続いている。

実用性のため、GTでは荷物積載量がたくさん確保されている。まずは150Lのフロントトランク。国際線機内持ち込み用スーツケース2個に加え、ブリーフケースやトートバッグなどが2個確実に収まる。フロントトランクはほぼ直方体で真上から出し入れするので、とても使いやすい。

テールゲートの下には420Lも収まる。フロアは中央部分がへこんだ形状となっており、プレゼンテーションではゴルフバッグが収まるところを実演していた。フロントに収めた自分のスーツケースを取り出して、リアに置き直してみたがピタリと収まった。その周辺にもバッグやジャケットなどを置いて、専用のネットやストラップなどで固定できた。乗降時に、シートの後ろからラケッジスペースに荷物を置くこともできるからいちいちテールゲートを開ける手間も省け、この点でも実用的だ。

画像: 搭載の4L V8インターボエンジンに組み合わされるミッションは7速DCT。

搭載の4L V8インターボエンジンに組み合わされるミッションは7速DCT。

路面からのショックを丸め込み快適な乗り心地が味わえる

サントロペから一般道をほぼ真北に上がり、丘陵地帯を目指した。あいにくと朝からの大雨の勢いが止まない。リアガラスを叩く雨音を差し引いても、走行音が静かであることにまず驚かされた。エンジンの排気音とタイヤの擦過音が巧みに抑制されている。これなら、大陸横断を行っても疲労は少ないだろう。

620psを発生する、おなじみの4L V8インターボエンジンもごく低回転域から太いトルクを生み出していて、7速DCTを介して圧倒的な加速を示す。

白眉とも呼べるのが、路面からのあらゆるショックや振動などを角を丸めた上で抑え込んでいることだ。荒れた舗装のギャップや段差、つなぎ目などを認識することはあっても、それを不快に感じる瞬間がない。GTに最適化された720S譲りの「プロアクティブシャシーコントロールシステム」の効能がとても良く現れている。

そして、それを最も強く感じたのは、カンヌを目指してオートルートA8号線を高速で巡航している時だった。フラットな姿勢を維持しながら、サスペンションは良く動き、乗り心地はマイルド。それでいて、マクラーレンらしい軽快な身のこなしと圧倒的な動力性能。このクルマで大陸横断してみたくなった。(文:金子浩久)

画像: スーパースポーツカーのパフォーマンスを備えながら、さらにラグジュアリーな価値観をも実現してみせたGT。

スーパースポーツカーのパフォーマンスを備えながら、さらにラグジュアリーな価値観をも実現してみせたGT。

試乗記一覧

■マクラーレン GT 主要諸元

●全長×全幅×全高=4683×2045×12130mm
●ホイールベース=2675mm
●車両重量=1605kg
●エンジン=V8DOHCターボ
●排気量=3994cc
●最高出力=620ps/7500rpm
●最大トルク=630Nm/5500-6500rpm
●駆動方式=MR
●トランスミッション=7速DCT

This article is a sponsored article by
''.