スタッドレスタイヤの寿命は購入もしくは製造されてから「2〜3年」と期間で表現されることが多く、これは紛れもない事実ではあるのだが、実はもうひとつスタッドレスタイヤの寿命をあらわす機能「スノープラットフォーム」が採用されていることあまり知られていない。スタッドレスタイヤだけでなく、オールシーズンタイヤにも記されているこの目印の位置やその意味、そして機能について解説しよう。

スタッドレスタイヤの寿命? スノープラットフォームはなにを意味するのか

クルマのタイヤには縦横無尽に刻まれた模様があり、これをトレッドパターンという。またトレッドパターンで刻まれた溝はグルーブともいう。タイヤは、このトレッドパターンの模様と溝の深さにより、路面との間の水分を外に掃き出し、タイヤと路面を密着させる排水機能を持っている。

タイヤの溝には保安基準があり、「道路運送車両に関する保安基準第89条」に乗用車であれば深さが1.6mm以上と定められている。この深さを下まわるとスリップサインが露出し、そのタイヤの「使用限界」や「寿命」を示すものだ。もしこの状態で走行を続けた場合、整備不良車と判断されて道路交通法違反となるので早急にタイヤ交換をしなくてはならない。

このスリップサインはすべてのタイヤに記されているが、実はスタッドレスタイヤやウインタータイヤなどの冬用タイヤにはもうひとつのサイン・印が記されている。それが「スノープラットフォーム」だ。一般的には「プラットフォーム」と略されることが多く、これは「冬用タイヤとしての寿命」を示す仕掛け。あくまで交換の目安であり、スリップサインと異なり露出したからといって道路交通法違反になるわけではない。

画像: スタッドレスタイヤやウインタータイヤなどにある、スノープラットフォーム。凸部のギザギザが目印だ。

スタッドレスタイヤやウインタータイヤなどにある、スノープラットフォーム。凸部のギザギザが目印だ。

このスノープラットフォームはタイヤが50%摩耗した時点で露出する。一般的に新品スタッドレスタイヤの溝はおよそ10mmであるので、5mmを切ったら要注意だ。

これからスタッドレスなど冬用タイヤに交換するなら、交換前にグルーブの深さをチェックしておこう。タイヤ溝測定ゲージの使用がベストだが、もし手元になければ100円硬貨を代用することもできる。チェック方法は簡単で「100」の刻印面を手前に、「1」から溝に入れるだけ。「1」は硬貨の縁からおよそ5mmに位置するため、「1」がゴムに隠れるようなら溝の残りは50%以上と言えるだろう。だが「1」が見えるようであれば、冬用タイヤのゴムの残りは50%を切っている可能性が高い。その場合は降雪前に冬用タイヤを交換しておこう。

またスノープラットフォームは1本のタイヤにつき、4カ所ある。サイドウォールの「矢印マーク」の延長線上に、90度間隔で設置されている。先ほどの溝の深さチェックは、ぜひスノープラットフォーム4カ所で行ってほしい。1カ所でも溝の深さが5mmに達していないのなら、冬用タイヤとしての寿命はすでに尽きているからだ。

寿命をあらわすスノープラットフォームは、スタッドレス以外にも

画像: スタッドレスタイヤには、スノープラットフォーム(下)とスリップサイン(上)両方がある。どちらも印の延長線上に配置される。

スタッドレスタイヤには、スノープラットフォーム(下)とスリップサイン(上)両方がある。どちらも印の延長線上に配置される。

夏用タイヤでよく耳にするスリップサインは、「タイヤとしての使用限界」を示すのに対し、スノープラットフォームはあくまでも「冬用タイヤとしての使用限界」を示すものである。紛らわしいのだがスノープラットフォームが現れても、タイヤとしての機能は失われていない。だが「冬道走行に適した性能」は失われている、というわけだ。

では冬用タイヤは冬季以外の走行に適するかというと、これも塩梅が良くない。ゴムは低温下で硬くなる性質を持つが、冬用タイヤは硬くなりにくいゴムを使用している。だからこそ厳寒地でも雪を掴んで摩擦力を維持して雪道を走行できるのだが、逆に路面温度の高い夏季でタイヤが柔らかくなりすぎてグリップ力が低下する。

さらに、一般的に排水性で劣るスタッドレスタイヤでウエット路面を走れば、制御不能になる危険性も高まる。柔らかいゴムが変形して、トレッドパターンと溝による排水性能を失ってしまうからだ。安全性と経済性とFun to Driveの観点から見ても、スノープラットフォームの露出した冬用タイヤは夏季に利用しない方が賢明だ。

画像: スタッドレスタイヤのスノープラットフォームが露出した状態。

スタッドレスタイヤのスノープラットフォームが露出した状態。

雪道を走行できるタイヤは、スタッドレスを含む冬用タイヤだけではない。オールシーズンタイヤは雪道走行も視野に開発され、その名のとおり四季をとおして使用できるタイヤだ。国土の広いアメリカや地域により標高差のある欧州で普及しはじめ、さらに近年、雪上走行性能も向上していることから、首都圏のように年に数回しか降雪が見られない地域を中心に注目を集めつつある。

オールシーズンタイヤは夏用タイヤと冬用タイヤの中間的存在であるため、当然スノープラットフォームが存在する。もしオールシーズンタイヤを履いたままであれば、一度スノープラットフォームが露出していないかチェックしておこう。溝残量が50%を切っていたら雪上走行性能という意味で寿命にあたるため、本格的な冬の到来前に買い替えておこう。前述したように、雪道走行に適した機能は残っていないからだ。(文:猪俣義久)

※オールシーズンタイヤは氷上走行性能でスタッドレスタイヤに劣るため、使用の際は注意が必要。

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